2018年4月17日火曜日

首相答弁 次々と綻びが 膨らむ疑念

 毎日新聞が、安倍首相の発言の信ぴょう性が揺らいでいるとして、過去にも問題視されてきた安倍首相の発言内容の正確さや変遷ぶりを検証しました
 
 安倍首相は、野党からモリ・カケ問題への関与があったのではないかと追及されると、「私が働きかけているというのであれば、その確証を示してください」と反撃するのを常としています。彼はそうした証拠を提示できないことを確信しているようです。
 安倍首相が、官僚に「忖度」させることで自分の思う方向に進めさせる手法に確信を持った背景には、以下の体験があったと言われています。
 
 2001NHKが従軍慰安婦など「日本の戦時性暴力」を扱ったドキュメンタリー番組を作ったとき、当時官房副長官だった安倍氏が放映前にNHKの役員を呼び出して「事情を聴いた」後、局上層部の指示で番組は大幅に再編集されました。
 後に政治による報道への干渉であると訴えられたとき、安倍氏は、「編集のやり直しを指示したわけではなくその内容に疑問を示しただけなので、いわゆる検閲にはあたらないと主張し、最終的にそれが認められ「干渉はなかった」とされました。
 
 そういう点では安倍首相の作戦は成功しているかに見えますが、杉田敦・法大教授は「言わなくても分かっているよな」というのは「暗黙の権力行使」であり「そのような権力作用は録音データや議事録が残っている訳がなく、実証しにくい」として、「不適切な暗黙の権力行使があったという合理的な疑いが固まれば確たる証拠がなくても政治責任は成立する。この認識を広く共有していかないと不適切な暗黙の権力行使は是正できない」と述べています(朝日新聞4月16日)
 
 また長谷部恭男早大教授も、「政治問題で確たる証拠を提示できなければ“無罪推定”になるというのは全く違う。政治責任は無罪推定ではない。刑事裁判ではないのだから当たり前」「疑惑を晴らせるのは首相しかいない。その努力をしないと、“推定有罪”とは言えないまでも“グレー”の状態が続く」(同前)と述べています。
 安倍氏が思っているほど自身は安全圏内にいるわけではなく、実際、加計理事長との関係などでも安倍首相の発言は綻びを見せています。
 
 仏紙「ル・モンド」東京特派員、フィリップ・メスメール氏は、安倍首相が佐川氏に便宜を図るように指示しなかったのは「事実」であろうが、間接的に示唆する何かがあったかあるいは首相らの意向を忖度させることで官僚が公文書改ざんにまで手を出してしまう関係性が存在したのであれば、それが「真実」であるという言い方をしています。
    ⇒ (4月8日) 外国人特派員が見た日本の深刻な病
 
 元経産官僚の古賀茂明氏は、「安倍政権の倫理観はものすごくて、直接的な指示のような、決定的な有罪の証拠がない限り何をやってもいいという感覚になっている」と述べています。
    ⇒ (3月29日) 古賀茂明氏が 「佐川証言が本当なら安倍独裁の証し」と 
 
 辛口のブロガーたちは当初から「安倍首相は息をするようにウソを吐く」と批判して来ました。実際ここにきて彼の発言は次々と綻びを見せています。
 毎日新聞の記事を紹介します。
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加計問題  
軽い首相答弁 ほころび次々、膨らむ疑念
毎日新聞 2018年4月16日
 加計学園問題で2015年に作られた「首相案件」文書で、安倍晋三首相が獣医学部新設計画を「(国家戦略特区と認定された)17年1月20日に知った」とする首相自身の説明の信ぴょう性が揺らいでいる。これに限らず安倍氏の発言は過去にも問題視されてきた。発言内容の正確さや変遷ぶりを検証した。【宇多川はるか、中川聡子】 
 
