9日付シネマトゥデイによれば、望月・東京新聞記者の著書を原案にしたサスペンス映画『新聞記者』の評判は非常に良く、観客動員数は公開11日目で17万2000人余、興行収入は2億1000万円余ということです。
映画のパンフレットは42の劇場で売り切れとなり(1万部増刷を決定)、動員数は2週目の週末の方が1週目の週末を上回りました。客層は従来の中高年層に加え若い層が徐々に増えてきているということで、今後の伸びが期待されます。
映画のネットサイトは公開早々から攻撃を受け、サーバーがしばしばダウンするなどの被害を受けました。具体的には7月1日から断続的に複数の特定IPアドレス(パソコン端末)から1秒間に何10回という、人力では不可能な高頻度のアクセスがありダウンしたということです。
内閣調査室の幹部は映画公開前に内容をつかみ「絶対許さない」と親しい記者に明かしたそうです。直接標的とされた官邸と内調が、映画の大規模な興行とその大盛況を大いに苦にしていることは火を見るよりも明らかです。
ただSNSが発達した現在、サーバーダウンを知った多くの人たちがTwitterなどに書き込みをしたため、逆に大いにこの映画の評判を高めることになりました。
そのせいかどうか、サーバー攻撃はある時期から一気に減少し、今はほぼ普通の状況に戻ったということです。製作者側は被害届を出すとかIPアドレスを特定するなどは、現在のところ考えていないということです。
映画の圧倒的な出来栄えに基づく大好評がそうした妨害に打ち勝ったというわけです。
LITERAとシネマトゥデイの記事を紹介します。
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望月衣塑子原案の映画『新聞記者』サイトに宣伝妨害のサイバー攻撃!
松坂桃李主演なのにテレビはプロモーション拒否
LITERA 2019.07.09
東京新聞・望月衣塑子記者原案、松坂桃李主演、安倍政権下で起こった数々の不正を描いたことで大きな話題になっている映画『新聞記者』。観客動員も好調で、現在も上映中の同映画だが、6月28日の公開直後に大きなトラブルに見舞われていたことがわかった。公式サイトがサイバー攻撃を受け、サーバーがダウンしていたのだ。
〈現在、特定のIPアドレスから、システムを使用した集中的なアクセスを受けていることから、サーバーが一時的にダウンしてしまうなど不安定な状況になっております〉
ツイッターなどSNSの公式アカウントにはこんな告知があったが、一体何が起こっていたのか。配給会社スターサンズの宣伝担当者に話を聞くと、異変は公開直後から起こっていたという。
「記録に残っているかぎりでは7月1日からですね。断続的に複数の特定IPアドレスからのアクセスが殺到したのです。それは1秒間に何十回という、人力では考えられないようなアクセスでした。その結果、サーバーが不安定な状態になり、ダウンしてしまった。映画のサイトなのでこうした事態の対策をまったくしておらず、宣伝には非常にダメージがありました」
そのため配給会社は、Twitterや上映映画館の外部サイトでの告知を行うなど、対策に追われたという。
「ただ、サーバーダウンを知った多くの人がTwitterなどに書き込みをしてくれましたので、それはすごく助かりました。異常アクセスも、そうした人々の“声”が抑止効果になったのか、ある時期から一気に減少し、今はほぼ普通の状況に戻りました。」(宣伝担当者)
担当者は「サイバー攻撃かどうかは断定できない」として、「被害届を出すとか、IPを特定するなどは、現在のところ考えてはいません」というが、“特定”のIPアドレスからの集中アクセスということは、明らかに意図的な嫌がらせ、妨害行為があったということだろう。
冒頭でも述べたように、映画『新聞記者』には、安倍政権下で実際に起こった様々な不正を想起させるエピソードがてんこ盛りになっている。たとえば、物語の核でもある大学新設計画をめぐる不正は明らかに加計学園問題を意識させるし、ほかにも、前川喜平・元文科事務次官への謀略報道をモチーフにしているとしか思えない文科省官僚に対するスキャンダル攻撃、伊藤詩織さんの告発を彷彿とさせる“総理ベッタリ記者”による性暴力事件もみ消し、森友公文書改ざん問題を示唆する官僚の自殺などのエピソードも出てくる。
さらに、こうした政権の謀略を担う機関として、内閣情報調査室がクローズアップされ、映画で描かれた数々の謀略工作のほとんどに関与しているという設定になっていた。
官邸はこの映画の内容に怒り心頭で、公開前に内容をつかんだ内調幹部は親しい記者に「絶対許さない」と烈火のごとく怒っていたという。そして、同じく安倍応援団やネトウヨも公開前から一斉に映画に対して、非難と攻撃を繰り広げていた。
そこに、サイバー攻撃があったため、ネット上ではいま、「安倍政権や内調関係者の仕業じゃないないか」などという憶測の声まであがっているのだ。
