2019年7月20日土曜日

れいわ新選組・山本太郎氏「世の中変わるなら捨て石上等」

 かつて「維新の会」が登場したときにはメディアは一斉に「第3極」と持ち上げました。しかし革新勢力からは自民党の補完勢力と見做され事実現在はその位置に留まっています。
 それに対して山本太郎前参院議員が立ち上げた「れいわ新選組」についてはメディアは完全に無視を決め込み、世論調査で「れいわ」支持が表明されても「その他」に分類されると言われています。
 しかしその庶民・弱者目線に徹した政策に共鳴する国民は多数いて、応援カンパは17日の時点で3億7000万円に達したということです。何よりも山本太郎氏の街頭演説は各所で人、人、人であふれ、ネット上やSNSで熱い支持が表明されています。ハッシュタグ「#れいわ新選組」に加え、「#比例は山本太郎」も生まれたということです。
 
 普段は辛口のブロガーからも熱烈な支持が寄せられていて、「田中龍作ジャーナル」は6月28日を皮切りに、7月に入ってからは毎回が「れいわ新選組・山本太郎」に関する記事で埋められています。「反戦な家づくり」は16日に「投票するかどうかは、山本太郎の本気を感じてから決めてください #れいわ新選組」とする記事を出しました。「まるこ姫の独り言」や「晴天とら日和」にも、折に触れて「共感」し「高く評価」する言葉が記されています。
 18日の「半歩前へ」には、山本太郎17日に仙台で行った街頭演説に関して、
これは単なる選挙演説ではない!世直しの運動だ! 山本太郎 街頭演説の『21秒の動画』を観てほしい。~ スゴい事になっている。人、人、さらに人、人、人、人だ」としてURL:http://www.asyura2.com/19/senkyo263/msg/357.html が紹介されています。
(最初に大判の写真が3枚、次が記事、末尾に動画が掲載されています)
 
 6年前には東京選挙区で当選した山本氏は今回は比例区に回り、特定枠として1位に舩後靖彦氏(筋萎縮性側索硬化症患者)、2位に木村英子氏(重度身体障碍者)を当て、自分の順位は3位以下にしたこと(比例票を350万票程度取らないと自分は当選できない)も大いに好感を寄せられました。
 
 山本太郎氏は日刊ゲンダイのインタビューでも熱く語っています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
注目の人 直撃インタビュー  
れいわ新選組・山本太郎氏「世の中変わるなら捨て石上等」
日刊ゲンダイ 2019/07/18
「財政規律、財政再建と言う政治家はDV野郎です」
 21日投開票の参院選でもっとも注目されるのが、山本太郎代表が立ち上げた「れいわ新選組」の動向。テレビ中心に大手メディアが存在を黙殺する中、街頭では大勢が立ち止まり、演説に耳を傾け、寄付をする。その映像がネットで拡散され、著名人もがSNSで応援する。かつてない社会現象だ。
◇  ◇  ◇
 ――投開票日が迫っていますが、手応えは?
 反応はすごくいいです。公示日は(立候補)届け出がギリギリ、ポスターもれてない、第一声でのぼりもない、選挙カーもないというスロースタートでしたが、どこへ行っても感触はいい。
 
 ――12日の品川駅前での街頭演説「れいわ祭」はかなりの群衆で、どんどん膨れ上がっていきました。何が有権者を引きつけていると?
 自分で聞いてみると、退屈な演説だなと思うわけです。きのう(12日)も映像を確認して吐きそうになったんです。イケてなさに。ただ、分かりやすいというのはあるんじゃないですか。山本太郎でも理解できるんだから、みんな理解できる。それ以上でもそれ以下でもない。
 それと、本気の捨て身って、なかなかないじゃないですか。僕も野原さん(東京選挙区に出馬した野原善正候補)も、世の中が変わるんだったら、捨て石上等のつもりでやっている。そういうところが伝わっているのなら、面白がる人がいるかもしれないですね
 
 ――寝ている票の掘り起こしは狙い通りですか。
 今の時点で何とも言いようがないです。蓋を開けてみないと。無党派に対して他の政党は伸びしろが少ないと思うんですよ。そうした中で、伸びしろ「しか」ないのが僕たち。グラウンド・ゼロから始まっていますから。(有権者の)視界に選択肢として映ればもっと面白くなると思うんですが、ネットなどの一部のメディアでしか取り上げられない。強制的に垂れ流すテレビでは、僕らの存在は扱われない。それは想定済みで分かっちゃいるけれど、大変ですね
 
 ――確かに、テレビではほぼスルーされています。
 政党要件を満たさないので扱われないようなのですが、そうは言っても、国会議員1人が旗揚げしたグループが3億円の寄付を集めて、演説会場はどこよりも盛り上がっている。ひとつの現象として取り上げられてもいいのでは、と正直思いますね。もっとも、演説内容はスポンサーサイドにとって好ましくないでしょうから。テレビは商業主義ですからね。
 
 ――低投票率が懸念されています。
 ハッキリ言って、みんな政治どころじゃないんですよ。「立憲主義に基づいた政治を行う」っていくら訴えても、多くの人はそれどころじゃない。生活が本当に苦しくて、目の前のことで精いっぱいという声をたくさん聞いてきました。こうした声を私よりも聞いてる先輩はいっぱいいると思うんですよ。それなのに、消費増税とか、増税凍結どまりとか。「ナニ寝言言ってんだ」ってことは、与野党に言いたいですね。
(この国の経済状況は)20年続いたデフレから脱却して緩やかなインフレみたいな話になっていますが、いまの状況でプライマリーバランスの黒字化だとか、財政規律だ、財政再建だとか言っている政治家は与野党関係なくDV野郎ですよ。
 
