東京新聞のシリーズ<参院選 公約点検>の第5弾は「(5)対米関係 貿易交渉「密約」で論争」です。
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<参院選 公約点検>(5)対米関係 貿易交渉「密約」で論争
東京新聞 2019年7月13日
参院選後、日米関係の最大の焦点の一つは貿易交渉の行方になる。安倍晋三首相は五月のトランプ大統領との会談で、交渉妥結を参院選後に先送りすることで合意した。野党は大幅な譲歩を「密約」したのではないかとみて、対米協調を最優先する首相の外交姿勢を批判する。
トランプ氏が貿易交渉のカードとして、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約は「不公平だ」と不満を示したことで、日米関係のあり方そのものも参院選の論点に浮上した。だが、日米関係を根本から見直す公約を掲げたのは、共産、社民にとどまった。
自民は外交・防衛を公約のトップに置き、強固な日米同盟を実績に挙げた。与党の公明も同盟強化で足並みをそろえた。首相は「日米同盟の絆はもはや揺るぎようがない」とトランプ氏との蜜月関係を誇る。貿易交渉の密約疑惑には「全く根拠がない」と主張。環太平洋連携協定(TPP)を上回る関税削減・撤廃には応じないとする方針を自民の公約に示した。
立憲民主の枝野幸男代表は、日米貿易交渉の結論を参院選後に持ち越したことについて「農業や畜産で大幅譲歩したとしか受け止められない」と非難する。
国民民主の玉木雄一郎代表も「密約があると疑わざるを得ない」と貿易交渉の透明性を確保する法律制定を公約に盛り込んだ。
立民、国民は米国との貿易交渉自体には反対していない。公約では日米同盟を外交の「基軸」に位置付けた。米国重視に問題はないが、首相はトランプ頼みに過ぎ、かえって国益を損なうという追及の仕方だ。安倍政権への対抗軸として、米国との適切な距離感を探る構えを示したといえる。
日本維新の会も、現在の日米同盟を維持する方向だ。公約では日米関係に直接は触れていないものの、「現実的な外交と安全保障政策」「自由主義経済圏の拡大」を掲げた。
これに対し、共産、社民は日米貿易交渉の中止、阻止を訴える。米国からTPP以上の市場開放をのまされ、国内の農畜産業が大きな打撃を受けるとの懸念からだ。安保条約に関しては共産は廃棄して友好条約を締結する立場を示した。社民も安保条約を対米追従の象徴と捉え、経済・文化面の協力を中心とする平和友好条約への転換を唱える。
政治団体「れいわ新選組」は公約で、対等な同盟関係の構築を主張する。貿易交渉には言及していない。 (後藤孝好)