2019年7月23日火曜日

いずれ“ホルムズ海峡への自衛隊派兵”を公表する政府

 米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長ホルムズ海峡周辺での船舶の安全を確保するため、同盟国と多国籍軍(メディアの訳は「有志連合」)を結成する考えを示したは9日でした。そして2週間程度で参加国を見極める」と述べました。
 米政府から協力を打診された場合の対応について訊かれた野上浩太郎官房副長官は10日、「イラン情勢を巡り日米間で緊密なやりとりをしているが、詳細は差し控えたい」と逃げましたが、11日の日経新聞は米国から協力の打診があったと報じました。
 東アジア政策担当の米国務次官補に就任したばかりのスティルウェル氏が11日に来日したのもそのためで、12日には谷内・国家安全保障局長や外務省、防衛省幹部らと会談しています。安倍政権は参院選に影響を与えないようにとひた隠しにしていましたが、多国籍軍参加についての実務レベル協議に他なりません。
 
 安倍政権は農業分野の日米貿易交渉で大幅な譲歩をし、その内容は参院選後に明らかにされると先にトランプ氏に暴露されていますが、“ホルムズ海峡への自衛隊派兵”も事実上決定していると読まれています。これは憲法違反の海外派兵になります。
 しかもその任務が民間船舶の安全の確保に留まる保証はなく、いずれそれが対イラク戦争に発展する惧れは濃厚です。そうなれば日本は中東の大国と戦争する国ということになり、これまで営々と築かれてきた中東との信義は一夜にして敵対関係に変わります。
 
 それが戦争国家アメリカに追随する安倍氏の望むところなのでしょうか。滅茶苦茶すぎる話です。
 LITERAの記事を紹介します。
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安倍政権が参院選後にまた手のひら返し! 
ひた隠しにしてきた“ホルムズ海峡への自衛隊派兵”を事実上決定
LITERA 2019.07.23
 やっぱり“急加速”させてきた。中東ホルムズ海峡をめぐる“自衛隊のイラン派兵”のことだ。参院選投開票翌日の22日、来日中のボルトン米大統領補佐官が、官邸の谷内正太郎・国家安全保障局長、岩屋毅防衛相、河野太郎外相と相次いで会談。日本の「有志連合」参加について具体的に話し合われたと見られている
 周知の通り、米国とイランとの緊張の高まりを背景に、トランプ米大統領はホルムズ海峡の「航行の自由確保」を名目として、軍事的な「有志連合」の結成を各国に呼びかけた。つまり、米国を中心にした多国籍軍に入って軍事行動に協力しろ、と日本も迫られているのだ。
 ところが、安倍政権は姑息にも、“自衛隊の海外派遣”が参院選の争点にならないよう、この間、有志連合参加の件を徹底してはぐらかしてきた。
 たとえば、菅義偉官房長官は12日の記者会見で、米国から有志連合参加の打診があったかについて「イラン情勢について日米間でさまざまなやりとりをしているが、内容は控えたい」とごまかした。また、岩屋毅防衛相は16日の会見で「現段階でホルムズ海峡へ自衛隊を派遣することは考えていない」とコメント。西村康稔官房副長官も、17日の会見で有志連合について聞かれ「米国をはじめ関係国と連携しつつ、中東における緊張緩和と情勢の安定化に向けて外交努力を継続したい」と述べるにとどめていた。
 だが、すでに選挙期間中には“日本の有志連合参加”は既定路線になっていたとみて間違いないだろう。実際、12日には米国務省のスティルウェル次官補が谷内正太郎・国家安全保障局長や外務省、防衛省幹部らと会談。政府は内容について公にしていないが、これは、すでに水面下の実務的なレベルで協議されていたことに他ならない。ようするに、安倍政権は参院選に影響を与えないように、この間、国民にひた隠しにしてきたのである。
 
 まったく、卑劣にもほどがあるが、このまま日本が有志連合へ参加することになれば、物資運輸等の後方支援や救護活動程度ではすまされないだろう。米国と安倍政権は、自衛隊を直接、ホルムズ海峡に派遣し、集団的自衛権の行使という展開にもっていこうとするのは確実だ。
 思い出してほしいのが、安倍首相が2015年に安保法制を強行する際、「ホルムズ海峡における機雷掃海」を集団的自衛権行使による海外派兵の代表例として、何度も喧伝してきたことだ。これについては多くの反論が出て、結果的に国会審議の終盤、事例として撤回するまで追い込まれたのだが、そもそも安保法制自体が米国の要請によるものだった。
 事実、安保法制に多大な影響を与えた2012年の「第3次アーミテージ・ナイ リポート」でも〈イランがホルムズ海峡を封鎖するとほのめかしたら、自衛隊は掃海艇を派遣すべきだ〉とされている。つまり、“ホルムズ海峡への自衛隊派兵による米国船防衛”は、米国からの長年の要望であったのだ。
 しかも、トランプ大統領はもっと強硬で、「日米安保の不公平さ」を公言し、日本政府へのプレッシャーを強めている。6月24日にはTwitterで、ホルムズ海峡のタンカーについて〈中国は91%、日本は62%、ほかの国も同じようなものだが、あの海峡から原油を運んでいる。なぜ、われわれアメリカがそれらの国のために航路を無償で(何年にもわたって)守っているのか。そうした国々はみな、危険な旅をしている自国の船を自国で守るべきだ〉(編集部訳)と投稿している。
 
