ついに来たるべきものが来ました。米国が中東沖を航行する船舶護衛のための有志連合を結成する意向を示し、日本政府に協力を打診してきました(日経新聞11日)。米国の東アジア政策担当国務次官補に就任したばかりのスティルウェル氏が11日に来日した主な用件もそれであると思われます。
とはいえ米国の目的は勿論タンカーの防衛などではなく、イランを打倒して石油の権益を獲得することです。さすがに国連が米国のイラン攻撃を認める可能性はなく、そうかといって単独でイランと戦争する経済的及び人的余裕もない米国としては有志連合を結成するしかありません。「船舶護衛のため」をその恰好の口実にしたに過ぎません。
先にタンカー攻撃事件が起きた時に、米国はすぐにイランの仕業だとして怪しい写真を呈示しましたが、イギリスが真っ先に同意した以外はどこからの賛同もありませんでした。その際に安倍政権が珍しく慎重な態度を示したのは先ずは上出来でした。
しかし、内閣法制局長官の更迭に始まって、邪道を尽くして集団的自衛権の行使を含む憲法違反の戦争法(新安保法)を成立させた安倍政権には、もはや憲法9条を理由にして有志連合への参加を断ることは出来ません。
このままずるずると有志連合に引き込まれれば、挙句は対イラン攻撃国に加わることになります。史上空前の戦争国家・米国の驥尾に付すことで、イランや中東国とのこれまでの友誼をなくしてしまっていいのでしょうか。そうなれば中東全体を敵に回すことなり、中東の敵対国という汚名は半永久的に晴らせないでしょう。報復テロが日本国内で起きない保証はなく、多数の犠牲が生じる惧れがあります。
もしもこういう事態を想定しないで戦争法を作ったのであれば、到底政治を行う資格はありません。そもそも「集団的自衛権の行使を容認することで米国との軍事同盟が強固になれば日本の安全性がより高まる」とかと愚かなことを高言したのは一体誰だったのか。
「戦争法の廃止」を統一政策に掲げている5野党・会派は、直ちにこの問題を選挙運動の中で訴えるべきです。
天木直人氏が「選挙どころではなくなったイラン沖有志連合結成の動き」と題したブログを出しました。天木氏はなぜか安倍首相は米国に要請されても自衛隊を派遣しないだろうと見ています。何らかの確信があってそう見ているのでしょう。
安倍首相としてはこれまでの言い分と矛盾することなど当たり前のことなので、是非ともここでも「腰砕け」になって、悲劇に踏み込むことを避けて欲しいものです。
天木氏のブログと関連の記事を紹介します。
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選挙どころではなくなったイラン沖有志連合結成の動き
天木直人のブログ 2019-07-11
ついに来るべきものが来たという事だ。
米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が9日に発表したホルムズ海峡護衛の有志連合結成の方針だ。
日本政府は米国の出方を見極めて慎重に対応すると平静を装っている。
しかし、これは大嘘だ。米国からは自衛隊派遣を出せと命じられているはずだ。そして、平静を装っているどころか、腰を抜かさんばかりに安倍政権は動揺しているはずだ。
考えてみればすべてはトランプの筋書き通りに動いている。
安倍首相に仲介を命じたのも、その最中にタンカー攻撃を仕掛けたのも、そして自国のタンカーは自国で守れと命じたのも、そして、なんといっても、日米安保はただ乗りだ、日米安保は廃棄するぞと脅かしたのも、すべて有志連合結成につながっているのだ。
トランプの米国は自衛隊をペルシャ湾に派遣させたいのである。安倍首相はいよいよ踏み絵を踏まされることになる。
しかも踏み絵は、米国を取るかイランを取るかの踏み絵だけではない。
何のために安保法を強行採決したのか、そのことに対する踏み絵が突きつけられることになる。もし、安倍首相が集団的自衛権発動を本気で行使するつもりで安保法をつくったのなら、米国の要請に応じて喜んで自衛隊を派遣するところだ。
しかし、私はそうはならないと思う。それどころかトランプに要請されても派遣しない。自衛隊を派遣すれば、今度こそイラン軍と戦闘になり、犠牲者がでるからだ。それだけは避けたい。
だから、いくら安保法が出来ても、そこで想定される緊急事態には至らないと言い続けるだろう。派遣してもせいぜい融資連合軍の後方支援にとどまるだろう。
つまりこれまでの対応を超えることはしない。
大騒ぎして強行採択に踏み切った安保法は一体なんだったのか、ということだ。
集団的自衛権容認に踏み切ったというアリバイづくりが重要だっただけだということだ。
どこまでも腰砕けの安倍首相だ。
