自民岸田派(=宏池会)名誉会長の古賀誠氏は23日、福岡市内で講演し、安倍首相の9条改憲案について「必要性はまったくない」とし、「次の宏池会主軸の政権では9条は一字一句変えない決意が必要だ」、「(岸田氏が)いま出るか、出ないか決めるタイミングではない」が、「安倍政権の後は何としても宏池会を主軸とした政権を作りたい」と語りました(産経新聞)。
天木直人氏は、「憲法9条を堅持し、9条は一字一句変えない決意」こそが最強の憲法9条護憲論者の言葉だと述べ、「加憲、創憲、活憲など、平和憲法の趣旨を活かし、あるいは強化する形での改憲論なら問題ない、いや、むしろそうすべきだ」というのは俗論であるとして切って捨て、古賀誠の言葉は日本の政治史に大きな意味を持つものであると評価しました。
天木直人氏は「新党憲法9条」の代表であり、これはまさにその面目躍如な主張です。
同氏はまた、24日の「天木直人のメールマガジン」で次のように述べています。
「憲法9条を一字でも変えた途端に、まったく別の憲法9条になってしまう。憲法9条は矛盾した歴史的背景に由来するもので、その矛盾を直視し、矛盾に苦しむからこそ二度と過ちを繰り返してはいけないという抑止力が働くのである(一字でも変えればそれが失われる)。
日本は天皇制の維持と引き換えに武装解除の憲法9条を受け入れ、武装解除と引き換えに日米軍事同盟の密約を受け入れた。この矛盾があったからこそ、世界に先だつ理想的な平和憲法を持つことが可能になった。
あの戦争を知らない世代ばかりになった時、この日本特有の歴史はますます国民から忘れ去られていく。どのような文言の9条改憲となろうとも日米同盟が最優先の国是となる。
そのことを現在の天皇が『あのお言葉』で国民に問われたのだ。我々はそれに答えなければいけない」
斬新で含蓄のある表現です。
天木直人氏の二つの文章を紹介します。
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よくぞ言った古賀誠の「憲法9条は一字一句変えては …
2018年4月24日
きょう4月24日の各紙が小さく報じた。
自民党岸田派の名誉会長である古賀誠氏が福岡市で開かれた講演で「安倍政権の後は宏池会(岸田派)主軸の政権をつくりたい」と岸田氏の尻を叩いたと。
そこまではいい。
まさしく自民党の政局が動き始めたということだ。
私が驚いたのは、その後にこう続けたと書かれていたことだ。
「その政権には、憲法9条を堅持し、9条は一字一句変えない決意が必要だ」
そう語ったという。
まさしく私が主張してきた通りの言葉だ。
これこそが、いまや共産党さえも言わなくなった、最強の憲法9条護憲論者の言葉だ。
安倍首相の自衛隊合憲明記にとどめたいかさま改憲はもとより、いまや護憲論者の中からも、加憲、創憲、活憲など、平和憲法の趣旨を活かし、あるいは強化する形での改憲論なら問題ない、いや、むしろそうすべきだという俗論が花盛りだ。
そんな中で、自民党の重鎮が、「憲法9条は一字一句変えてはいけない」と発言したのだ。
その言葉は貴重だ。
果たして、岸田氏はそれを言い出して安倍首相や石破氏と総裁の座を競う事ができるか。
果たして古賀氏は岸田氏をそう説得できるか。
それが実現できた時、次の自民党総裁が俄然おもしろくなる。
歴史的に重要な意味を持つ自民党総裁選になる。そして野党の出番がますますなくなっていく。
日本の政治史に大きな意味を持つ古賀誠の言葉である(了)
なぜ「憲法9条は一字一句変えてはいけない」のか
反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人のメールマガジン 2018月4月24日
なぜ私は憲法9条を一字一句変えてはいけないと主張するのか。
それは憲法9条を一字でも変えた途端に、まったく別の憲法9条になってしまうからだ。
憲法9条が出来た矛盾した歴史的背景と、その矛盾した歴史的背景から由来する、戦後から今日に至るまで続いた日本の葛藤した政治史のすべてが消えてしまうからだ。
そうしてはならない。矛盾を直視し、矛盾に苦しむからこそ、二度と過ちを繰り返してはいけないという抑止力が働くのだ。
憲法9条は、その時の一世代が変えてしまうにはあまりにも大きく、重いものがあるのだ。
いうまでもなく、日本は天皇制の維持と引き換えに武装解除の性格を持つ憲法9条を受け入れた。そして同時に武装解除と引き換えに日米安保体制と言う名の日米軍事同盟という密約を受け入れた。
逆に言えば、この矛盾があったからこそ、世界に先だつ理想的な平和憲法を持つことが可能になったのだ。
この史実は決して広く日本国民に共有されていない。それは、国民の不勉強もあるが、不都合な真実が国民から隠されてきたことにもよる。
そして、いまやあの戦争を知らない世代ばかりになった時、この日本特有の歴史はますます国民から忘れ去られていく。
矛盾した三つのこの国の国体のうち、日米同盟ばかりが圧倒的優位に立つことになる。
どのような文言の改憲となろうとも、憲法9条の改憲とともに日米同盟が最優先の国是となる。
逆なのだ。憲法9条が最優先の国体とならなければいけないのだ。
そのことを、象徴天皇制の下ではじめて天皇になられた今上天皇が、あのお言葉で国民に問われたのだ。
我々はそれに答えなければいけない。憲法9条が一字でも変わってしまえば、それらすべてが無かったことになる。
そうさせてはいけないのだ。
憲法9条は矛盾した戦後史の生き証人なのである。
憲法9条論争は終わらせてはいけない。
戦後史は永久に語り継がれなければいけない。
それこそが、日本が二度と戦争をしないための唯一、最善の方策なのである。
はたして古賀誠氏はそれに気づいているだろうか(了)