2018年4月27日金曜日

辺野古工事で重大不正発覚 ジュゴン訴訟でも米専門家チームが異論

 LITERAが沖縄・辺野古工事着工から1年の節目に、2つの重大問題があることを取り上げました。
 
 ひとつは、14年6月に防衛省が発注した総工費59億円の桟橋などの仮設工事大成建設受注)で、その契約に含まれていた新基地建設反対運動に対する海上警備で、警備会社ライジング社)が警備人員の人数を水増しして約7億4000万円を過大請求したことに関連するものです。
 これは16年1月に内部通報があったため水増し分は減額されましたが、沖縄防衛局は大成建設に注意をしただけで、その後もライジング社と契約を続けてました
 ライジング社はテロ対策への進出なども視野に入れている会社で八木均社長は自衛隊や右派にも太いパイプをもつ人物だということです
 
 もうひとつは、日米の環境保護団体が03年に米連邦地裁に起こした「沖縄ジュゴン訴訟」に関するものです。
 新基地建設工事によって国の天然記念物であり絶滅危惧種のジュゴンに影響を与えるという原告の指摘に対し、米国防総省は沖縄防衛局が09年にまとめた環境影響評価や米国防総省の専門家による報告書を根拠に「影響なし」と結論づけました。
 しかし、その環境影響評価準備書のジュゴンに関する内容を巡り、米国防総省の専門家チームが10年の報告書で、(1)調査者の経験や能力に疑問がある(2)生息密度など量的数値を把握する調査がない(3)季節の違いが考慮されていない(4)文献の引用が適切に示されていない・・・などの調査の不適切さを指摘し、「ほとんど価値を持たない」との見解を示していたことが分かりました。
 沖縄県や環境団体が長年訴えてきたアセスの不備が裏付けられたもので、訴訟原告団は、近く本格審理に入る「差し戻し審」で、国防総省にジュゴンへの影響を否定した根拠や経緯を追及するということです。
 
 LITERA、時事通信、沖縄タイムスの記事を紹介します。
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辺野古工事着工から1年の節目に重大不正発覚!
反対派に対する警備代7億円水増し請求と防衛省の黙認が意味するもの
LITERA 2018年4月25日
 辺野古への新基地建設で政府が護岸工事に着工して、きょうで1年を迎える。そしてきょうも辺野古キャンプ・シュワブゲート前では新基地建設に反対する市民たち約300人が抗議活動をおこない、海でも「海上大行動」としてカヌーから「海を壊すな」「工事をやめろ」と抗議。対する機動隊や海上保安官は市民を次々に強制排除、拘束していった。
 
 沖縄の民意を無視し、力づくで市民を抑え込む安倍政権の強権的な姿勢は言語道断と言わざるを得ないが、そんななか、とんでもない問題が発覚した。
 なんと、防衛省が発注していた基地反対派に対する警備代が、約7億4000万円も過大請求されていたというのだ。
 問題となっているのは2014年6月に防衛省沖縄防衛局が発注した桟橋などの仮設工事で、大成建設が約59億円でこれを受注。その契約には新基地建設反対運動の海上警備が含まれていたといい、大成建設は渋谷区に本社を置く警備会社・ライジングサンセキュリティーサービスに警備を委託した。そして、このライジング社が、警備にあたった人数を水増しして約7億4000万円を過大請求したのである。
 
 だが、驚くべきはこのあと。この過大請求は2016年1月に沖縄防衛局に内部通報があり、大成建設が調査して事実と判明。契約額から水増し請求分を減額したが、沖縄防衛局は大成建設に注意をしただけで、ライジング社との契約を解除させることもなく、その後もライジング社と契約をつづけていたのだ。
 
 しかも、このライジング社の100%子会社で実際に海上警備にあたっていたマリンセキュリティーをめぐっては、燃料を海に廃棄していたことが発覚しており、そのほかにも警備艇船長による暴言や嫌がらせといったパワハラ行為、船内での飲酒、従業員への月最大200時間以上の残業代未払いなどが問題となってきた。その上、不正な請求をした会社と契約をつづけるという異常な事態に、防衛省や政治家の介入があったのではないかと指摘する声も出ている。
 実際、ライジング社は海外での民間武装警備の訓練にも参加するなど、テロ対策への進出なども視野に入れている会社で、同社の八木均社長は、自衛隊や右派にも太いパイプをもつ人物といわれている。
 
 いずれにしても、この背後には“不正があろうがなんだろうが、工事さえ進めるなら手段を選ばない”というなりふり構わない安倍政権の姿勢があるのは明らかで、辺野古新基地工事にはこうした不正がほかにも山ほどあるのではないかともいわれている。
 だいたい、水増し請求額が約7億4000万円ということは、この額よりはるかに超える警備費が海上だけでも投入されているということ。そんな巨額の国民の血税を使って市民を排除するための警備をおこなっていること自体が許しがたいものだ。
 