安保法制の拡大解釈で不可能な“ホルムズ海峡での集団的自衛権行使”を可能に
 もちろん、トランプが言っているのは「日本の船は日本が守れ」ということのみではない。ホルムズ海峡で外国船、とりわけ米国船が攻撃された場合や、なんらかの軍事衝突に発展した場合に、トランプが日本の自衛隊を手足として使いたいと考えていることは、疑う余地もないだろう。そして、これまでの関係を考えれば、安倍首相がこの要求に応える可能性は非常に高い。
 しかし、そんなことが可能なのか。現状の安保法では、たとえば米国とイランが戦争状態に突入し、ホルムズ海峡封鎖でタンカーの渡航が不可能になれば、日本のエネルギー供給が断たれたことを理由として、政府が「武力行使の新3要件」の「存立危機事態」に認定、集団的自衛権を行使するというシナリオが可能だ。
 だが、トランプと米政府が今回、求めているのは、それ以前、すなわち戦争未満の状況での自衛隊による米艦護衛と武力行使だ。
 そこで安倍首相は、集団的自衛権が認められる「存立危機事態」には至らないケースでも“拡大解釈”によって自衛隊に米艦船の護衛をさせ、途中で武力行使に持っていく方法を検討していたのだという。
 
「ホルムズ海峡に自衛隊を派遣する方法については、官邸、外務省、防衛省の三者ですでに協議が進められています。具体的には二つあって、一つは『重要影響事態』として派遣する、もう一つは、日本の船舶の安全を守るという名目で『海上警備行動』として派遣するというものです」(防衛省担当記者)
 ちなみに、「重要影響事態」というのは、「日本周辺の地域における日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態」に自衛隊を派遣することをさだめた「重要影響事態法」に基づくもの。以前は、「日本の周辺地域」と地理的な制限があったが、安倍政権下で施行された安保法制で、この制限が外され、世界中に派遣できるようになった。
 重要事態の場合、目的は後方支援に限られているが、途中で緊迫した事態になった際には、存立危機事態に切り替えて武力行使に参加する計画らしい。
 
自衛隊海外派兵の既成事実で9条を空文化、なし崩し改憲に持ち込む可能性も
 もう一つの「海上警備行動」(自衛隊法82条)も本来は、自国の船舶を守る際にしか適用できないが、米艦のそばに派遣し、事実上、米艦を護衛するという作戦も考えられる。これもやはり、事態が緊迫した際に存立危機事態へ切り替えることも視野に入れているはずだ。
 いずれにしても、米艦防護中に突発的な戦闘が発生したり、あるいは何らかのかたちで米軍が被害にあえば、集団的自衛権を発動し、日本が戦後初めての“戦争”へ突入する可能性は決して低くない。
 また、仮にそういう事態を避けられたとしても、武力行使ができる状態での自衛隊の海外派兵という既成事実をつくれば、憲法9条を完全に空文化させることができる。この参院選で改憲発議要件の「3分の2」議席を失った安倍首相としては、米国が迫る「有志連合」への参加を奇貨として、“なし崩しの改憲”に持ち込もうという腹づもりかもしれない。
 
 本サイトは6月のG20に際した日米首脳会談に関する記事
https://lite-ra.com/2019/06/post-4806.html)のなかで、安倍首相がトランプ大統領から「日米安保の見直し」を要求されたことを逆手にとって、「参院選後に米国の日米安保条約の見直し要求を大義名分にし、自衛隊が海外で武力行使できるよう解釈改憲をさらに進めていく可能性が非常に高い」という全国紙政治部デスクの見解を伝えた。「有志連合」参加をめぐって、まさにそのシナリオが現実になる可能性がどんどん高くなっているのだ。
 安倍首相は22日の記者会見で「どういう形、どういう目的でやろうとしているのか伺ってみないと、何が求められているか分からない」などと延べ、慎重姿勢をアピールしているが、騙されてはいけない。選挙を終えたいま、有志連合へ参加し、安倍政権が“改憲への地ならし”として自衛隊の海外派遣をゴリ押しするのは火を見るより明らかだ。“日本の戦争参加”を食い止めるには、いま、声を大にするしかない。 (編集部)