2019年7月29日月曜日

消費税を廃止すればニッポンが復活する (日刊ゲンダイ)

 28日の記事「決して安くない日本の税率…諸外国はもっと高いを検証」は、日刊ゲンダイのシリーズ「消費税廃止でニッポン復活」の第5弾に当たるものです。
 日刊ゲンダイは23日から連日記事を掲載していますので、遅まきながら第4弾までの記事を一括して紹介します。
 因みにその内容は「消費税3%のままならGDPは852兆円」、「消費税ゼロなら6年間で年収44万円アップ」、「マレーシアは消費税ゼロにして大成功」、「消費税が非正規労働者制度を促進した」というもので 改めて消費税の害悪(=国の経済を減衰させる元凶)が分かります
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消費税廃止でニッポン復活  
諸悪の根源は97年 消費税3%のままならGDPは852兆円だった
日刊ゲンダイ 2019/07/23
 れいわ新選組は比例で「2」議席を獲得、彼らが掲げた消費税廃止の議論は今後も検証が進みそうだ。そもそも、“失われた20年”と呼ばれる日本経済の沈没は、1997年に消費税を5%に引き上げたところから始まっている。
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 国民の半数以上が10月の消費税10%に反対しているが、「将来にツケを残さない」などの理由で、増税やむなしの流れになっている。財務省のプロパガンダである「国の借金1000兆円」も効果的にきいている。
 だが、れいわを代表するように、消費税の廃止、もしくは引き下げを主張している人たちの発想は、全く違う。
 消費税10%論者は「今あるお金でのやりくり」でしかモノが考えられないが、彼らは新田を開墾して増収を狙うという考え方だ。損して得とれで、未来志向の考え方と言ってもいい。
 
 京都大学大学院の藤井聡教授(公共政策)が月刊誌「世界」に興味深い記事を寄稿している。
 増税肯定論の多くは、2%くらいの増税なら大した問題にならないだろうと楽観しているが、日本がデフレに陥ったのは97年4月に橋本内閣が消費税を3%から5%に引き上げたところから始まっている。藤井教授によると、「97年の増税によって消費は一気に冷え込み、そこから伸びなくなった」という。この97年の直前3カ年の日本のGDP平均成長率は2.2%。バブル崩壊後の後遺症にあえいではいたが、今よりよっぽどマシな状況だったことが分かる。仮にその2.2%成長が続いていれば、18年時点の日本のGDPは852兆円に達していたという。今回の自民党の選挙公約「600兆円の実現を目指す」が恥ずかしくなる金額だ。
 
 2.2%成長自体が楽観的すぎると反論する人に説明すると、95年から20年間のOECD(経済協力開発機構)の平均成長率は約4.6%。2.2%はむしろ控えめな前提と言っていい。実際、97年からの20年で米国の名目GDPは97年比で218%、英国は205%に伸びている。日本は88%に下がっているが、もし、ごく平均的に成長し、GDPが852兆円になっていたなら、150%ほどになっていた計算だ。
 そして、GDPが成長していれば、2018年度の税収は90兆円を超え、今より35兆円も多くなっていた。藤井教授の推計では97年からの累計では総計約600兆円も税収が増えていたという。同教授は「日本の財政を破壊したのは、他ならぬ消費税増税だった」と結論付けている。何も難しいことではない。今からでも消費税を引き下げて消費の拡大を狙った方が賢明だ。
 
法人税で財源は確保できる
 経済アナリストの菊池英博氏(日本金融財政研究所所長)が補足する。
「消費税導入の89年から14年までの消費税収の累計は282兆円でしたが、この間の法人税の減収は、その90%に当たる255兆円もあり、ほぼ相殺されています。『受取配当金の益金不算入』『租税特別措置による政策減税』などの法人税減税の恩恵であり、法人税をまともな税制に戻すだけで消費減税の財源は確保できます。17年の企業の内部留保は446兆円。過去5年で146兆円も増えているのです」
 OECDは19年の日本の実質GDP成長率を1.0%に予想していたが、消費増税による悪影響から0.2ポイント下げて0.8%(世界平均は3.5%)にした。増税ならまた景気が悪化する。 
 