 15日午前のNHK番組で、自民党の新藤義孝政調会長代理は公文書問題全般で「痛恨の極み」と釈明に追われた。 
「首相案件」文書では11日の衆院予算委員会集中審議も荒れた。首相は計画を知った時期を改めて17年1月20日だと説明し、愛媛県職員がうそをついているのか、否か-などと二者択一を迫る野党にまともに答えず、用意した答弁メモを何度も延々朗読。途中で答弁を中断して「やじはやめてください」と注文をつけ、時間がむなしく流れた。 
 
 今回の文書では獣医学部の計画について、15年に柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が県職員に「本件は首相案件」と語り、首相と学園の加計孝太郎理事長の会食でも計画を巡る話題が出たとされる。 
 
 安倍首相は学生時代に留学先で加計氏と知り合う。「腹心の友」と呼んでゴルフや会食を重ねた。昨年7月の衆院予算委で計画を知った時期を「17年1月20日」と述べると、野党は2人の関係を踏まえ、一斉に疑問の声を上げた。 
 実はこの答弁、内容が変遷している。昨年6月5日の参院決算委では「国家戦略特区に申請を出した段階(15年6月4日)で承知した」と述べており、のちに国会で不整合を指摘され訂正した。 
 
 首相発言をどう見るか。 
「政治家がうそをつかないというのはおとぎ話だ」と語るのは、政治と世論の関係を研究する駒沢大の逢坂巌准教授だ。「成熟した民主主義下で政治家は権力維持と政策実現のために言い訳も言い逃れもする。ジャーナリズムがファクトを示し野党や世論が反応すれば、良い意味で緊張関係ができる」と話す。 
 
 安倍氏について逢坂さんは「これまで批判を乗り越えてきたのは政治的力量で、野党とメディアが弱く国民が安倍1強を受け入れていたとも言える」と分析。一方で「強いファクトには対応する説明が必要だ。今は次々出てくるファクトに政権があたふたし、国民がどう反応するかという局面だ」と言う。 
 
 政治心理学者の川上和久さんは、首相発言について事実確認が甘いと見る。「北朝鮮のミサイルや『そもそも』=表=では、事実の重要性を説くブレーンがいないのかと思う。第1次政権時代に殉職警官の名前を間違えた教訓が生きていない」。安倍首相は07年2月、東京の東武東上線で線路内の女性を助けようとして亡くなった宮本邦彦警部の弔問時に「ミヤケさん」と何度も間違え批判を浴びた。 
 
 川上さんは「1強と言われる中で発言に重みを持たせてきたタガが緩んできたようだ」とも語る。「慎重居士で何も言わない政治家は信頼されないが、その場しのぎで『記憶をたどって精査する』を繰り返すのでは、うそをついていると見られかねない。加計氏との関係なども、やましいことがなければ最初から丁寧に説明して傷口を広げずに済んだ話だったのではないか」 
 
 新たな事実が次々出てくる森友・加計疑惑に、自民党の二階俊博幹事長は10日、報道陣にこぼした。「国民もうんざりしていると思うが、実際、我々もうんざりしている」 
 
 埼玉大の長谷川三千子名誉教授は、問題視される首相発言について「国益を左右する問題かどうか冷静に考えるべきだ。森友・加計問題で首相や夫人の関与は何一つ証明されていない。刑事裁判でいえば物証も証言も動機も不十分なのにメディアが騒ぎ、うんざりしている」とコメント。「メディアの狙いは安倍降ろし。この程度で総理を辞める必要はない」と話す。 
 
 一方、漫画家の倉田真由美さんは「首相答弁はうそ、言い逃れとしか思えない。疑惑はクリアにならず、うんざりだ」と話す。「森友・加計問題は、政治権力がどう使われたかという政権根幹の醜聞で総理の資質に直結する。問題が長引きモヤモヤ状態が続くと関心は薄れがちになる。それだけは避けなければならない」と、国民の「うんざり感」に政権がつけ込んでくることを警戒している。 
 
     図表 「安倍首相の発言、検証してみると…