2018年4月20日金曜日

日米会談不発がトドメ 安倍首相の「6月退陣」が現実味を帯びる

 日米首脳会談が終わりました。19日の朝日新聞電子版は、「トランプ氏に押し切られ、出し抜かれ…首相、乏しい成果」との見出しを打ちました。「日米は一体」とか、「米朝会談は、そこで実質的な進展が見られなければ・・云々」の聞き古された文言は聞かれましたが、既にCIA長官が極秘で金正恩氏と接触していたなど、事態は「北朝鮮は敵」という凝り固まった思考では追いつけないほどのスピードで進展していました。
 
 唯一、トランプ大統領が拉致問題を米朝会談で話題に出すと約束したことを官邸は成果にしたいのでしょうが、それは日本政府が行うべきことをアメリカに依頼したという本末転倒の話で、成果というようなものではありません。
 拉致被害者家族会代表の飯塚氏は、「直ちに全員を帰すというものでなければならない」と述べていますが、とてもそんな確約があったとは思えません。
 かくして日米会談に政権の浮揚を掛けた官邸の目論見は潰えました。
 
 小泉元首相が「週刊朝日」インタビュー記事で「安倍さんの引き際今国会が終わる頃(620日)じゃないか。(9月の)総裁選で3選はない」と引導を渡したのを受けて、ロイター通信が日米会談の前に、「前任者が予測 支持率下落で窮地に立たされた日本の安倍首相の辞任」という見出しで一連の不祥事や支持率急落などを詳報し、ガーディアンテレグラフなどがそれを後追いしました。安倍政権が死に体であることが世界に知れ渡っていたということです。
 
 日刊ゲンダイは、日米会談で何の成果も上がらないのであれば6月退陣が現実味を帯びるとしています。実際、自民党内では安倍首相は既に求心力を失い、次の総裁を目指した動きが徐々に活発になっています。
 朝日新聞は、「岸田派の政策、リベラル色前面に 安倍政権との違い強調(4/20)」の見出し(電子版・以下同)で、「岸田派18日、都内で政治資金パーティーを開き、派閥としての政策骨子を発表し,『トップダウンからボトムアップへ』『多様性を尊重する社会へなど、リベラル色を前面に掲げ、安倍政権との違いを強調した」と報じました。
 また「石破氏 政治は正直、誠実、親切、丁寧でなければ(4/19)」の見出しで、石破氏が都内の講演で「納得と共感を得るということがいま求められている政治は正直で、誠実で、親切で、丁寧でなければいけない」と語ったことを紹介しています
 
 ジャーナリストの高野孟は、連載記事「永田町の裏を読む」で直近の世論調査の結果を紹介し、「何より深刻なのは、内閣不支持の理由のトップが『首相が信頼できない』58.4)で、加計学園問題での首相の説明に『納得できない』人は79.4%もいる。国民の大半は総理が嘘をついていると思っているわけで、これは人間的な不信、人格的な否定だから、支持率を回復するのは難しい」と語りました。
 そして「共同調査の『次の総裁』に誰が良いかは、石破と小泉が25%前後で1、2位を競っている半面、安倍は18%程度だから、9月の総裁選に出ても負ける。小泉が石破を支持して石破総裁=小泉幹事長体制をにおわせれば圧勝だろう」と述べています。
 
 日刊ゲンダイの2本の記事を紹介します。
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日米会談失敗がトドメ 現実味帯びる安倍首相の「6月退陣」
日刊ゲンダイ 2018年4月19日
「北朝鮮問題、経済問題について日米連携を確認し、強固な日米同盟の絆を発信する」―。安倍首相はこう意気込んで訪米したが、迎える米国側はシラーッとしたものだ。「安倍さんの引き際、今国会が終わる頃じゃないか」という小泉元首相の発言を海外メディアが詳報。安倍政権が死に体であることが世界に知れ渡ったからだ。安倍官邸は政権浮揚をこの日米首脳会談に賭けているという。逆に言うと、日米会談が失敗に終わったら、小泉氏の見立て通りに「6月退陣」が現実味を帯びてくる。
 
