2019年7月27日土曜日

山本太郎の消費税5%提案と玉木雄一郎の改憲裏切り

 これまで「放送禁止物体」扱いされていた れいわ新選組の山本太郎氏が25日朝のテレビ朝日「羽鳥モーニングショウ」「玉川総研」のコーナーに生出演しました。
 その中で山本氏は れいわ新選組は次の衆院選にも当然取り組むとして、骨子となる政策は、憲法擁護は言うまでもないこととして、消費税を「5%に引き下げる(凍結ではダメ)」ことが重要で、それに同意するなら共闘できると述べました。
 それには共産党と民社党は問題なく一致できる筈ですが、立憲民主と国民民主がどう出るのか、そして野党共闘がどうなるのか大いに注目されます。
 
 ところが国民民主党の玉木雄一郎代表は同日のインターネット番組「文化人放送局」で、ナント憲法改正論議に関し、私ね、生まれ変わりました。われわれとしても憲法改正議論を進めていくし、党としての考えをまとめて、最終的には安倍首相との党首会談を申し入れる」と強調しました。
 野党と市民連合による政策協定の第1項には、安倍改憲に反対する旨と9条改憲に反対して発議を阻止する旨が明記されていたのに、投票からわずか4日後に態度を豹変させたわけで裏切りというしかありませんが、これは安倍首相が選挙の翌日の会見で、「野党の中にも改憲派がいるので、そうした人たちと手を携えていきたい(要旨)」と発言したことと符合するものです。
 
「世に倦む日々」氏がこの問題を取り上げました。
 同氏は、これは山本発言によって次期衆院選の争点が消費税と社会保障に設定されてゆくことをおそれた安倍氏が、何が何でも秋の国会を改憲論議の場にしたいと、玉木氏に対して事前に合意されていた路線を即刻オープンにするように要求したためとする見方を示しました。いつもながらの鋭い読みです。
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山本太郎の消費税5%提案と玉木雄一郎の改憲裏切り - 始まった前哨戦 
世に倦む日々 2019-07-26
昨日(25日)、テレ朝のモーニングショーに山本太郎が生出演、短い時間だったが玉川徹との会話の中で新党の政策や抱負を述べる機会があった。昨日はずっとその話題がネットの関心を埋め、映像の断片が貼られて回覧されていた。本日(26日)の東京新聞が記事にしていて、「消費税5%なら共闘」と見出しを書いている。この訴えがキーメッセージだった。山本太郎によると、消費税凍結ではだめで、5%に引き下げなら一致できる政策になるという。消費税と財源をめぐる正論の主張は、基本的に共産党と同じ中身だが、分かりやすく説明していて、視聴者が好感の持てる絵柄に仕上がっていた。この政策提起は、立憲民主党と共産党に向けて投げかけられたもので、次に控えた衆院選の争点として企図されたものであり、非常に興味深い。早くも衆院選の序盤戦がスタートした感がある。参院選が終わって一週間も経ってないのに、(柔道の)組み手争いが始まっている。共産党は政策論としては歓迎だろう。立憲民主に向かって要望し合意したい共闘政策を代弁してもらった格好だ。 
 
「政策論としては」という但し書きをつけたのは、野党共闘のヘゲモニーをれいわ新選組に握られる不安があるという意味で、これまで4年間「野党共闘」を主導してきた共産党としては、センターを奪われる危険性があり、痛し痒しの側面があるのは間違いない。だが、一般の視点から見れば、明らかに山本太郎がセンターに位置する図の方が安定感を与え、バランスのよい共闘態勢に映るのは確実だろう。勢いのある山本太郎をシンボルにして中心で輝かせた方が、多くの有権者から支持を集める上で得策だ。共産党にとっては、山本太郎をシンボルに担ぐ野党共闘が安倍打倒に繋がる最短の経路だと知りつつ、その道に進めば比例票をさらにれいわ新選組に奪われ、党勢がジリ貧に向かうというジレンマがある。参院選中のしばき隊の太郎新党への対応は何とも奇妙で、いつものように誹謗と罵倒のツイートを連打し、共産票が流れるのを防いでいるかと思えば、終盤、中野晃一から「撃ち方やめ」の号令が出ると、やおら猫撫で声で太郎新党にご機嫌取りを言い出す始末で、苦笑を誘う滑稽な混乱模様が演じられていた。
 
注目されるのは、立憲民主党がこの提案にどう応じるかということだ。例えば、党内では小西洋之のように山本太郎の訴えに強いシンパシーを表明している議員もいる。この率直な反応は野党議員ならば当然のもので、山本太郎の「山上の垂訓」こそが、安倍与党に対抗する政治ブロックを構成する上で基調となる言葉だろうと誰でも思う。誰でも思うはずなのだが、参院選での立憲民主党の態度はそうではなかった(新人候補の石垣のり子を除いて)。相変わらず7年前の古証文である三党合意にしがみつき、「社会保障政策に与野党対立は馴染まない」というマスコミの話を否定せず、「制度見直しは静かな議論の場で」という萩生田光一のいなしに頷いていた。社会保障こそ安倍政権に対する対立軸が必要で、国民は野党がそれを打ち出すのを待望しているにもかかわらず。結局、選挙のテレビ討論では年金も社会保障も本格的な論争にならず、国民にAかBかの選択を示せず、「争点」は無意味で無内容なものになった。最大の戦犯は、三党合意に固執し、マクロ経済スライド廃止に挙手しなかった立憲民主党だ。
 