消費税廃止でニッポン復活  
山本太郎らが試算 消費税ゼロで「賃金44万円アップ」の根拠
日刊ゲンダイ 2019/07/24
 消費税を引き下げるとGDPを852兆円まで押し上げる。23日付の紙面でこう言ったが、減税の効果はコレだけじゃない。実は我々庶民の給料がアップし懐が潤う可能性が出てくるという。いったいどういうことか?
 日曜日に投票があった参院選で、「れいわ新選組」の山本太郎代表が選挙前に消費税に関して面白いことを言っていた。「消費税をゼロにすると6年目には1人当たりの賃金は約44万円アップする――」と。
 改めて、れいわの公約集を見ると、確かに政策にうたっている。自分が政権を取ったら「消費税は廃止する」とし、「消費税を8%から0%にしたらどうなる?」と自問自答。その結果、消費税8%を廃止(2019年)の5年後(2024年)には1人当たり賃金は、「年収410.2万円から454.1万円へ約44万円も増加」すると推計しているのだ。
 この数値は山本事務所が参議院調査情報担当室に依頼し、試算してもらった結果。院のお墨付きをもらった数値となれば信憑性も高い。サラリーマンだって願ったりかなったりだ。
 その論拠は単純に言えば、消費税をゼロにする→物価が5%以上下がって消費が増える→賃金は上昇し景気が回復する……というもの。たしかに、減税が実行されたら、消費者の購買意欲が湧くし、モノが売れれば経済は回る
 となれば、サラリーマンの給料アップの期待が膨らむ。「2000万円足りない」老後に備え貯金だってできるはずだ。
 
■専門家「減税は悪いアイデアではない」
 今年3月の参院予算委員会で、山本氏はこの数字を出して安倍首相を相手に質問。「まさに、これこそがデフレからの脱却、この道しかないという施策のひとつだと思う」と迫った。
 だが、安倍自民党には「消費税廃止」の5文字はない。庶民は弁が立つ与党政治家に「将来にツケを残さないため」とか言われると、ついつい消費税10%も仕方ないか~と思ってしまうのが現実だ。
 対して、山本氏の政策は全く逆の発想だ。いきなり、0%は極端だが、5%や3%への引き下げは“ひと筋の光明”のような気がしてくる。
 久留米大商学部教授の塚崎公義氏がこう言う。
「減税することは基本的に悪いアイデアではありません。減税すれば消費意欲が上がりモノが売れるでしょう。でも、いっぺんに8%から0%は刺激が強い。みんなが消費に走ってモノが売れると、たちまち人手不足になる。景気が過熱しインフレになる。財政赤字が膨らみ、日銀は金融引き締めをやるでしょう。これが1、2年の間に起こる……。日銀はわざと景気を悪くするから、結果、景気はそれほど良くならない。すべてはアメリカの景気次第だと思うけど、減税は1~2%からやるのがいい思います」
 
 極端に走らなければ、減税はアリなのだ。もっとも、「消費税を下げる」となると、財務省あたりが速攻で「財源はどうするんだッ」と大反対するに決まっている。
「財源は消費税減税とは全く別の話だけど、個人的には心配していません。ボクが山本さんだったら、まず消費税を2%下げて、その分、相続税と東京に住む金持ちたちの固定資産税を上げます。コレなら庶民の懐は潤い、金持ちから税金をガッポリ取れるし、東京の一極集中もなくなるはず。ただなぁ、政治家やお偉いサンたちは、全員金持ちときている。反対の大合唱が起きるでしょうね」(塚崎教授)
 いま必要なのは、こうした発想の大転換ではないのか。 
 
消費税廃止でニッポン復活
マレーシアはゼロ達成 消費税を引き下げた国のその後は?
日刊ゲンダイ 2019/07/25
 消費税廃止をぶち上げた「れいわ新選組」は、参院選で228万票を獲得。代表の山本太郎は個人で99万票を集めるなど消費税廃止は有権者の関心が高い。それでも過半数を維持した安倍首相は予定通り増税するのだろうが、世界に視線を向けると、消費税の廃止や減税は必ずしも無謀なことではないのだ――。
 
 消費税廃止のモデルケースがマレーシアだ。マハティール首相は、昨年5月の選挙で史上初めての政権交代を果たす。その目玉公約が、日本の消費税にあたる物品・サービス税(GST)の廃止で、公約通り同年6月1日から税率を6%から0%にしている
 財源の穴埋めで、同年9月から売上税・サービス税(SST)を復活。GSTの税収はSSTの2・5倍もあり、税収不足は避けられず、財政赤字が拡大するリスクがあるだろう。
 それでもマハティール首相が強気に消費税廃止に踏み切ったのは、好調な経済を維持するため。マレーシア中央銀行は、今年の経済成長率予測を4・3~4・8%と発表。個人消費や民間投資が旺盛で、昨年マイナス成長だった農業と鉱業がプラス成長に
 好調な経済を受けて海外からの投資も右肩上がり。マレーシア投資開発庁によれば、昨年の製造業の外国投資認可額は対前年比約2・7倍の約1兆6000億円に急増している。強い追い風に乗ってマハティール首相はGDP6%成長を見込む。それが財政問題をカバーしつつ、消費税廃止に踏み切った要因だ。
 
