経済の原理は弱肉強食であるのに対して、それによって生じる経済弱者を救済するというのが政治の要諦である筈です。
ところが安倍政権はその逆で、金持ちをさらに富ますアベノミクスに血道を上げる一方で、生活保護者を目の敵にして、そこでは「不正受給」が蔓延し(片山さつき議員)多くの受給者が「パチンコや競馬に勤しんでいる」(杉田水脈議員)かのように決めつけています。
安倍政権は今年度も「生活保護の給付水準を10%引き下げる」という公約を実行するのだとして、「生活扶助費」を最大5%引き下げ、ひとり親世帯向けの母子加算も平均約20%削減することで、総額160億円減額することを決めています。
その一方で、米国に言われるままに1機200億円もする全く不要で危険・有害なオスプレイを数十機も購入するわけで、まさに血も涙もない政権です。
LITERAが自由党・山本太郎議員と共産党・志位委員長の国会質問を軸に、生活保護受給者に対する安倍政権の姿勢を取り上げました。
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生活保護のさらなる切り捨てをはかる安倍首相に山本太郎が痛烈ツッコミ!
「芸能人と食事するのに、受給者の話きかないのか」
LITERA 2018年3月31日
弱者や社会保障、なかでも生活保護受給者を目の敵にしている安倍政権。実際に昨年12月には食費や光熱費といった暮らしの根幹にかかわる「生活扶助費」を最大5%の引き下げ、ひとり親世帯向けの母子加算も平均約20%の削減する方針などを打ち出し、生活保護受給者に安価なジェネリック薬(後発医療品)を原則使用させることを盛り込んだ生活保護法などの改正案が、3月30日に衆院本会議で審議入りした。さらに10月からは生活保護受給額を段階的に平均1・8%削減することも決まっている。
先進国、民主主義国家とは思えない弱者切り捨ての異常さだが、この安倍政権の冷酷さに切り込んだ、あの男の言葉をあらためて思い出したい。そう、自由党の山本太郎参院議員だ。
3月5日に行われた参院予算委員会で質問に立った山本議員だが、その中で安倍政権の生活保護費削減と切り捨て、その結果起こった悲惨な現状について、核心をつく質問を安倍首相にぶつけたのだ。
山本議員は、まず生活保護受の不正受給は2016年度件数で約2%、金額で見た場合はたったの0・4%台だと指摘、さらに多くの生活保護受給者が窮状に陥っていることを示した上で、安倍政権下で巻き起こった生活保護受給者バッシングの責任についてこう追及した。
「98%適正に受給している生活保護。その多くが不正受給であるというような空気感、世間には確かに存在するんですよ。そのような空気を作り出した、その原因を作り出したのは一体誰なんだってこと。総理、ご存知ですか?」
これに対し安倍首相は「(生活保護に関する質問の)通告がなかった」とか「質問の趣旨が分からない」「不正受給が多勢という感覚は全くもっていない」などととぼけてみせたが、しかし山本議員はさらに突っ込んだ。
「よく言うなって話なんですよ。そういう空気を作ったの、生活保護の多くが不正受給をやっているという空気作りに貢献したのは誰だって。それは自民党じゃないですか。2012年3月設置の、自民党生活保護に関するプロジェクトチーム。お笑いタレントの母親が生活保護受給していたという不正とは言えない件を問題にして、生活保護バッシングを煽り、それにマスコミも乗っかった。生活保護の不正受給を声高に叫び、政権交代にかかる政権の公約では、生活保護のスリム化まで入れ込み、生活保護バッシングを主導したとも言えますよ、自民党が。全ての人々の権利である生活保護利用に恥の意識を持ち込んだ。セイフティーネットに恥の概念を埋め込んだのは自民党じゃないですか」
山本が指摘する通り、たしかにここ数年卑劣を極めている生活保護者バッシングは、自民党議員たちが大きく加担してきたものだ。
片山さつき、杉田水脈……生活保護バッシングを煽動する自民党議員たち
たとえば山本議員が指摘した“お笑いタレント”の一件とは2012年にもちあがった次長課長の河本準一の親族による生活保護問題だ。このケースは不正受給など違法にあたるものではなかったが(後の法改正で扶養義務が強化されることになる)、しかしメディアはこれを大きく取り上げるなど生活保護バッシングの分水嶺、決定打となったものだった。そして世間のバッシング以上に問題だったのは、これに自民党の片山さつき議員や世耕弘成議員が便乗する形で河本の大バッシングを展開したことだった。これ以降、生活保護は憲法25条で保障された当然の権利であるにもかかわらず、片山らの主張と同じようにメディアも生活保護バッシングに加担。「生活保護は税金泥棒」「生活保護は恥」という空気が社会につくり出されていく。
その流れは2016年の『NHKニュース7』に端を発した“貧困女子高生”バッシングとして引き継がれていく。この時も片山さつき議員が騒動に乗っかり、ツイッターで“貧乏人は贅沢するな!“といった批判を公然と行ったのだ。
さらに今年1月におこなわれた衆院本会議での代表質問で共産党・志位和夫委員長が、昨年末に市民団体が実施した「生活保護緊急ホットライン」で、「食事が削られている」「入浴回数が月1回になっている」「耐久消費財の買い替えができない」「サイズの合わない昔の服を着続けている」「真冬に灯油が買えず肺炎になった」などといった深刻な声が寄せられたことを紹介したのに対し、先の総選挙において安倍首相自らの熱い希望で自民党から出馬し当選した、杉田水脈議員が噛みついた。
