アメリカの主導する「有志連合」に日本が参加すべきでないことは明らかです。
そもそもホルムズ海峡周辺での事態はトランプ氏が引き起こしたもので、アメリカは日本のタンカーを攻撃したのがイランであると盛んに主張しましたが、世界はそれを受け入れていません。そもそもイランには日本の船舶を攻撃する理由がありません。
その後イランはイギリスのタンカーを拿捕しましたが、それはイギリスが先にイランのタンカーを拿捕(犯罪行為)したことへの報復であり、非はイギリスにあります。
日本には長きにわたるイランなど中東の国々との信義があります。それを来年の大統領選で落選するかも知れないトランプ政権に強要されて、いずれは対イラク戦争に発展しかねない「有志連合」に参加するのは愚の骨頂です。
信濃毎日新聞が、「有志連合構想 独り相撲と距離を置け」とする社説を出しました。
西日本新聞は、「ホルムズ海峡 軽々に有志連合に乗るな」とする社説を出しました。
以下に紹介します。
(関係記事)
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社説 有志連合構想 独り相撲と距離を置け
信濃毎日新聞 2019年7月24日
トランプ米政権が、原油輸送の大動脈である中東ホルムズ海峡の安全確保を理由に、同盟国に有志連合への参加を呼びかけている。
ボルトン米大統領補佐官が来日し、日本にも提案の趣旨を伝えた。
友好国とはいえ、米国の「独り相撲」に振り回されることはない。日本政府は緊張緩和に向けた外交努力に徹すべきだ。
日本と台湾のタンカーが海峡付近で攻撃されたのは6月だった。トランプ氏は、各国は民間船舶を自国で守るべきだと主張、有志連合構想を打ち出した。
米国は先日、各国外交団を招いての「説明会」を開いている。連合の目的が少し変わった。
参加国が協力して海域の監視に当たり、連合内に設ける中央指揮所で情報を集約して共有する。自国船舶を守るかどうかは各国の判断に委ねるとした。イランとの対立色を薄める狙いという。
イランの脅威をあおり、原子力空母や戦略爆撃機を派遣したものの、思うように対イラン国際包囲網が広がらない不満が構想の根底にある。米軍費用の軽減も目的の一つとされる。トランプ政権にとり、多くの国の参加を得ることが眼目なのだろう。
今日の事態を招いた責任は米国に大きい。イラン核合意から一方的に離脱し、経済制裁を完全復活させてイラン国民の生活を窮地に追い込んでいる。
ロウハニ政権は1年間、欧州の支援策を待って核合意を守り続けた。5月に入って合意の一部を破り始めたのは核兵器開発の意図というより、米国を説得し原油禁輸を解いてほしいとの主要国へのメッセージと受け取れる。
岩屋毅防衛相は「すぐに自衛隊を派遣する状況にはない」と繰り返し述べている。当然だ。日本船舶への攻撃が続いているわけではない。法律を曲解しての自衛隊派遣は認められない。
資金提供であっても有志連合に協力すれば、イランに敵対的行動と捉えられる恐れがある。
欧州の出方も気にかかる。英国がイランのタンカーを拿捕(だほ)したことへの報復のように、イランは19日、英タンカーを拿捕した。既にペルシャ湾に海軍を駐留させている英政府は、有志連合とは別に欧州独自で軍艦を派遣し、船舶を保護する意向を示す。
関係国が「海峡の危機」をつくり出しているようにさえ映る。米国とイランが話し合いの席に着くよう強く迫らなければ、航行の安全は望めない。
社説 ホルムズ海峡 軽々に有志連合に乗るな
西日本新聞 2019/7/24
米国のトランプ政権が、中東ホルムズ海峡を航行する船舶の安全を守るための「有志連合」の結成に動きだした。日本政府も米側から有志連合への参加要請を受けている。
ホルムズ海峡はサウジアラビアなど産油国発のタンカーがペルシャ湾から出る海上交通の要衝だ。日本の輸入原油の約8割が同海峡を通過する。
その周辺海域で最近、米国とイランとの軍事的緊張が急速に高まっている。6月には、日本の海運会社が運航するタンカーが何者かに攻撃された。
こうした状況の下、日本をはじめ中東の原油を輸入する諸国にとって、同海峡の船舶の安全確保が急務となっている。
しかし、米国が提唱する「有志連合」構想には疑問点が多い。日本政府は軽々に参加を表明するべきではない。
最大の疑問は、米国が主導する有志連合に平和のための大義はあるのか、という点だ。
イランを巡る中東情勢は、オバマ政権時代の米国とイラン、欧州諸国などの間で核合意が結ばれ、それなりに安定していた。トランプ政権はその核合意を一方的に離脱した上、イランに対する経済制裁を再開してイランの反発を引き起こした。いわば現在の危機をつくり出した張本人がトランプ政権なのだ。
「対イラン包囲網」の狙いが色濃い米国の有志連合が実現すれば、イランの抵抗は必至で、さらに情勢を悪化させかねない。また、米国主導の構想に日本が加われば、イランと日本の伝統的な友好関係を損ねる。
もう一つの問題点は、日本が参加する場合、自衛隊の艦船を当地に派遣する法的枠組みがはっきりしないことだ。
自衛隊法の「海上警備行動」を根拠とすれば、自国船舶しか護衛できないため他国との共同行動が取れない。海賊対処法を使おうにも、船舶への攻撃主体が海賊とは思えない。
2015年に成立した安全保障関連法も検討対象だろうが、現在の状況を同法の適用要件である「存立危機事態」と認定するには無理がある。
日本政府としては、筋の悪い米国の構想に乗るよりも、まず米国とイランに自制を呼び掛け、危機の沈静化を働き掛ける外交努力が先ではないか。
自国の船舶の安全確保を他国に頼るわけにはいかない。さらに危機が高まれば、日本もホルムズ海峡周辺海域の安定を維持する何らかの警察行動に参加する決断を迫られるだろう。
しかしその場合も、日本の行動が緊張を高めることのないよう留意し、憲法の「専守防衛」の枠を超えずに何ができるのか、知恵を絞る必要がある。