■“小泉爆弾”が炸裂
 発売中の「週刊朝日」に掲載された小泉氏のインタビューは容赦ない。
 森友学園疑惑について、「根本の嘘の始まりは、国会で『私や妻が関わっていたのなら、総理大臣も国会議員も辞めます』だね。昭恵さんは森友学園の元名誉校長でしょう。森友学園へ行き、挨拶までし、関係しているのに、なぜ、あんな嘘を言い続けるのか、わかんないね」とバッサリ。「嘘の上塗りをするからおかしくなる。総理も国会議員も辞めると言ったので、本当ならとっくに辞めてなきゃいけないはず」と断じ、「危なくなってきたね。安倍さんの引き際、今国会が終わる頃(6月20日)じゃないか。(9月の)総裁選で3選はない」と引導を渡したのだ。
 ロイター通信がこの小泉発言を引用し、「前任者が予測 支持率下落で窮地に立たされた日本の安倍首相の辞任」という見出しで一連の不祥事や支持率急落などを詳報。世界のメディアに配信され、「身内びいきスキャンダルによる打撃で日本の安倍晋三に6月辞任予測」(ガーディアン)、「ドナルド・トランプとの2日間にわたる重要な首脳会談を前にした日本の安倍晋三に辞任圧力」(テレグラフ)などと後追いが続いた。
 
「トランプ大統領もホワイトハウスも安倍首相はレームダックだと見限っている。トランプ大統領の念頭にあるのは対日貿易赤字の解消で、瀕死のカモネギからふんだくることしか頭にありません。安倍首相が直談判する米朝首脳会談での拉致問題提起にOKを出しましたが、このひと言でディール(取引)できるのであれば、安いものでしょう」(日米外交関係者)
 
 米朝会談の現場に安倍首相が乗り込み、その場で日朝首脳会談を押し込むという仰天プランが報じられるほど支持率回復に血眼になっているが、支持率下落傾向に歯止めはかからない。
「安倍首相にとって、日米首脳会談は支持率をアップさせる最後の頼みの綱です。あとは金正恩に土下座して日朝首脳会談を実現させるくらいしかない。もし、トランプ大統領と会った後も支持率が下がり続けたら、もう策がない。それだけに党も官邸もゴールデンウイーク明けの支持率に大注目しています。ここでダメなら、もうオシマイでしょう」(与党中堅議員)
 安倍首相が居ぬ間も福田淳一財務次官をめぐるセクハラ疑惑が政権をむしばむのは必至。
 これで手ぶら帰国となれば、安倍政権のトドメになる。
 
 
 永田町の裏を読む  
加計問題 国民の大半は総理が嘘をついていると思っている
高野孟 日刊ゲンダイ 2018年4月19日
 内閣支持率が30%を切ると「政権の行方に赤信号がともった」とみるのが永田町の常識だが、いよいよそういう数字が出始めた。
 
  日本テレビ系が15日に速報した調査結果では、支持26.7%に対し不支持は53.4%で、支持率は第2次安倍政権発足以来の最低となった。また同日発表の共同通信の調査では、全体で支持37.0%、不支持52.6%だが、女性だけをとると、それぞれ29.1%、56.4%だった。朝日の調査では支持31%、不支持52%と、これも30%ラインのギリギリまで迫っている。
 
  自民党の古参秘書氏も、もはや打つ手なしという表情でこう語る。
 「何より深刻なのは、内閣不支持の理由のトップが『首相が信頼できない』で、共同調査だと58.4%。とりわけ、加計学園問題での首相の説明に『納得できない』人は79.4%もいる。日テレ調査では、愛媛県職員の備忘録と首相の国会答弁とどちらが信憑性が高いかという問いに、『安倍』と答えた人は何と8.6%しかいない。結局、国民の大半は総理が嘘をついていると思っているわけで、これはもう人間的な不信、人格的な否定だから、支持率を回復するのは難しい」
 
 日米首脳会談で何か目覚ましい成果を上げれば、回復のきっかけにならないのか。
 「北朝鮮の核問題では完全に蚊帳の外だし、拉致問題を何とかトランプから言ってもらうようお願いするというけれども、仮にOKと言ってくれたとしても、別に成果というほどのことじゃない。その問題は本来、日朝首脳会談を開いて自ら血路を開くべきことなのに、その覚悟も準備もなく、他人に頼みに行くということ自体がおかしい。貿易問題もうまくいきそうにない。それでゴルフなんかやって親密さを誇示しようというわけだが、そんなことで国民をだますことはできるはずがない」と秘書氏は手厳しい。
 
 共同の調査は「次の総裁」を問うていて、石破と小泉が25~26%前後で競っている半面、安倍は18%程度だから、9月の総裁選に出ても負ける。12年の総裁選のように、小泉が石破を支持して石破総裁=小泉幹事長体制をにおわせれば圧勝だろう。
 
「いや、それ以前に、9月まで政権がもつかどうかだ。今週の週刊誌は早々と『安倍総理6月辞任へ』と書いているが、5月連休明け以降は、また何かなかったはずの文書が出てくるとかで、いつ内閣総辞職に転がり込むかもわからない」と秘書氏は言う。
 「1強」ゆえのやりたい放題の結末がこれだから、その責めも安倍が一人で背負い込むことになるのだろう。