2019年7月23日火曜日

参院選東北 野党共闘が4勝、自民は2議席

 東北6県の1人区選挙区では野党統一候補が、宮城、山形、岩手、秋田で4勝を上げ、山形県と接している新潟選挙区でも野党統一候補が勝利しました。
 
 東北6県の総括の記事と、上記の5選挙区の選挙結果の記事を紹介します。
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<参院選東北> 野党共闘4勝、自民2議席
河北新報 2019年7月22日 
 第25回参院選は21日、投開票された。東北6選挙区(改選数各1)の全てで自民党現職候補に野党統一候補の新人が挑んだ与野党対決は、自民が岩手、宮城、秋田、山形の各選挙区を落とし、2勝4敗の惨敗に終わった。岩手、宮城、山形は前回(2016年)に続く敗戦で、参院の選挙区議席を失った。統一候補を擁立した立憲民主、国民民主、共産、社民の野党勢力は4議席を奪取し、勝利した。
 宮城は立民新人の石垣のり子氏(44)が初当選を果たした。地元ラジオ局でアナウンサーを務めた知名度を生かして無党派層に浸透。野党地方議員と連携し、非自民票を取り込んだ。4選を期した自民現職の愛知治郎氏(50)は組織戦を展開したが競り負けた。
 青森は自民現職の滝沢求氏(60)が、立民新人の小田切達氏(61)を下し、再選を決めた。地元の八戸市を中心に分厚い組織を固め、激しく追い上げた小田切氏を振り切った。
 岩手は無所属新人の横沢高徳氏(47)が、4選を目指した自民現職の平野達男氏(65)を破って初当選。小沢一郎衆院議員(岩手3区)や達増拓也知事の後援会組織がフル回転した。
 秋田は無所属新人の寺田静氏(44)が、再選を期した自民現職の中泉松司氏(40)に競り勝ち、初当選した。地上配備型迎撃システムの配備計画を巡る国の手法を批判し支持を広げた。
 山形は無所属新人の芳賀道也氏(61)が初当選し、自民現職の大沼瑞穂氏(40)の再選を阻んだ。地元局アナウンサー時代の知名度と人脈を生かし、全域で無党派層に浸透した。
 福島は自民現職の森雅子氏(54)が、無所属新人の水野さち子氏(57)をかわし、3回目の当選。少子化担当相を務めた実績と知名度で終始、先行した。
各県 候補者別得票数 省略)
 
 
<参院選宮城>石垣氏初当選、無党派票・政権批判票取り込む
河北新報 2019年7月22日
 接戦となった宮城選挙区(改選数1)は立憲民主党新人の石垣のり子氏(44)が競り勝ち、初当選を果たした。自民党現職の愛知治郎氏(50)は3期18年の実績や安定政権の必要性を訴えたが、届かなかった。
 石垣氏を押し上げた要因の一つは野党共闘だ。立民と国民民主、共産、社民の3党、連合宮城などが支援態勢を構築し、無党派層を含めた政権批判票を取り込んだ。
 宮城の野党共闘は2016年の前回参院選、17年の仙台市長選に続いて与党候補を下したことになる。
 年金問題などの批判を展開し、有権者の潜在的な政権不信を引き出した。消費税撤廃など独自の主張も注目を集めた。ツイッターなどSNS(会員制交流サイト)を駆使し、刷新感を打ち出すことにも成功した。
 石垣氏は立候補表明が5月上旬、共闘態勢の構築も6月中旬にずれ込んだが、地元ラジオ局アナウンサーとして培った知名度で序盤から接戦に持ち込んだ
 大票田の仙台市に狙いを定め、草の根型の選挙戦を徹底した。地方議員や国会議員らと1日10カ所以上でつじ立ちを実施。他党や市民団体などが陣営の組織力の弱さを補い、郡部の保守層も切り崩した。
 
 愛知氏は改選数が2から1に減り、地力が問われる戦いとなった。蔵相を務めた祖父の故揆一氏から引き継いだ後援会組織は高齢化に対応しきれず、新たな力を蓄えていなかった。
 党幹部が連日、愛知氏の応援に駆け付ける異例のてこ入れを展開し、組織の引き締めを図った。党地方議員のネットワークもフル回転し、政権安定の必要性を訴えたが、支持は広がらなかった。
「顔が見えない」と地元での活動量の少なさを嘆く声は、最後まで消えなかった。自民は16年参院選に続き党現職が敗北を喫し、参院選挙区の議席を失った。
 8月には仙台市議選、10月には県議選と大型地方選挙が相次ぐ。自民優位の状況が続くとみられるが、参院選の結果が各党の戦略にも影響を与えそうだ。(解説=報道部・松本果奈)
 
