2019年7月22日月曜日

道警の警官による市民の排除に抗議する声明(自由法曹団)

 首相の街頭演説にヤジを飛ばした聴衆を警察が排除するは、新憲法になってからは安倍政権初めて(五野井郁夫教授ということです。それが自分は平気でヤジを飛ばすけれども、自分がヤジられるのは我慢が出来ないという「首相の特異な気質を慮ってのこと」というに至っては、まさに空前絶後の事柄で笑い話にもなりません。
 
 自由法曹団は19日、「北海道警の警察官による市民の取り押さえと排除に抗議する声明」を発表しました
 声明は、北海道警の警察官による市民の取り押さえと排除は、公選法に反し、最高裁の判例にも反するもので、警察法2条の「不偏不党且つ公正中立」を旨とし、「いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない」にも反するものであるとしています。
 
 公権力の違法な行使を しかも「公然」と行うのは極めて危険な事態です。
 声明の全文と毎日新聞の関連記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
北海道警の警察官による市民の取り押さえと排除に抗議する声明
 
 本年7月15日午後、札幌市中央区で安倍晋三首相が参院選候補者に応援演説をしている最中に、何度か「安倍やめろ」等と声を発した男性が制服を着た警察官を含む複数の男性に取り押さえられ、演説現場から強制的に排除されるという事態が発生した。
 
 北海道警警備部は、朝日新聞社の取材に対して「トラブル防止と、公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」と説明したとのことである。
 しかし、現場に居合わせた者が撮影しSNS上で公開している動画によれば、警察官が男性に対して事前に声かけをした形跡はなく、突然取り押さえて現場から排除していることがうかがわれる。
 
 また、選挙の自由妨害罪を定める公職選挙法225条には演説妨害の罰則規定があるが、最高裁判決は、演説の妨害とは「事実上、演説をすることが不可能な状態に陥らしめること」であり、演説の継続を不可能にしたり、演説を聴取することを不可能にする行為であるとしている(最高裁判決1948年6月29日)。上記動画では、男性は、選挙カーの上で演説する安倍首相に対して、離れた場所から何度か「安倍やめろ」と声を発したに過ぎず、演説が中断されることなど一切なかったのであり、「公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれ」という北海道警の説明にも無理がある
 
 そもそも、警察法2条は、警察の活動について「不偏不党且つ公正中立」を旨とし、「いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならないとしており、警察は、公平・中立・適正にその職務を行使しなければならない。特に、選挙は国民が選挙権を行使して意見を表明する大切な場であり、選挙期間中はとりわけ慎重な対応を要するべきである。
 
 警察が、公職選挙法違反のおそれもないのに、事前の声かけもなく、突然複数人で男性を取り押さえて現場から強制的に排除することは、不当な干渉であり、許されないものである。今回の警察の対応は、公権力が、有形力を行使して時の権力者に対する批判を強制的に封じ込めることにもつながりかねない。
 自由法曹団は、民主主義を守り、政治的言論の自由の保障を求める立場から、今回の北海道警警備部の対応に対して厳重に抗議するとともに、全国の警察等の公権力に対して政治的言論に対する干渉を行うことのないよう強く要請する。
2019年7月19日
   自 由 法 曹 団     
    団長 船 尾  
 
首相ヤジ排除 相次ぐ抗議 北海道警「対応は適切」と反論
毎日新聞 2019年7月21日
 札幌市で15日にあった安倍晋三首相の参院選の街頭演説で、ヤジを飛ばした数人が道警に排除された問題を受け、批判が広がっている。20日までに弁護士で作る自由法曹団道支部や立憲民主党道連、共産党道委員会などが相次いで「表現の自由を侵害する」と抗議を表明した。これに対し、道警は腕や肩をつかんで移動させた行為を認め、「対応は適切だった」と反論する。 
 
 共産党道委員会の青山慶二委員長は20日、「道警の行為は表現の自由への侵害だ」と抗議する声明を発表した。説明や検証を求め、「不特定多数の市民が集う街頭で警察権力が時の政権の意に沿わないと判断し排除することは政治弾圧そのもの」と指摘した。 
 
 立憲民主党道連も18日、道警に再発防止を申し入れ、「公権力の乱用。どこでも思いを声にすることが保障されるべきだ」(道下大樹副代表)と批判。自由法曹団道支部(佐藤哲之支部長)と市民団体「国民救援会道本部」(守屋敬正会長)も19日に「表現の自由の不当な制限」と抗議した。 
 
 安倍首相による街頭演説や移動など複数の場所での排除行為が目撃されているが、道警は札幌駅前の演説で「安倍辞めろ」「増税反対」などと声を上げた男女2人を移動させた事実を認めている。興奮状態で大声を出し、周囲との衝突が予想されたとして、「犯罪やトラブルの未然防止。声かけをして移動させた」と説明している。ただ、排除行為が全体で何件あったかや今回の対応の法的根拠について「事実関係を確認中でコメントできない」としている。【荻野公一、山下智恵】 .