「新基地建設工事はジュゴンに影響なし」の環境アセスメントも嘘だった
 しかも、ここにきて、新基地建設工事の妥当性にも疑問が出てきた。新基地建設工事によって国の天然記念物であり絶滅危惧種のジュゴンに影響を与えるという指摘に対し、米国防総省は「影響なし」と結論づけ、その根拠に沖縄防衛局がまとめた環境影響評価(アセスメント)や米国防総省の専門家による報告書を挙げてきたが、18日付の沖縄タイムスのスクープによれば、2009年に沖縄防衛局がまとめたアセスの土台となった準備書に記されたジュゴンの調査について、翌2010年、国防総省の専門家チームによる報告書では同調査の不適切さを指摘し「ほとんど価値を持たない」という見解を示していたというのだ。
 
 国防総省の専門家チームによる報告書では、「ジュゴンの生息地であり(新基地建設は)餌場の海草藻場にも直接影響を与える」とし、基地建設がジュゴンの減少・絶滅の一因になることは「明白だ」と断じている。さらに、専門家のひとり、海洋哺乳類学者トーマス・ジェファーソン氏は米海兵隊に対し、「アセスは非常に不十分で科学的検証に耐えられるものではない」「ジュゴンへの影響が予想される」とメールで沖縄防衛局のアセスを批判していたという(琉球新報19日付)。にもかかわらず、国防総省は「影響なし」と結論づけ、日本は工事を進めてきたのだ。
 隠蔽体質は日本だけではなくアメリカも同じということだが、これによって、アセスの不備および工事の妥当性は揺らぐことになる。今後、アメリカでおこなわれているジュゴン訴訟の動きによっては基地建設にも影響が出るだろう。
 
 今週、辺野古では、少しでも工事を遅らせることで海を守ろうと、ゲート前に多くの市民が集まり、身を挺して抗議をおこなっている。公文書改ざんをはじめとする安倍政権による民主主義の破壊行為の最前線は、沖縄にある。いまこそ「本土」が沖縄とともに抵抗を示していかなくてはいけないだろう。 (編集部)
 
 
辺野古警備、人数水増し=発覚後も契約継続―防衛省
時事通信 2018年4月26日
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事をめぐり、受注した大成建設から海上警備を委託された警備会社が、人数を水増しして人件費約7億4000万円を過大請求しようとしていたことが26日、防衛省への取材で分かった。内部通報を受け対処したため損害はなかったが、同省は問題発覚後もこの警備会社と契約を続けていた。
 
 同省によると、大成建設が2014年8月、「ライジングサンセキュリティーサービス」(東京都渋谷区)に警備業務を委託。ライジング社はこの警備費用について、業務に当たった人数を水増しした報告書を提出しようとしていた。
 16年1月、同省沖縄防衛局にライジング社従業員から警備状況が契約と異なるという内部通報があり発覚。同局と大成建設が契約を見直し、過大請求はされず、過払いはなかったという。
 
 
「ほとんど価値ない」 辺野古アセスを疑問視 米国防総省の専門家チーム
沖縄タイムス 2018年4月18日
 名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局が2009年にまとめた環境影響評価(アセスメント)準備書のジュゴンに関する内容を巡り、米国防総省の専門家チームが10年の報告書で調査の不適切さを指摘し、「ほとんど価値を持たない」との見解を示していたことが分かった。係争中の「沖縄ジュゴン訴訟」で同省が米連邦地裁に行政記録として提出していた。専門家の一人が米海兵隊司令部に「(アセスは)非常に不十分で科学的検証に耐えられない」と指摘したメールも開示されており、県や環境団体が長年訴えてきたアセスの不備が裏付けられた格好だ
 一方、同省は14年の「推奨報告書」で、専門家チームの報告書やアセスを踏まえ「ジュゴンへの悪影響はない」と結論付けたが、その判断の妥当性にも疑義が生じかねない。 訴訟原告団は、近く本格審理に入る「差し戻し審」で、同省にジュゴンへの影響を否定した根拠や経緯を追及する見通し。
 
 278ページある報告書は「沖縄のジュゴンの人類学的調査」。同省の委託した考古学や文化人類学者、海洋哺乳類の専門家5人が、日米の文献資料410点の分析や、沖縄での聞き取りを基に作成した。
 報告書は、アセス準備書の問題点として(1)調査者(観察者)の経験や能力に疑問がある(2)生息密度など量的数値を把握する調査がない(3)季節の違いが考慮されていない(4)文献の引用が適切に示されていない-などを挙げた。
(後 略)