■英国、カナダでは引き下げも
 消費税の税率を下げたケースなら、先進国にもある。たとえば、英国はリーマン・ショック直後の2008年12月、付加価値税率を17・5%から15%に引き下げている。急ブレーキがかかった景気の立て直しが狙いで、景気回復を達成すると、10年1月に17・5%に戻している(現在は20%)。
 カナダもしかりだ。付加価値税の税率は7%でスタートしたが、財政健全化を達成すると、08年には5%に減税している。カナダは、アルバータ州での石油採掘が本格化。潤沢なオイルマネーが、税率ダウンに大きく貢献したのは間違いない。消費税を廃止したマレーシアも、財源の穴埋めの有力手段として国営石油会社からのロイヤルティーに期待を寄せる。
 こうして見ると、消費減税はマユツバのテーマでないことが分かるだろう。
 では、日本では可能なのか。独協大経済学部教授の森永卓郎氏が言う。
「参院選の結果を見ると、次の総選挙から消費減税が大きなテーマになるでしょう。減税分の補填は赤字国債の発行でカバーします。金利はマイナスで、昨年の物価上昇率は0・8%。この状況なら、100兆円規模でもデフォルトのリスクは少ないですから」
 安倍首相は、消費税を引き上げる理由のひとつとして社会保障の充実を掲げるが、詭弁だろう。社会保障の財源は、6割が社会保険料だ。議論を税金にすり替えるのはおかしい。マレーシアの歴史的な英断は、決して奇跡ではないのだ。
 
消費税廃止でニッポン復活
消費税ゼロなら“非正規労働問題も解消する”というカラクリ
日刊ゲンダイ 2019/07/26
 消費税を引き上げると派遣社員が増える――。総務省「就業構造基本調査」によれば、1997年の非正規労働者は1139万人(全体の23.1%)だったが、これ以降から増え続け、2018年は2120万人(同37.9%)になっている。
 97年は消費税が3%から5%に上がった年で、これから非正規労働者の割合が増えていることが分かる。
 消費税は輸出大企業に恩恵をもたらしている。還付金制度もそのひとつで、湖東京至税理士(元静岡大学教授)の試算によれば、トヨタや日産、キヤノン、パナソニックなど製造業13社だけで約1兆円の還付金を受けているという。
 
■派遣社員なら仕入れ税額で税金控除
 消費税の納付税額には「仕入れ税額の控除」というものがあって、「原材料費等の購入」や「広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費」などを控除して計算され、税額が少なくなる。また、この控除対象には「外注費」という項目もあり、加工賃や人材派遣、ビル清掃のありとあらゆるところを派遣や請負に切り替えれば、その経費まで控除される。当たり前だが、正社員の給与は控除されず、だからこそ企業はせっせと正社員をリストラし、社員を非正規労働者に置き換えて“節税”してきたわけだ。
 要するに消費税そのものが、正規社員と非正規社員の格差、つまり、貧困格差を生み出した元凶のひとつと言えるのだ。
 この問題に関しては、青山学院大学教授(租税法)の三木義一氏も著書「日本の税金」の中で、〈消費税は派遣労働を税制面から促進してしまう〉と指摘している。再度、分かりやすく説明すると、企業と派遣業者には雇用関係はないから、企業が支払う金銭は「給与」に当たらないというわけだ。
 
 消費税のアップと呼応するかのように労働者派遣法も改正され、非正規労働者や派遣労働者が増えていった。消費税が8%にアップした14年の直後にも派遣法が改正され、専門業務の恒常的派遣が合法化された。当然、今年10月から税率が上がれば、企業はさらに「外注費」の割合を高めてくるだろう。
 経済評論家の荻原博子氏はこう言う。
「10月に10%に上がれば、ますます非正規労働者は増えるでしょう。一方、内需型の中小企業に限っては税制面の優遇は少ないですから、内部留保も増やせない。結局、人件費を抑えるために非正規労働者を増やすでしょう。この半年、毎月勤労統計調査の所定内給与額は下がり続けています。雇用格差や貧困は広がるばかりです」
 消費税のような間接税は、その逆進性から低所得者層ほど負担が重くなる。しかし、その低所得者をつくり出しているのが消費税だったとしたら、まさにブラックジョークでしかない。