2018年4月22日日曜日

北朝鮮がICBMの発射実験中止 核実験場廃棄 を決定

 20日、北朝鮮が朝鮮労働党中央委員会総会を開き核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験を21日から中止し、咸鏡北道豊渓里の核実験場を廃棄することを決めました。
「非核化」にまで直接言及したわけではありませんが、これまでの路線を大きく転換しました。ああした国家なので方針の大転換には国民を納得させるための段取りが必要で、それなりに取られてもいますが、決定事項そのものは明確です。
 
 トランプ大統領は18日の日米首脳会談後の共同記者会見で、6月上旬までに開かれる米朝首脳会談について「可能な限り、全力を尽くして、世界的な成功へ努力する。米国、韓国、北朝鮮、日本にとってだけでなく、全世界のためにできる限りのことをする」と述べ、主要議題である「朝鮮半島の非核化」への道筋をつけることに強い意欲を示し、「朝鮮半島全体が安全と繁栄、平和のうちに共存できる日が見られることを願う」と述べました(しんぶん赤旗)。北に抑留されている3人の米人についても、CIA長官が極秘に訪朝した際に、米朝首脳会談に合わせ解放する確約を得たいうことです。
 
 NHKをはじめ日本のメディアは北朝鮮に対しては懐疑的で、過去において何度も約束を果たさなかったということを繰り返し強調しています。そういう面があったのは確かですが、多分北朝鮮にもそれなりの言い分はある筈で、いつもそれを前面に押し出していては埒があきません。
 ともかく事態はめまぐるしく進展していて、もはや安倍流の「圧力を掛け続ける」の一辺倒では間拍子に合わなくなっています。
 
 安倍首相や評論家たちは、日本を射程に収めているミサイル(ノドンなど)の撤去も和平の条件にするべきだと主張していますが、トランプ氏にとっては必ずしも肝要な必要条件ではないので、仮に口にはしても和平の条件にはしないと思います(在日米軍は北朝鮮を射程に入れる戦闘機搭載ミサイルを装備しているし、日本もその所有を検討していると明らかにしているのですから)。ノドンは既に10数年来装備されているものなので、それは日朝両国の話し合いで解決すべきものでしょう。
 安倍首相には、北朝鮮は敵国で、それを国内政治で「脅威の対象として利用すべきもの」という固定観念しかないようですが、北朝鮮は既に160か国から承認されている国家です。
 韓国と同様に日本にも拉致問題がありますが、それは断交の理由にはなりません。拉致問題があるからこそ日本も北朝鮮を国家として認める「普通の国」になるべきです。
 
 東京新聞の3本の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
北「核実験場を廃棄」 核兵器完成を明言 党中央委総会
東京新聞 2018年4月21日
【北京=城内康伸】北朝鮮は二十日、朝鮮労働党中央委員会総会を開き、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を二十一日から中止することを決めた。また「核実験中止を保証するため」として、北部・咸鏡北道豊渓里(ハムギョンプクトプンゲリ)の核実験場を廃棄することを決定した。朝鮮中央通信が二十一日伝えた。
 
 非核化に本気で取り組む姿勢を示すことにより、二十七日の南北、六月上旬までに開かれる米朝の両首脳会談を自国に有利に進めようとの思惑とみられる。ただ総会では核の放棄には触れていない。日米などが求める「完全な非核化」とは大きな隔たりがあり、米朝交渉は難航が予想される。
 
 同通信によると、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は総会での報告で、「国家核戦力建設という歴史的大業を五年にも満たない短期間に完璧に完成させた」と指摘し、二〇一三年に打ち立てた核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」の「偉大な勝利」と強調した。
 その上で、「核の兵器化が完結された中、いかなる核実験も中距離弾道ミサイル、ICBMの発射実験も必要なくなり、核実験場も使命を終えた」と結論づけた。
 
 総会では「並進路線の偉大な勝利を宣言することについて」と題する決定書を採択。決定書は「地下核実験、核兵器の小型化、軽量化、超大型核兵器と運搬手段の開発を順次行って、核の兵器化を実現したことを厳粛に明らかにする」と明記した。「わが国に対する核の脅しや挑発がない限り、核兵器を使用しない」とし、核兵器と技術の第三国移転も行わないと確約した。
 
 さらに、「朝鮮半島と世界の平和・安定のため、周辺国や国際社会と緊密な対話を積極的に行う」と表明した。核問題を巡る対話に応じる姿勢を明らかにしたが南北、米朝の両首脳会談に関する言及はなかった。
 
 
党中央委総会要旨 「核の威嚇がない限り、核兵器使わない」
東京新聞 2018年4月21日
 北朝鮮が二十日の朝鮮労働党中央委員会総会で行った決定などの要旨は次の通り。
 
一、核兵器開発が実現し、二十一日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止する。
一、核実験中止の透明性を確保するため、北部の核実験場を廃棄する。
一、核実験中止は世界的な核軍縮のための重要な過程であり、核実験の全面中止のための国際的な努力に合流する。
一、わが国に対する核の威嚇がない限り、核兵器を絶対に使用せず、いかなる場合も核兵器と核技術を移転しない。
一、核開発と経済建設の「並進路線」の勝利を宣言し、経済建設に総力を集中する。
一、経済建設に有利な国際環境をつくるため、周辺国や国際社会との緊密な連携と対話を積極化する。
一、金正恩党委員長が「国家核戦力建設の大業を短い期間で完璧に達成した」とし、核実験や中長距離弾道ミサイル、ICBM発射実験は必要なくなり、核実験場はその使命を終えたと発言。 (共同)
 
 
拘束米国人 3人解放へ CIA長官訪朝時に保証
東京新聞 2018年4月21日
【ワシントン=石川智規】米紙ウォールストリート・ジャーナルは二十日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、ポンペオ中央情報局(CIA)長官に、トランプ米大統領との米朝首脳会談に合わせ、北朝鮮で拘束されている米国人三人の解放を保証したと報じた。
 
次期国務長官に指名されているポンペオ氏が正恩氏と極秘会談した際、北朝鮮側が提起したという。会談内容に詳しい政府関係者の話として伝えた。
トランプ氏は十八日の会見で、北朝鮮で拘束される米国人三人の解放に向け「われわれは今、交渉をしている最中だ」と指摘。「三人の米国人を取り戻すため、真剣に取り組んでいる」と述べていた。
また、トランプ氏は安倍晋三首相に対し、米朝会談を行う際には日本人の拉致被害者問題も「取り上げる」と述べていた。