それにしても、こんな重大な政治決断が迫られてる時に、与党も野党も、のんきに参院選をやっている場合か。
私はそう叫ぼうと思っている。今度の参院選の最大の争点は、年金や消費税ではない。
日米安保の是非だ。
そう叫んできた私にとって、さらなる追い風が吹いたということだ。しかし、それでも私の訴えは完全無視されるだろう。
安倍自民党はもとより、野党にとっても日米安保に触れることはタブーであるからだ。
私はこの一週間でそのことを肌で感じた。
日米安保反対! それを叫ぶことはこの国ではタブーになったのだ。
そして、かつてあれだけ騒いだ安保闘争の生き残りやベトナム反戦の生き残りたちは、私がいくら安保反対を呼び掛けて、ともに立ち上がれと叫んでも、まったく動かなくなった。
彼らの全員が死んでしまったとでもいうのか。動けなくなったとでもいうのか。
そうではないだろう。本気で安保反対を叫んでいたのではなかったという事である(了)
米、イラン沖で有志連合を結成へ 中東の船舶護衛
日経新聞 2019/7/10
【ワシントン=永沢毅】米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は9日、中東のイラン沖などを航行する民間船舶を護衛するため、同盟国の軍などと有志連合の結成をめざす方針を示した。これから数週間以内に参加国を募るとしている。トランプ大統領は日本など中東で石油を輸送する国々が自国の船を守るよう求めており、日本も対応を迫られそうだ。
ダンフォード氏が記者団に語った内容をロイター通信が報じた。米国が想定しているのは、警戒活動を指揮する米艦船の周辺で参加国がその米艦船や自国の民間船舶の護衛にあたる仕組みだという。同氏は「航行の自由を確保するため有志連合を結成できるか、いくつかの国と調整している」と語った。活動地域はホルムズ海峡やイエメン沖としている。
産油国に囲まれ、エネルギー供給の大動脈であるホルムズ海峡周辺では6月、緊迫するイラン情勢の余波で日本の会社が運航するタンカーなど2隻が攻撃される事案が発生した。これを受けてトランプ大統領は「各国が自国の船舶を守るべきだ」とツイートしていた。
今回の動きは、トランプ氏の意向を受けたものとなる。有志連合の結成には中東に石油を依存する関係国に負担を求める狙いがあるとみられ、トランプ政権がどのような要請を各国にするか注目される。
ポンペオ国務長官はホルムズ海峡周辺を通る船舶の安全確保で利益を得ている国として中国と韓国、インドネシアとともに日本を名指ししたことがある。原油などエネルギーの円滑な流通につなげるため「米国も役目を果たす用意はあるが、各国はシーレーン防衛に大きな国益がある」と指摘しており、米国が日本に何らかの協力を求める可能性は高い。
米国は6月中旬におきたタンカー攻撃にはイランが関与したと断定している。周辺の海域は米国とイランの対立で緊張が高まっており、偶発的な衝突がおきる可能性は否定できなくなっている。
米、日本に有志連合への協力打診 イラン沖で船舶護衛
日経新聞 2019/7/11
トランプ米政権が中東のイラン沖などを航行する民間船舶を護衛するために同盟国の軍などと有志連合の結成をめざし、日本政府に協力を打診したことが10日、分かった。米国は他の同盟国にも呼びかけており、今後、数週間以内に参加国を決める方針だ。日本政府は米側の具体的な要請を見極めながら、参加の是非や参加する場合の法的な枠組みを判断する。 (以下は有料記事のため非公開)
米の東アジア担当次官補が来日 イラン問題など協議へ
NHK NEWS WEB 2019年7月11日
アメリカの東アジア政策を担当する国務次官補に就任したスティルウェル氏が11日初めて来日し、緊張した状態が続くイランをめぐる問題などについて日本側と協議する考えを明らかにしました。
アメリカ国務省のスティルウェル次官補は11日午後、成田空港に到着しました。
アメリカの東アジア外交の実務を取りしきる国務次官補のポストはトランプ政権発足後、2年余り空席が続いていましたが、先月議会の承認を経てスティルウェル氏が正式に就任しました。
スティルウェル次官補は空港で記者団に対し「アジア太平洋地域の平和と繁栄のための同盟関係を築いていきたい。イランや北朝鮮の問題についても日本政府の高官らと話し合いたい」と述べ、緊張した状態が続くイランをめぐる問題などについて協議したい考えを示しました。
スティルウェル氏は退役空軍准将で、長年空軍で戦闘機パイロットを務めたあと、2008年から2010年までは青森県の三沢基地の司令官を務めました。
スティルウェル次官補は14日まで東京に滞在し、外務省や防衛省それにNSC=国家安全保障会議の当局者と会談する予定です。