2019年7月13日土曜日

対イラン開戦の口実を欲しがっている米英の好戦派

「対イラン」の件ではアメリカと一心同体のイギリスが、イランのタンカーを公海上で拿捕したのは明らかな違法行為で、イランが報復するのを狙ったのだと見られています。
 戦争をしないではいられない好戦国家アメリカは、いま対イラン戦争を始めるための口実を欲しがっているということです。
 2000年以降アメリカは対テロ戦争に特化したといわれ シリア空爆まではその路線で来ましたが、ロシアがシリア側について参戦すると空爆が出来なくなり、地上戦でもアメリカが支援した反政府勢力が劣勢になり、結局排除されました。
 そこで今度はかねてから目指していた中東の大国イランへの攻撃を始めようとしている訳です。
 
 アメリカの18年度の軍事費は約70兆円で、トランプ氏は20年度には85兆円にするよう国防長官に指示したとされています。軍需産業は大いに潤いますが、同時に莫大な在庫がたまるので、定期的に大規模な戦争をする必要があります。実に因果な犯罪国家というしかありません。
 日本はどんなことがあっても、そんな不正な戦争に加担すべきではありません。
 
 櫻井ジャーナルの記事「開戦の口実に使える出来事を欲しがっている米英の好戦派」を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
開戦の口実に使える出来事を欲しがっている米英の好戦派
櫻井ジャーナル 2019.07.12
 イランが運行するタンカー「グレイス 1」をイギリスの海兵隊がジブラルタル沖の公海上で拿捕した後、IRGC(イラン革命防衛隊)の元司令官が報復としてイギリスの艦船を拿捕するべきだと発言した。
 それを受けてイギリスのBPが運行する「ブリティッシュ・ヘリテイジ」はサウジアラビアの沿岸近くへ避難。アメリカ政府の高官はIRGCの艦船5隻が「ブリティッシュ・ヘリテイジ」に近づいたと話しているが、IRGCの司令官はそうした事実はないと否定している。
 イギリスによるイランのタンカー拿捕は海賊行為に等しく、報復されても仕方がない。アメリカやイギリスはそれを狙っていたのだろう。自分たちの行為は棚に上げてイランを批判、攻撃の口実にしようということだ。
 
 本ブログでは何度か指摘したが、アメリカ軍の幹部はイランへの軍事侵攻を嫌がっている。イラクを先制攻撃したときは大量破壊兵器、今回は核開発を口実にしようとしている。イラクの大量破壊兵器は嘘だった。今回は核兵器の開発に結びつけようとしているが、これも事実の裏付けがない。
 アメリカ軍が開戦に反対しているもうひとつの理由はイラクの時と同じで、作戦が無謀だということ。
 2003年にイラクを侵略する際、ドナルド・ラムズフェルド国防長官は10万人で十分だと主張していたが、エリック・シンセキ陸軍参謀総長(当時)は治安を保つためには80万人が必要だとしていた。結局、約31万人が投入されたのだが、足りなかった
 そのイラクの人口は約2600万人であるのに対し、イランは8100万人。3倍強だ。イラクで80万人が必要だったという想定が正しいとするならば、イランでは240万人以上が必要ということになる。そこでヨーロッパや日本のような属国に派兵を求めるつもりなのだろうが、それでも足りない。
 
 シリアでも言えることだが、「限定的な戦争」を望んでも、都合良く短期間で終えることは簡単でない。イランの場合、中東全域に戦乱が拡大する可能性も小さくはない。短期間で終結させるという前提で戦争を始めること自体、無謀だ。
 こうした無謀な戦争を誰が望んでいるのかということだが、国ではイスラエルやサウジアラビア。いずれもイギリスが作り上げた国だ。
 アメリカとイランとの関係が一気に緊張するのはドナルド・トランプ米首相が5月8日、JCPOA(包括的共同作業計画)からの一方的な離脱を宣言してから。
 このJCPOAは2015年7月に発表されて翌年の1月に発効。署名したのは国連の常任理事国(中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ)とドイツのP5+1、さらにEUとイランだ。
 このときのアメリカ大統領はバラク・オバマだが、その年にはシリアに対する軍事侵略の準備を整えつつあった。シリアに対する直接的な軍事介入に慎重な姿勢を見せていたチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長が排除され、好戦派に交代させているのだ。ヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任が拒否されている。
 ヘーゲルの後任長官に選ばれたアシュトン・カーターは2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張、ダンフォードの後任議長のジョセフ・ダンフォードはロシアをアメリカにとって最大の脅威だと主張する軍人だ。
 
 2014年にはダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)が顕在化されたが、12年の段階でそうなることを警告する報告がホワイトハウスへ提出されている。
 この報告をしたのはアメリカ軍の情報機関DIA。当時、オバマ政権はシリアの反政府軍への支援を進めていた。すでにリビアの戦争でアメリカ/NATOはアル・カイダ系武装集団を使っていることが判明、そこでシリアでは「穏健派」を助けているのだと主張していた。
 それに対し、DIAが2012年8月にホワイトハウスへ提出した報告書には、シリアで政府軍と戦っている武装勢力の主力はサラフ主義者やムスリム同胞団で、アル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)という名称も書かれていた。
 
 さらに、オバマ政権の武装勢力支援策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。その警告が2014年にダーイッシュという形で現実なったのだ。
 DIAが報告書を出した2012年8月当時、オバマ政権はシリアを軍事侵略する口実として化学兵器を考えていたことがわかっている。シリアに対する直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だとバラク・オバマ大統領が宣言したのだ。ジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃するときと同じ手口だ。オバマはチェンジしていない。
 その化学兵器を口実に使うという策略はロシアのアドバイスでシリア政府が化学兵器を廃棄したこともあり、思惑通りには進んでいない。そうした中、登場してきたのがダーイッシュ。その残虐性が演出され、アメリカ軍の介入を正当化しようとした可能性が高い。
 このダーイッシュを使った計画は2015年9月末にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入したことで破綻する。それから間もなくして、シリア侵略でアメリカの同盟国だったトルコが離脱、ロシアへ接近している。
 
 1992年にソ連が消滅、ロシアがアメリカの属国になったという前提で始まったアメリカの世界制覇プランはロシアの再独立で迷走している。ロシアを再属国化するのが先か、イランが先かでシオニストは割れた。しかもシオニストの戦略にアメリカ軍が異を唱えている。
 軍も割れているようだ。統合参謀本部ではイラン攻撃に否定的な意見が多いようだが、中央軍や特殊作戦軍は違う。6月17日と18日にヘンリー・キッシンジャーは国防総省を訪問、17日にはマイク・ポンペオがフロリダのマクディル空軍基地で央軍や特殊作戦軍の人間と会っている。
 支配層内部の反対を押し切って開戦に持って行くためには、それだけ衝撃的な出来事を演出する必要があるだろう