杉田議員はツイッター上で、この志位委員長が取り上げた「入浴回数が月1回になっている」「耐久消費財の買い替えができない」という話をもち出し、〈「一体何処を調査してるんだ?」と疑問に思いました〉と投稿。こうつづけた。
〈お風呂を月1回にしてパチンコや競馬に勤しむ方が多いということでしょうか?〉
〈本当に必要な方に支援が届くよう、額の増減だけではなく、現物支給やクーポン制などシステムも含め議論していく時期に来ていると思います〉
この杉田議員の投稿は、あからさまに「生活保護=不正受給」という前提に立つ悪質極まりないもので、生活保護バッシングが吹き荒れた要因となった片山さつきの悪夢が思い返されるようなツイートだ。
もちろんこの流れは“親分”である安倍首相が作り出したものだ。そもそも第二次安倍政権は、河本騒動からの生活保護バッシングの波に乗り「生活保護の給付水準を10%引き下げる」という公約を掲げて当時の与党民主党から政権を奪取、誕生した政権だ。そして安倍政権は公約通り生活保護費の削減を断行し、2013年には生活保護の申請厳格化という「水際作戦」の強化ともいえる生活保護法改正と生活困窮者自立支援法を成立させている。そして昨年の国会では、お得意の嘘も連発し、生活保護をまるで“悪”のように印象操作、「生活保護基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じる」「生活扶助基準を全体として引き下げるものではない」など生活保護費引き下げさえ正当化しようとしたのだ。
こうして安倍政権下で「不正受給許すまじ」「生活保護費を削れ」という空気が醸成され、生活保護を受けづらい状況に陥らせていったことはまぎれもない事実だ。
こうした状況を踏まえ山本議員は、生活保護受給者から寄せられた悲壮なまでの声を紹介、そして安倍政権によるさらなる生活保護費引き下げについてこう批判した。
国連も「生活保護につきまとうスティグマを解消」するよう、日本政府に勧告
「また下げるんですってね、生活保護。しかも、全ての収入を10段階に分割して一番下、最も貧しい収入の人たちに対して、一番下位10%の収入と生活保護を比べて、基準を見直すって。これ、おかしくないですか。景気良くなった、良くなったって言ってるんですよ。でも、生活保護の引き下げをする理由は何かって」
そして不正受給どころか、本来生活保護を受給すべき人々が受給していない、いや、バッシングの影響もあり“我慢せざるを得ない”貧困の現状についても言及していった。
「受けるべき人たちがどれくらい受けられているか。これね、昔に調査してるんですけど、ゆるすぎるんですよ。それで専門家が調べた。2割から3割。2割から3割しか受けられるべき人たちが受けられていないんですよ、生活保護を。じゃあ、この生活保護から漏れたらどこに行くかって? 刑務所しかないんじゃないですか。もしくは生きるのを諦めるしかないんじゃないですか。好景気をうたっておきながら」
これも山本の言う通りだ。日本で生活保護を受ける資格がある人のうち、受給している人の割合を指す「捕捉率」は2割程度だといわれている。ようするに、生活保護を受けるべき貧困状態にあるのに多くの人が生活保護を受けずに我慢しているのが日本の現状だ。にもかかわらず、生活保護費を引き下げようとする安倍首相。
そして唖然としたのは山本議員が安倍首相に向かって「生活保護の受給者、その当事者達に直接声を聞いたことがありますか」と問いかけたときのことだった。安倍首相は最後まで山本議員の問いにまともに答えることすらなかったのだ。この安倍首相の姿勢に、「芸能人とはしょっちゅうご飯食べるのにこういう人たちの話は聞かないんですね」と山本議員はツッコんだ。
安倍首相が弱者に対する共感や想像力をもち得ていないことは、今さら指摘するまでないが、山本議員の質問からも生活保護という制度に対する基本的理解すら、これっぽっちも持ち合わせていないことが改めて浮き彫りになった。
実際、日本政府は2013年5月、国連の社会権規約委員会から〈生活保護につきまとうスティグマを解消〉するようにという勧告さえ受けているが、安倍政権にこれを是正する動きはまったくない。そればかりか、安倍チルドレンの杉田議員などは「現物支給」や「クーポン制」の導入を謳っている。これは生活保護を受ける人びとに恥の意識や劣等感をさらに植え付けるもので、スティグマを助長させようとする提案にほかならない。
生活保護を受けなければならない人びとに受給を促すことはせず、むしろ議員自らが旗振り役となって生活保護バッシングを展開することにより受給者を抑え込む。そして、多くの国民にとって他人事ではないはずの生活保護基準の引き下げに、反対世論が高まることも塞いでしまう。─ 今後、この政権が変わらないかぎり、どれだけ国民の生活が悪化して貧困層が拡大しても、安倍首相は「普通に生活しておられる方々」などと言って片づけ、生活保護基準を引き下げていくだろう。いま、政権と国民の意識を変えなければ、苦しむ人に手が差し伸べられることもなく、ただ野垂れ死んでいくという最悪の国になることは必至だ。 (伊勢崎馨)