 
山形 改憲反対の8割が芳賀氏 参院選県区の出口調査分析、自民支持層は賛成72%
山形新聞 2019年07月22日
 第25回参院選県選挙区で、山形新聞社は21日、共同通信社と共に県内で出口調査(回答1408人)を実施した。無所属新人の芳賀道也氏(61)は立憲民主、共産、社民各党支持層の9割を固め、無党派層の約7割から支持を得た。自民現職の大沼瑞穂氏(40)は自民の8割、公明の6割の支持層を取り込んだが、再選はならなかった。争点の憲法改正では、反対の8割近くが芳賀氏を推した。
 安倍晋三首相が提唱した憲法改正論議は、参院選の主要な争点となった。県内有権者に賛否を聞いた結果、46.8%が反対と答え、賛成を6.7ポイント上回った。安倍政権下での改憲に反対の声が大きく、初当選を果たした芳賀氏が反対の8割近くを集めた。
 改憲に対し賛成は40.1%、無回答は13.1%。
 芳賀氏を推薦した立民、国民、共産、社民の各支持層は80~90%台が反対の意思を示した。維新の8割、無党派層の67.3%も反対した。自民支持層は賛成72.1%に対し反対18.6%と憲法堅持の考えが一定限ある。大沼氏を推薦した公明は賛成41.8%、反対32.7%とその傾向が強い。
 性別では、男性の賛成46%、反対45.1%に対し、女性は賛成34.3%、反対48.5%。年代別でみると、20~30代で賛成が過半数となり、50~60代は反対が55%に達した。
 
芳賀氏、近い年代支持―大沼氏は10~40代で過半数
 芳賀氏は自身の年齢(61歳)に近い世代で支持を広げた。年代別でみると、50代、60代でともに57.7%を獲得し、大沼氏に約15~17ポイントの大差を付けた。20代で44.4%と善戦した。
 大沼氏は30代の約6割の支持を受けるなど10~40代で過半数を占め、70歳以上でも芳賀氏を2.1ポイント上回った。諸派新人の小野沢健至氏(49)は30~40代で約4%の支持を得た。
 男女別では、芳賀氏が女性の50.6%の支持を獲得し、男性も大沼氏に0.7ポイント差と迫る48.5%。大沼氏は女性票で2.8ポイント差を付けられた。小野沢氏は男性2%台、女性1%台。
 
芳賀氏、無党派層からも
 芳賀氏は、推薦を受けた各党支持層を手堅くまとめた。立民の94.9%をはじめ共産の94%、社民の91.2%、国民の86.5%を獲得。無党派層の69.7%も集め、野党連携の枠組みが奏功した。公明支持層の36.4%も取り付けた。
 大沼氏は自民の83.2%、公明の61.8%を得票したが、初当選した6年前の参院選と比べてそれぞれ1.9ポイント、17.7ポイント減少。無党派層も前回の32%に対し今回は27.5%と、支持を伸ばせなかった。
 小野沢氏は維新の13%から票を集めた。
 
<参院選岩手>横沢さん元復興相下す 平野さん「転向」が響く
河北新報 2019年7月22日
 岩手選挙区は、無名の新人が初代復興相を下す逆転劇を演じた。野党統一候補で無所属新人の横沢高徳さん(47)が、4選を目指した自民党現職の平野達男さん(65)に勝利した。
 「これが岩手の力だ」。盛岡市大通の事務所は喜びが爆発。「弱い人の声なき声を国政に届ける」。真っ黒に日焼けした横沢さんが支持者と抱き合った。
 制約の多い車いすで、1日最多で32カ所の街頭演説をこなした。聴衆が一人もいない田んぼの真ん中でもマイクを握り続ける「川上戦術」は小沢一郎衆院議員(岩手3区)仕込み。達増拓也知事や野党4党の幹部が連日、脇を固めた。
首相の内政は狂ってる」。最終盤の19日、小沢氏と共に平野さんの地元北上市に乗り込んでの街頭演説には、約500人の聴衆が集まった。「狙い通り。これで追い抜いた」。陣営が勝利を確信した瞬間だった。
 
