藤井聡・京大教授によるシリーズ「消費税を凍結・減税すべし!」の「<16> 『良薬口に苦し』でなく『毒薬口に苦し』の消費税」を紹介します。
アベノミクスをはじめとする安倍政権の失政が数字の上でますます明確になりました。デフレ下の消費増税はまさに狂気の沙汰です。そこに追い込まれた安倍政権が批判されるのは自業自得ですが、国民は堪ったものではありません。
今回はこれまでの消費増税で国が如何に税収を減らし、国民に対する借金を増やしてきたかについて語られています。
政府がそれを強行しようとしている以上、来るべき参院選で絶対反対の意思を表明するしかありません。
( 註 文中の太字強調部分は原文に拠っています)
<16>「良薬口に苦し」でなく「毒薬口に苦し」の消費税
日刊ゲンダイ 2019/06/28
■消費増税で借金はかえって増える
デフレ下の消費増税になぞなんの利も無いのだが、多くの国民はなんとなく、消費増税で生活が苦しくなるけれど、国の借金を減らすには消費増税は仕方ないと思っている。政治家や学者や評論家が、日々、そんな論調をメディアで繰り返しているからだ。
しかし今日のようなデフレ経済が続くなかで、どれだけ消費増税を繰り返しても国の借金は減らずむしろ増えてしまうのだ。
事実、1997年の消費増税によって経済成長率が鈍化し、その翌年から税収はトータルで下落してしまった。2014年の消費増税でも同じく、経済成長率は鈍化。結局、増税しなかった方がトータルの税収が高いという事態になってしまっている。
デフレ下の消費増税になぞなんの利も無いのだが、多くの国民はなんとなく、消費増税で生活が苦しくなるけれど、国の借金を減らすには消費増税は仕方ないと思っている。政治家や学者や評論家が、日々、そんな論調をメディアで繰り返しているからだ。
しかし今日のようなデフレ経済が続くなかで、どれだけ消費増税を繰り返しても国の借金は減らずむしろ増えてしまうのだ。
事実、1997年の消費増税によって経済成長率が鈍化し、その翌年から税収はトータルで下落してしまった。2014年の消費増税でも同じく、経済成長率は鈍化。結局、増税しなかった方がトータルの税収が高いという事態になってしまっている。
そもそも消費税を2%上げたところで、増える税収は5~6兆円だ。しかし経済が毎年安定的に3%の成長をすれば、税収は2兆円程度拡大していく。だから増税などせずに、安定的な成長を保持していれば、ものの2、3年で消費税率を2%上げる程度の増収を実現できるのだ。
■97年増税で600兆円の税収が失われた
実際、筆者の試算によれば、もしも97年に消費増税などしていなければGDPは年率で2・2%程度ずつ緩やかに成長し、2018年度時点で税収は90兆円を超え、今よりも約35兆円も高かったと推計されている。そして1997年からの累計では、総計約600兆円も税収が増えていたと推計された。つまりわが国は1997年の消費増税のせいで、2018年時点の税収を約35兆円、増税以後の21年間で約600兆円以上もの税収を喪失してしまったのだ。
ちなみに年率2・2%の経済成長と言えば、非常に高いとお感じの方もおられるかもしれないが、これはむしろきわめて「控え目」な数字だ。この2・2%という成長率は、バブルが崩壊した後、増税をするまでの間に日本経済が緩やかに成長していたころの水準であり、バブル期や高度成長期とくらべれば圧倒的に低い。実際、2・2%と言えば、20年以上のGDP統計値が報告されている76のOECD(経済協力開発機構)加盟諸国中、上から数えて74カ国目、下から数えて3カ国目というほどの低さだ。つまり年率2・2%の成長率なぞ、諸外国に比べれば「異常に低い水準」なのだ。だから、上記の増税で累計600兆円もの税収を失ったという推計は極端な推計でもなんでもなく、いたってマイルドで控え目な推計なのだ。
実際、筆者の試算によれば、もしも97年に消費増税などしていなければGDPは年率で2・2%程度ずつ緩やかに成長し、2018年度時点で税収は90兆円を超え、今よりも約35兆円も高かったと推計されている。そして1997年からの累計では、総計約600兆円も税収が増えていたと推計された。つまりわが国は1997年の消費増税のせいで、2018年時点の税収を約35兆円、増税以後の21年間で約600兆円以上もの税収を喪失してしまったのだ。
ちなみに年率2・2%の経済成長と言えば、非常に高いとお感じの方もおられるかもしれないが、これはむしろきわめて「控え目」な数字だ。この2・2%という成長率は、バブルが崩壊した後、増税をするまでの間に日本経済が緩やかに成長していたころの水準であり、バブル期や高度成長期とくらべれば圧倒的に低い。実際、2・2%と言えば、20年以上のGDP統計値が報告されている76のOECD(経済協力開発機構)加盟諸国中、上から数えて74カ国目、下から数えて3カ国目というほどの低さだ。つまり年率2・2%の成長率なぞ、諸外国に比べれば「異常に低い水準」なのだ。だから、上記の増税で累計600兆円もの税収を失ったという推計は極端な推計でもなんでもなく、いたってマイルドで控え目な推計なのだ。
■「毒薬は口に苦し」の消費税
消費税の推進論者でも消費税増税にはさまざまなデメリットがあることを認めてはいる。増税で景気が冷え込んだり、格差が拡大したりする効果があることを、彼らはかならずしも否定してはいない。しかしそういうデメリットがあってもなお、「借金の返済は日本にとってきわめて重要なのだ」と考え、増税を主張するというのが彼らの基本姿勢だ。
つまり彼らは、消費増税はさまざまなデメリットもあるが「借金を減らす」という唯一のメリットのために推進すべしだと主張しているのであり、消費増税を「良薬は口に苦し」のようなものととらえ、それを「飲む」ことを勧めているわけだ。
消費税の推進論者でも消費税増税にはさまざまなデメリットがあることを認めてはいる。増税で景気が冷え込んだり、格差が拡大したりする効果があることを、彼らはかならずしも否定してはいない。しかしそういうデメリットがあってもなお、「借金の返済は日本にとってきわめて重要なのだ」と考え、増税を主張するというのが彼らの基本姿勢だ。
つまり彼らは、消費増税はさまざまなデメリットもあるが「借金を減らす」という唯一のメリットのために推進すべしだと主張しているのであり、消費増税を「良薬は口に苦し」のようなものととらえ、それを「飲む」ことを勧めているわけだ。
しかし以上の議論は、その唯一のメリットすら実は存在していないということを示している。つまり消費税は(少なくとも今日のようなデフレ下では)、「苦い良薬」ではなく単なる「苦い毒薬」にすぎないのである。
われわれは今、そんな「毒薬」を飲むか否かをめぐる国政選挙に直面している。国民各位には、それが毒薬なのか否かを見きわめ、有権者として適切かつ理性的な判断を下していただきたいと願うほか無い。
藤井聡 京都大学大学院工学部研究科教授
1968年、奈良県生まれ。。ニューディール政策等についての安倍晋三政権内閣官房参与に2012年着任、10%消費税増税の深刻な問題を指摘しつつ2018年12月28日に辞職。著書に『経済レジリエンス宣言』(編著・日本評論社)『国民所得を80万円増やす経済政策──アベノミクスに対する5つの提案 』『「10%消費税」が日本経済を破壊する──今こそ真の「税と社会保障の一体改革」を』(いずれも晶文社)など多数。