23日に行われた即位礼の中心儀式である「即位礼正殿の儀」は、諸外国における戴冠式、即位式に当たります。「即位礼正殿の儀」には180か国余りの代表およそ400人が招待されました。
そこで天皇陛下が述べられたお言葉は、平成2年(1990年)の前回の儀式で上皇さまが述べられたおことばを踏まえつつ、象徴としてのつとめを誓われた部分ではいくつかの新しい表現が加えられました。
平成2年には「常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たす」と述べられましたが、新天皇は「国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」と、「国民の幸せ」とともに「世界の平和」を願いつつ、「国民に寄り添いながら」という一節を加えられました。
何よりも、短いお言葉のなかで「平和」を3回、「憲法」を2回使われたことは、上皇両陛下の平和への思いと(平和)憲法尊重の思いを、新天皇もそもまま受け継がれたことを鮮明にしました。
この即位礼を外交上の重要な儀式であると考える各国からは、元首や王族またはそれに代わる人たちが参列しました。前回の儀式(平成2年)では米国からはクエール副大統領が参列したので、今回も副大統領クラスが出席すると思われたのですが、実際に参列したのは序列第14位に当たるイレーン・チャオ運輸長官でした。
人選は相手国の自由ではあるのですが、日米両国の関係を思えば 何とも非礼で非常識なことに思われます。特に安倍首相にすれば、あれだけ米国を大事にしトランプ大統領との親密ぶりをアピールしてきたのですから、この仕打ちをされたのでは立つ瀬がありません。
メディアがこのことを表立って報じないのは勿論首相の立場を慮ってのことです。
このことについて天木直人氏は、「誰が考えても、これは日本軽視」であり「安倍外交の大失態」だとして、「安倍首相にとってこれ以上面目を失う事はない」と厳しく指摘しました。
安倍首相は今こそ日米関係の現実を直視すべきです。
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メディアが書かない米国の即位礼軽視
天木直人のブログ 2019-10-22
他国の元首の即位や葬儀の式典に、国を代表して誰を派遣するかは重要な外交の一つである。
だからこそ、今度の即位礼の儀に各国はそれにふさわしい人物を派遣する事を決めた。
財政的に苦しい小国が駐日大使を参加させて済ませるのはやむを得ないが、ほとんどの国は本国政府から、あるいは皇族、あるいは三権の長、あるいは元首、もしくは元首に準じる人物を派遣している。
日本が仲間入りしているG7のメンバー国はもちろんそうだが、中国は王岐山国家副主席、そして史上最悪の関係にある韓国でさえ李洛淵首相が参列する。
ところが、日本が最も重要国と見なす米国だけが、チャオ運輸長官の派遣で済ましている。
当初はペンス副大統領が出席するという報道があったが、いつの間にかチャオ運輸長官に代った。
誰が考えても、これは日本軽視ではないのか。
しかもである。
安倍首相はトランプ大統領を何が何でも令和天皇の国賓第一号として歓待した。
その答礼としてペンス副大統領の参列は礼儀だろう。
そして安倍首相もそれを期待していたに違いない。
しかし、理由も明らかにされないまま、いつの間にかチャオ運輸長官に変更された。
米国の自動車をもっと買えと言うつもりなら悪い冗談だ。
ところが、この異例な変更にもかかわらず、メディアは一切その事に触れようとしない。
なぜか。それは安倍外交の大失態になるからだ。
ここまでトランプ大統領に迎合してきた安倍首相だ。
しかも令和の即位礼を誰よりも重視している安倍首相である。
その令和の即位礼をトランプ大統領は軽視したのだ。
安倍首相にとってこれ以上面目を失う事はない。
だからメディアは、安倍首相に忖度して一切書かないのだ。
はたしてチャオ運輸長官と安倍首相が会談する時、安倍首相はチャオ運輸長官に何と語りかけるのだろう。
メディアはその会談をどう報じるのだろう。
韓国の李洛淵首相との会談と並んで、私が最も注目するマラソン首脳会談である(了)