■「政治に緊張感を生む存在を目指す」
 
 ――キツイですね。
 ここまで地盤沈下した中で財政規律だの、財政再建だのっていうのは、国民にとって暴力行為です。殺す気か、という話でしかない。消費増税を容認する人たちと、消費増税凍結を訴える人たちの未来デザインはほぼ一緒。消費税廃止を掲げる僕たちとは描く将来像が全く違う。
 凍結では、いずれ解凍されて増税に向かってしまう。消費税という大きな基幹税制を残し続けるということ。逆進性が強かろうが、中小企業の首が絞まろうが、消費税を大企業の補填に使い続けていくということ。違いは時期だけで、消費増税も増税凍結も大きく変わりません
 
この国に生きる人への愛とカネが足りない
 
 ――「れいわ祭」で「政権を取りに行く」と宣言していました。
 万年野党という座を手に入れるために政治団体を旗揚げしたのではないですから。この参院選ではできれば10人、そこまでいかなくても可能な限りを議会の中に送り込んでいただいて、市民の運動から初めてできた政党としたいんです。参院選で得た議席によって、政治に緊張感が生まれるような存在をめざす。仕事をする政党だと認識してもらえれば、次の衆院選で今回より議席を増やし、3年後の参院選とステップを踏んで、その先を狙っていけると思っています
 
 ――「政治に緊張感」と繰り返しています。
 国会は結局、与党のリズムで進んでいて、なりふり構わずやってくる。相手が常軌を逸しているのだから、こっちもトコトン抗わなきゃ野党は甘く見られる。例えば、委員会の強行採決で委員長を取り囲んでも、脇や後ろにいるだけで前はスカスカ。要は正面から(カメラに)撮ってもらえば抵抗している感じは出る。そういう演劇みたいなこと、やめた方がいいですよね。
 ガチンコで喧嘩をしにいく野党に変われば、与党も今のペースで物事を決められなくなる。有権者の政治に対する見方も変わり、もっと興味を持っていただけるようになる。他の野党が貴族みたいな戦い方をしていたら、僕たちと温度差が出て、有権者に「どうしてもっと必死にやらないんだ」とバレてしまうから困るわけです。僕たちの存在が緊張感を生む出発点になれればと思います
 
 ――野党は本気の捨て身を見せ切れていないから、有権者の支持が高まらない。
 みんなダメだと言う気はありません。与党の中にも心ある人がいるし、でもその中で公認を得られなくなるから黙っている人たちがいる。野党の中にも素晴らしい人たちはいて、とてもじゃないけどかなわないっていう人たちが山ほどいます。けれど、ここ一番抗うべきという場面で気合が足りないというか。権力闘争なんだから、権力を奪うということに対してのこだわりや執念が感じられないってことですね。
 
 ―――それでも国会は「数」が必要。他の野党の仲間もつくらなきゃいけないですよね。
 国会の中はものすごくシンプルで、カネがあるか、票があるか、自分が次も議員でいられるか、が一番重要なんです。選挙が始まる前に10億円集まっていたら、現職の国会議員が動いていた可能性があると思います。そうは言いながらも、野党との関係性も重要だとは思っています。この6年間、政治をぶっ壊してきたのは与党なのですから、野党は1議席でも減らさせてはダメだし、当然、手を組んでいく人々だと思っています。
 
 ――投票率が低くなりそうなのは、「選挙に行っても何も変わらない」という諦めもあるように思います。
 分野の違う話ですけど、高校野球ってなぜあんなに燃えるのかというと、緊張感ですよね。1回きりの勝負をガチンコで戦わなきゃ次に上がれない。そこに磨き抜かれたテクニックを競うプロ野球との違いがある。700人以上いる国会議員のほとんどがプロの政治家。そこに高校球児みたいな集団が紛れ込んで、粗削りだけれども「ならぬものはならん」と空気を読まないでやるべきことをやる。政治が面白くなって、期待感が膨らむと思うんですよね
 
 ――今の政治に足りないものは何でしょう?
 この国に生きる人々を思う気持ちですね。20年以上もデフレで、圧倒的に日本だけが成長していない。要は国からの投資がないってことです。揚げ句の果てに、貧乏になって、生産能力も低くなり、衰退国家の入り口に立っている。この20年は、この国に生きる人々への愛とカネが足りなかった歴史なんじゃないですか。衰退が加速しても、形としては国は残る。先に倒れるのは人々ですよ。
 行く末は究極の自己責任社会。生産性で人間の価値が測られるのですから、将来的に命の選別まで迫られる可能性が高いだろうと思っています。だからこそ、寝たきり界のトップランナーや重度障害者の方が国会に入ることによって、生産性で物事を語ったりとか、命の選別にブレーキをかける。それで特定枠を使ったんです。国会が真剣に取り組まなきゃいけないテーマを突き付けられるということです。
(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)
 
▽山本太郎(やまもと・たろう) 1974年兵庫県宝塚市生まれ。高校在学中に「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ系)の「ダンス甲子園」に出場し、芸能界入り。俳優として活躍。3・11後に反原発活動を始め、12年の衆院選(東京8区)に無所属で初出馬するも落選。13年の参院選(東京選挙区)で初当選。自由党共同代表などを経て、今年4月に政治団体「れいわ新選組」を旗揚げ。