安倍政権は練りに練っていた対韓輸出規制を発動して韓国の死命を制したかの錯覚に陥っているようですが、実態はそんなものではありません。日本政府の意図を知った韓国政府・与野党それに韓国企業は一致して、輸入素材・部品の国産化あるいは輸入先の多角化にカジを切りました。
韓国はかつてフッ化水素製造工場で大災害を引き起こしたため、その後は日本や中国からの輸入に転換しましたが、それは昔のことであって、いまやサムスン電子、ＳＫハイニックスなどの半導体・液晶の大手は積年の懸案であった素材・部品の国産化計画の前倒しに積極的になっているということです。
日本の輸出規制は政府の意図に反して早々に効果を失うだけでなく、逆に昨年は273億ドル（約2兆9500億円）あった対韓黒字を大幅に失うことになるなど、困るのは日本の方です。
日刊ゲンダイの記事「『輸出規制』で本当に困るのは韓国ではなく日本だ」を紹介します。
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アホでもわかる 日韓衝突の虚構
「輸出規制」で本当に困るのは韓国ではなく日本だ
日刊ゲンダイ 2019/07/21
韓国の文在寅大統領が１５日、「輸出規制は愚かな行為で、日本経済により大きな打撃が及ぶ」と警告した。「韓国経済に痛手のはずなのに、どうして？」と日本の各マスコミは驚くが、貿易収支が赤字に転落した自国の足元が全く見えていないようだ。年間２００億ドル以上も稼がせてくれる韓国にケンカを売れば、今年の貿易収支赤字額が絶望的に膨らむことは子供でも容易に計算できよう。
青瓦台関係筋によると、文大統領は当初、安倍首相の「輸出規制」は徴用工問題を口実に反韓世論をあおる参院選挙目当ての戦術であろうと受け流していた。だが、１２日の日韓実務者会合後、日本が安保問題と絡める危険性があるとの報告を受け、やむなく輸入素材・部品の国産化、輸入先多角化にカジを切った。排外的な国家主義に傾く「安倍１強」の下での日韓共栄関係は困難と判断したのである。
市場が文大統領の背中を押した面も強い。昨年暮れから急落していたＤＲＡＭやＮＡＮＤ型フラッシュなどの半導体国際現物価格が、「輸出規制」が報じられた直後から反転し、一部は１２日の１日だけで１２・７％も急騰した。サムスン電子、ＳＫハイニックスなど大手はほくそ笑み、積年の懸案であった素材・部品の国産化計画の前倒しに積極的になった。技術的問題は過去の話で、余剰資金を投じれば新生産ライン立ち上げは時間の問題だ。資金不足の中小企業は悲鳴を上げるが、緊急融資で手当てする。輸入先の多角化も同時進行し、すでに中国・山東省の化学メーカーが「フッ化水素酸」受注を発表。中国、ロシア企業が日本企業に取って代わろうと懸命な売り込みを始めている。
安倍首相らの“売ってやる”かのような「優遇措置撤回」は実のところウソの上塗りにすぎない。実態は韓国側の買い手市場なのである。
それでも日本製品を優先しているのは、日本のお家芸の「チャンイン（職人）の技」と輸送コストが安い隣国という立地条件を生かしてのこと。それで日韓企業共益の世界的なサプライチェーンをつくり上げてきた。韓国の対日貿易赤字は昨年も２７３億ドルだが、総合ではそれを凌駕する１１１９億ドルの黒字を叩き出した。
そんな“ドル箱”を安倍首相はみすみす捨てるというのだから、文大統領は呆れるしかない。日本の貿易収支は昨年１兆６０００億円もの赤字で、今年も赤字見通しだ。２００億ドル以上の対韓貿易黒字を失えば、関連企業はバタバタ倒産、世界最悪の累積財政赤字の日本は双子の赤字を抱えて奈落に沈むしかない。
日本のマスコミが、この肝心な部分を報じないのは罪というしかない。（作家・河信基）