2019年7月18日木曜日

参院選私の争点 インタビューを受けて考えたこと(田中淳哉弁護士)

「憲法カフェ@湯沢」でおなじみの田中淳哉弁護士が、朝日新聞新潟版のシリーズ「2019参院選 私の争点」に登場しました。
 弁護士の話は非常に論理的なのでその「厳密性」を保ったまま記事にまとめるのは難しいのですが、朝日新聞の若い記者は見事に「コンパクトな記事に仕上げた」と田中弁護士は評価されました。若いとはいえさすがはプロです。当然訓練も受けているのでしょう。
 
 記事は、朝日新聞記事を表示させて「地域ー新潟」を選び、画面が変わるとそこのサイト内記事検索で「田中淳哉」を入力して「検索」をクリックすると画面が変わり、その右端に記事の題名「(2019参院選 私の争点)弁護士・田中淳哉さん /新潟県」が表示されます。
 次にそこをダブルクリックすると画面が変わり、中段辺りに記事のタイトルが表示されるので、その下の囲いで無料会員登録をすると、全文を読むことが出来ます。
 
 田中弁護士は16日付で2019参院選 私の争点」と題するブログを出しました。朝日新聞に上記の記事が掲載されたことを紹介し、「インタビューを受けて考えたこと」などを述べています。それを丁寧に読むと自分の勘違いなどに気付かされます。
 
 以下にブログ記事を紹介します。ブログにはグラフと図表が3つ載っていますが、コピーしただけでは掲示できなかったので省略させていただきました。
 それを含めて全文をご覧になりたい方は下記をクリックすれば原文にジャンプします。
           ⇒ 2019参院選 私の争点 
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2019参院選 私の争点
田中淳哉弁護士ブログ 2019年7月16日
1 朝日新聞で
7月12日付朝日新聞朝刊(新潟県版)に掲載していただきました。若い記者さんが、新潟市から上越まで取材に来てくれて、コンパクトな記事に仕上げてくださいました。感謝!
 (『朝日新聞 掲載紙面の写真』 掲示できないため省略)
 
2 インタビューを受けて考えたこと
インタビューを受けて考えたことを以下にまとめます。
 
1 選挙の争点について
国民生活基礎調査(厚労省)では、約6割の方が生活が苦しいと回答しています。こうした状況のもとでは、憲法改正よりも、消費税や年金など日々の生活に直結する問題の方が関心が高いのは当然だと思います。
ただ、そうした問題も、憲法と関係がない訳ではありません。
 防衛費は、第2次安倍政権になってから7年連続で増え続けています。厳しい財政状況のもとでこのような支出をすれば、必然的に他の分野への支出が削られることとなります。結果的に、医療・福祉・教育などに十分お金が回っていません。
 
  (『防衛費の推移と向こう5年間の総額のグラフ』 掲示できないため省略)
  『予算編成時での削減(国費)合計1兆5900億円 内訳表』 掲示できないため省略)
  (『法律の改悪などによる削減 合計2兆2500億円 内訳表』 掲示できないため省略)
 
そのようなことになっているのは、
①今の政府が憲法25条を軽視しており、
②安保法制が出来たことによって憲法9条による統制力が弱まっており、
③国会による統制(財政民主主義:憲法93条等)も十分に働いていないからです。
 
つまりどれも憲法の問題です私たちの生活を守るうえでも、憲法を重視し憲法に基づいた政治を行うという当たり前の発想を持った議員を選ぶことが大切ではないかと思います
 
2 憲法9条改正問題について
 (1)大きく変わりつつある自衛隊の実態を知る
法律論は抽象的で、どうしても議論が上滑りしてしまいがちです。
現実の自衛隊がどのように変わってきているのか、具体的な実態を踏まえた議論が重要ではないかと思います。
安保法制の施行後、自衛隊は組織も装備も大きく変わっています。
空母、長距離巡航ミサイル、高速滑空弾など、専守防衛を逸脱するような「攻撃型兵器」の導入が次々に決められています
法律論を理解するうえでも、このような実態を広く知らせていくことが必要だと思います。
 
 (2)選挙結果次第では
今回の選挙で、自民党、公明党、維新など、憲法改正に積極的な政党の議員が、再び参議院の3分の2以上を占めることとなれば、憲法改正が強引にすすめられるでしょう。メディアは世論調査をふまえてその可能性もあると報じています。
また、ホルムズ海峡で民間船舶を守るために軍事的な有志連合を結成することが提唱されています。選挙の結果、与党議員が多数を占めれば、特措法をつくったり、「海上警備行動」とこじつけたりして、自衛隊を参加させようとする可能性もあるでしょう。
 
3 改憲か家計か
上智大学教授の中野晃一さんが、街頭スピーチで、今回の選挙の争点は、憲法改正を優先すべきか、家計から経済を立て直すことを優先すべきかという点にあるとと言っているのを見て、自分の中にあるもやもやがすっきりしました。まとめがわりに、リンクをはっておきます。
 
3 おまけ
 
1 「議論する党か議論すらしない党か」という設定について
安倍総理は、憲法改正について「議論する党か、議論すらしない党か、それを選ぶ選挙だ」と主張しています。
 
 (1)議論に応じてこなかったのは誰か
しかし、以下の出来事を思い起こせば、上記の主張がいかに身勝手な立論かがわかります。
 ・重要法案に関する議論を途中で打ち切って採決を強行することを何度も繰り返し、
 ・参考人として呼ばれた憲法学者が3人とも安保法制が違憲だと述べたため同法案の審議中は憲法審査会での議論をほとんど行わなかった
 
 (2)議論する姿勢といえるか
また、憲法改正について議論する場合、まず最初に憲法改正の必要性が示されるべきです。
安倍総理は、安保法制の審議中には「安全保障環境が厳しさを増している」というフレーズを繰り返し使っていましたが、同法は既に成立したため、憲法改正の理由としては使えません。
 
そこで安倍総理が持ち出してきたのが、「自衛官募集事務に自治体が協力しない」、「自衛官が息子からお父さんは憲法違反なの?と言われた」というものですが、どちらもおよそ憲法を改正する理由とはなり得ないものです。
しかも、自衛官募集事務については、およそ9割の自治体が何らかの形で協力していることが確認されており、上記主張が事実と異なることがはっきりしています。
さらに、「お父さん憲法違反なの?」と言われたという出来事についても、安倍総理の話が重要な部分で変遷しており、事実かどうか極めて疑わしい状況となっています。
 
事実に基づかずに議論しても実りはありません。自らはフェイクを語りながら、議論を求めるのは倒錯していると言わざるをいません。
 
2 若干の訂正と補足
憲法カフェをはじめる以前の憲法学習会や講演会について、「議論に広がりがありませんでした」「話題の中心は9条となり、護憲か改憲かの対立構図に陥ってしまいがち」と書かれている点については、若干の誤解があります。これは私の話が舌足らずだったせいで、申し訳なく思っています。
 
私がお伝えしたかったのは、「憲法カフェ」をはじめる前にも憲法学習会や講演会で講師をすることはありましたが、特に若い世代の参加者がほとんどおらず、「広がり」をつくるのが難しい状況だったということです。憲法に強い関心がなくても、日本で生活している以上は、間違いなく関係はあります。実はとても身近な存在である憲法について、もっと幅広い人に興味や関心を持ってもらいたいなと感じていました。
 
少しでも興味を持ってくれた人に参加してもらえるようにするにはどうしたらいいのか、それをとことんまで追求したのが「憲法カフェ」です。私の問題意識にぴったりあっていたので、見よう見まねで5年前にはじめました。