何度も繰り返し言っているように、立憲民主党は三党合意を白紙にしなければならず、その立場から脱却しなければならない。枝野幸男ら幹部は、二言目には「民主党政権時代の反省」を言う。神妙な口調で「お詫びと出直し」を言う。だが、有権者国民はその「反省」を認めておらず、彼らが「総括」をしたと考えていない。なぜ、われわれは立憲民主党の「反省」と「総括」を認めないのか。それは、彼らが三党合意をリセットせず、税と社会保障の一体改革を否定しないからだ。自民党と野合して決めた消費税10%引き上げと社会保障切り捨てを正当化し、不可侵な政策としてキャリー携行し続けているからだ。マスコミと一緒になって、一体改革の神聖体制を守り続けているからだ。立憲民主党がそこから離れないから、社会保障の財源は消費税しかないというドグマが生き続け、消費税は上げ続けなければならないという絶対命題が崩れないのである。安保外交と同様に、社会保障もまた、自民と立憲民主の間で政策に差がないのだ。われわれが怒っているのは、できもしない公約を掲げたことではなく、できるはずの公約を反故にして裏切ったことである。
 
さて、本日(26日)、PCに電源を入れて立ち上げたら、玉木雄一郎が安倍晋三と改憲論議を始めたいと発言した件で議論沸騰になっていた。時事の記事によれば、ネット放送の番組で、「憲法改正に向けた国会での議論に応じるとともに、安倍晋三首相に党首会談を申し入れる考えを表明した」とあり、「私は生まれ変わった。われわれとしても憲法改正議論を進めていくし、首相にもぶつける」と強調したとある。投票からわずか4日後の態度豹変。玉木雄一郎は選挙前の5月29日、野党と市民連合による政策協定なるものに署名調印している。その文書の第1項に、安倍改憲に反対する旨と9条改憲に反対して発議を阻止する旨が明記されている。安倍改憲への反対は「野党共闘」の一丁目一番地のスローガンだったはずだった。だからこそ、今度の参院選は改憲3分の2をめぐる争いとして定義され、賛否が問われたはずである。安倍改憲に反対するという立場は、当然ながら、安易に国会で安倍自民が進める改憲論議に乗らない姿勢を守ることを意味する。この玉木雄一郎の発言は、1人区で国民民主の候補に一票投じた有権者に対する卑劣な裏切りだ。
 
こんな具合に、旧民主党の政治家は平然と国民を裏切る。だが、国民民主に手を突っ込んで改憲勢力を院内で広げるという調略は、すでに選挙前から安倍晋三が予告していた局面であり、政治のリアルとしては驚くに当たらない出来事だと言える。想定内の動きだ。選挙で数を減らした国民民主は、群れとして全く展望がなく、自然摂理的に何らかの再編騒動を起こして活路を探さざるを得ない。一匹一匹が生き残りの悪あがきをせざるを得ない。衆院選が間近に迫っている現職たちは、小選挙区で自民公認にしてもらうという最後の生き残りのカードがあり、そこへ飛びついて安泰の身になりたい衝動に駆られるのだろう。参院選のテレビ報道での民民幹部の発言や、党首(代表)の活動の映像は、有権者にとって無駄で無意味な時間浪費の堆積でしかなかった。国民民主の政治家たちが、果たしてよく安倍晋三に奉仕して、改憲論議を前に進められるのか、実行力はよく分からない。少なくとも一般国民は改憲の話よりも社会保障の話を聞きたいのであり、財政検証のデータを確認した上で、年金がどうなるのかの論議を聞きたいのだ。
 
その意味では、昨日(25日)の玉木雄一郎の突然の裏切り表明は、予め布石されていた計画的行動ではあるが、安倍晋三の命令で日程を前倒しにした可能性がある。前倒しにして早めた理由は、25日に山本太郎がテレ朝の番組に出演し、消費税5%を野党共闘の統一政策にしようと打ち出したからだ。この提案が世論の支持を受け、流れを作り、大きな奔流になれば、衆院選の争点は税と社会保障に設定されてゆく。衆院選前の秋国会の議論は、税と社会保障のグランドポリシーにフォーカス焦点化される。それは、安倍晋三にとってきわめて不利な政局の進行であり、どうしても避けたい不具合な展開である。安倍晋三は、何が何でも秋国会を改憲論議の場にしたいのであり、衆院選を改憲を問う決戦に詰めて、そこで圧勝し、再来年の四選への環境を整えたいのだ。秋国会が、税と社会保障を問う場となるか、改憲論議の場となるか、今、その戦いが始まっている山本太郎が先手を打ってきたので、安倍晋三が切り返しの応戦に出て、玉木雄一郎に即動けと指示を出した。私はそう読み解く。25日の政治の裏をそう分析する。
 
戦略は何よりタイミングが重要だ。時機を逸した方が負ける。電光石火の組み手争い。衆院選の前哨戦はかく始まっている。策を提言するなら、山本太郎が野党共闘の中心に座り、シンボルとして立憲と共産を束ね率いる陣形がよい。それは宮城選挙区で勝った勝ちパターンであり、反安倍軍勢が最も士気が上がる戦いの構図である。