 敗れた平野さんは、盛岡市内のホテルで頭を下げ「期待に応えられなかった」。知名度で勝りながら、旧民主党からの「転向」が最後まで尾を引く苦しい戦いを強いられた。
 選挙戦終盤、160席を用意した集会も半数は空席だった。「どうしても違和感を払拭(ふっしょく)できない」と党員。最終日に練り歩いた盛岡市の繁華街では、握手を拒まれる光景も見られた。
 閣僚や党幹部が岩手入りしててこ入れしても歯車は空回り。1995年から9回連続の選挙区敗北に県連幹部は「必ず勝てる候補と思ったが…」とうめいた。
 
 
寺田静氏が当選 参院選秋田選挙区
秋田魁新報 2019年7月21日
 3人が立候補した参院選秋田選挙区(改選数1)は、野党統一候補で無所属新人の寺田静氏(44)が24万2286票を獲得し、自民党現職の中泉松司氏(40)=公明党推薦=に2万1067票差をつけて初当選を果たした。立憲民主、共産など4党の支援を受けながらも「政党色」を薄め、生活者目線を強調する戦術を展開。組織力が強みの中泉氏との激戦を制した。
 秋田選出の女性参院議員は寺田氏が初めて。国会議員としては、戦後初の1946年衆院選でトップ当選した故和崎ハル氏、2009年衆院選で当選した民主党(当時)の京野公子氏に続き3人目。
 政府が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を秋田市の陸上自衛隊新屋演習場に配備する計画が争点となり、寺田氏は反対を明確に主張。消費増税反対、子育て支援拡充などを訴えて無党派層に浸透し、支持を広げた
 
 これに対し、中泉氏は連立与党の公明党や、数多くの企業・団体の支援を受け組織戦を展開。きめ細かな農政や地方創生などを訴えた一方、地上イージス新屋配備への賛否は明確にしなかった。安倍晋三首相や菅義偉官房長官ら政府要職や知名度の高い弁士が本県入りし、てこ入れを図ったが及ばなかった。
 寺田氏は、15市町村で中泉氏の得票を上回った。投票率は前回(60・87%)を4・58ポイント下回る56・29%。補欠選挙を除き、過去最低だった13年参院選の56・19%に次いで低かった。
 政治団体「NHKから国民を守る党」新人の石岡隆治氏(45)は、支持が限定的だった。
 
 
野党共闘の力で安倍政治に痛打 新潟 忖度発言への怒り強く 打越氏 誰一人取り残さない
しんぶん赤旗 2019年7月23日
 全国有数の大激戦となった新潟選挙区は、野党統一の打越さく良(ら)氏(51)=新、無所属=が52万1717票を獲得し、自民現職の塚田一郎氏に4万2千票の差をつけて初当選を果たしました。
 打越氏は、この勝利は、新潟県民が、中央を忖度(そんたく)する政治ではなく、誰一人取り残さない政治を選択した結果だと強調。「年金や消費税増税への不安、原発のリスクに苦しみ続けたくないという、草の根の県民の声の勝利だ。しっかりと受けとめて、職責を果たしていきたい」と決意を述べました。
 
 打越氏が対決した塚田氏は4月1日、本州と九州を結ぶ「下関北九州道路計画」をめぐって、「下関は安倍総理の地元。北九州は麻生副総理の地元。私はすぐ忖度します」などと発言。4日後に国交副大臣を辞任しました。
 県民の「忖度発言」への怒りは強く、塚田氏は頭を丸めて「おわび」を繰り返し、「地元生まれ」を強調して県民の怒りの矛先をそらそうと躍起になりました。
 
 打越陣営は、この発言を「安倍政権のおごりの象徴」と捉え、「そんたく政治から、ともにさく政治へ」「県民の良識を示そう」と訴えて支持を広げました。
 自民党は選挙中、忖度された側の安倍氏や麻生氏が、たびたび新潟に入り、塚田氏へのテコ入れを図りましたが、石崎徹衆院議員による秘書への暴行疑惑なども響き、前回票を約8万票も減らす結果となりました。