『新聞記者』では、内閣情報調査室のスタッフたちがネットに向かい、すさまじい勢いで書き込み続けて謀略情報を流す様子が描かれていたが、まさに同じような光景が繰り広げられたのではないか、というのだ。
現実的には、内調などの政府機関が直接、そんなリスクを冒すとは考えにくいが、政権や自民党の周辺にいる関係者、あるいは熱烈な政権支持者が安倍政権批判を仕掛けた可能性は十分あるだろう。
『新聞記者』がテレビのバラエティでまったく取り上げられない理由
もしそうなら、日本の言論状況もいよいよロシア並みになってきた感じがするが、映画『新聞記者』の宣伝活動には、この直接的な妨害以外にもうひとつ、大きな障害があったようだ。
それは、映画『新聞記者』がテレビのプロモーションをことごとく拒否されているという問題だ。周知のように、人気俳優が出演する映画が公開される際は、その俳優たちがテレビのバラエティに出演し、映画の宣伝を行うのがパターンになっている。
『新聞記者』の場合も松坂桃李が出演していることから、バラエティ出演とプロモーションが展開されてよさそうなものだが、ほとんど『新聞記者』については触れられなかった。こうした事情についても、前出の配給会社の宣伝担当者に聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。
「たしかに、テレビあまり扱ってくれませんでしたね。主演のシム・ウンギョンさんや松坂桃李さんらの舞台挨拶などは紹介されましたが、そのときも作品の内容は紹介してもらえませんでした。そもそも政治ものの映画パブリシティはマスコミのみなさんはあまり積極的ではないのですが、今回は特に“選挙前”と言われて。私たちは“公示前だからいいんじゃないか”と思ったのですが、難しかった」(宣伝担当者)
「選挙前」などと言い訳をしているが、テレビが不自然なくらい『新聞記者』のことを紹介しようとしなかったのは、同作が安倍政権の不正を描く映画だったからだ。
テレビで芸能人の政治発言がタブーと言われている状況について、実際は「政治発言がタブーなのではなく、政権批判がタブーになっている」こと、背景に「安倍政権批判をした芸能人を起用すると、抗議が殺到する」という問題があることは、リテラでも散々指摘してきたが、まさに、『新聞記者』でも、同じような構造で、自主規制がしかれたのである。
公式サイトへのサイバー攻撃に、プロモーション拒否。政権批判を封殺する圧力が新聞やテレビだけでなく、映画にまで及び始めている状況に暗澹とさせられるが、救いは、こうした妨害にもかかわらず『新聞記者』の観客動員が好調なことだ。公開初週に比べて翌週は通常、動員数が下がることが多いが、『新聞記者』の場合は逆に105%と増えている。興行収入も2週目が終わった段階で約2億円と、社会派映画としては異例の結果を残している。
大手マスコミが政権に忖度、萎縮し、安倍応援団のがなりたてる声ばかりが目立つ昨今、この国の政権権力や問題に正面から向き合った作品が評価され、多くの人々が映画館に足を運ぶ。こうした動きが今後、さらに大きなものになっていくことを強く望みたい。(伊勢崎薫)
『新聞記者』11日間で2億円突破 パンフ増刷も決定
シネマトゥデイ 2019年7月9日
東京新聞記者・望月衣塑子(もちづき・いそこ)の著書を原案にした、シム・ウンギョン&松坂桃李共演のサスペンス映画『新聞記者』が、公開11日目に興行収入2億円を突破した(数字は配給調べ)。
『サニー 永遠の仲間たち』『怪しい彼女』などの韓国の人気女優ウンギョンと、『娼年』『居眠り磐音』、「パーフェクトワールド」(関西テレビ・フジテレビ)など映画やドラマで主演が続く松坂がダブル主演を務める本作。大学新設計画にまつわる極秘情報の匿名FAXを受け取り、真相究明に奔走する東都新聞の記者・吉岡(ウンギョン)と、国民に尽くす信念と現実の任務の狭間で葛藤する内閣情報調査室官僚・杉原(松坂)。立場の異なる2人の人生が交錯するなかで、思いもよらぬ真実が浮かび上がっていくさまを、緊迫感たっぷりに活写する。『オー!ファーザー』『デイアンドナイト』などの俊英・藤井道人がメガホンをとった。
143館で公開された本作は、1週目(6月28日~7月4日)は累計動員数10万6,807人、興収1億2,920万9,860円を記録。7月5日から8日までの4日間を加算すると動員数17万2,127人、興収2億1,055万5,640円となり、興行通信社より発表された全国映画動員ランキングでは10位から8位にランクアップした。また、初週末3日間の数字(動員:4万9,871人/興収:6,233万1,930円)を、2週目週末が上回り(動員:5万1,229人/興収:6,485万8,230円)、動員対比102.9%、興収対比104.1%と好調な推移となっている。
配給によると客層は従来の中高年層に加え若い層が徐々に増えてきており、42劇場で売り切れとなっていたパンフレットも1万部の増刷が決定したという。(編集部・石井百合子)