2019年10月24日木曜日

即位礼に天皇の「安倍首相への抵抗」を示す招待客

 22日、皇居・宮殿で行われた「即位礼正殿の儀」には、並みいる諸外国からの元首や王族たちとともに相良倫子さん(高校1年生)サーロー節子さんが招待されていました。
 
 相良倫子さんは、去年の沖縄全戦没者追悼式で自作の「平和の詩」を朗読(実際は6分余りの長い詩を完全に暗誦)ました。
 それは心に染み入る反戦の詩で、多くの人々に感動を与え、インターネットでは賛辞のツイートが溢れました。
 弁護士の澤藤統一郎氏もブログ「澤藤統一郎の憲法日記」で激賞しました。
 
 サーロー節子さんは、2017年にノーベル平和賞を受賞した国際NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の「顔」としてこれまで長年にわたって核兵器の恐ろしさを伝える活動をつづけてきました。広島県生まれ13歳のときに被爆。戦後、留学を経てカナダへ移住し平和活動を続けています。
 安倍首相は、ICANのノーベル平和賞受賞サーロー節子さんの授賞式スピーチをあからさまに無視しましたが、上皇后様が同年の自身の誕生日に際して公表された文書で、ICANのノーベル平和賞受賞を“印象に残る意義深いこと”として挙げられたことは感銘深いものでした。
 
 この反戦・反核の二人を政府が招待することは考えにくいので、皇室が招待されたものと考えられます。
 皇室の代が変わっても平和を志向する姿勢が引き継がれていることは嬉しいことです。
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即位礼に天皇の「安倍首相への抵抗」を示す招待客…
「平和の詩」朗読した沖縄の高校生とICANサーロー節子さんが
LITERA 2019.10.22
 本日、皇居・宮殿で「即位礼正殿の儀」がおこなわれ、5月に即位した徳仁天皇が三権の長らを前に高御座の台座で「おことば」を述べ、安倍首相は祝いのことばである「寿詞」を読み上げたあと、万歳三唱をおこなった。
 そもそも即位礼自体が、宗教色も強く、政教分離違反、憲法違反の儀式だが、アジア諸国の植民地支配という歴史を正当化しつづけている安倍首相が「天皇陛下、万歳!」と声を張り上げ、自衛隊の礼砲が発射されるさまは、まるで戦時下の再現のようなおぞましささえ漂っていた。
 
 また、天皇による「おことば」も、平成の即位の礼に比べると、後退した感は否めなかった。
「国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」
 明仁上皇は即位の際、「常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たす」と述べていたが、一方、徳仁天皇は「日本国憲法」をたんに「憲法」と省略した。5月におこなわれた「即位後朝見の儀」での「おことば」でも同様だったが、その際に指摘したように(過去記事参照)、これは官邸からの働きかけに屈し、安倍政権に配慮して必要最小限の表現にとどめたものと思われる。
 天皇が皇太子だった今年3月、安倍首相が「令和」を含む新元号候補である6案を事前に説明していたと報じられたが、安倍首相による天皇の取り込み工作は目に余るばかり。今後、どうなっていくのか気がかりだが、しかし今回の即位の礼には、救いというべき出来事もあった。というのも、本日の「即位礼正殿の儀」には、各国要人や各界の代表らとともに、あるひとりの高校生も招待されていたからだ。
 
 それは、2018年の沖縄全戦没者追悼式で「平和の詩」を朗読し、大きな反響を巻き起こした当時中学生の相良倫子さん(現在高校1年生)だ。
 相良さんの「平和の詩」では、沖縄の豊かな自然とそのなかで実感する生きることの素晴らしさを伝えたあと、その地で繰り広げられた壮絶な沖縄戦で命を奪われた人びとに心を寄せ、平和に対する決意をこう述べた。
 
〈みんな、生きていたのだ。私と何も変わらない、懸命に生きる命だったのだ。彼らの人生を、それぞれの未来を。疑うことなく、思い描いていたんだ。家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。仕事があった。生きがいがあった。日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。それなのに。壊されて、奪われた。生きた時代が違う。ただ、それだけで。無辜の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。私は手を強く握り、誓う。奪われた命に想いを馳せて、心から、誓う。
 私が生きている限り、こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。もう二度と過去を未来にしないこと。全ての人間が、国境を越え、人種を越え、宗教を越え、あらゆる利害を越えて、平和である世界を目指すこと。生きる事、命を大切にできることを、誰からも侵されない世界を創ること。平和を創造する努力を、厭わないことを。〉
 
 じつに6分半にわたる朗読だったが、相良さんは原稿に目を落とすこともなく、顔を上げて見事に暗唱。その情感に溢れた朗読は、すぐさま大きな話題になった。たとえば、ウーマンラッシュアワーの村本大輔がツイートに動画のリンクを貼って〈今日はどのニュース番組もこれをどんどん取り扱って欲しい。すごい〉と興奮。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文も〈とてもいい。僕はこういう詩にこそ「愛国」を感じる。郷土への愛と、未来に手渡すべきもの〉と称賛した。
 その相良さんが今回、「即位礼正殿の儀」に招待された──。この事実がもつ意味はとても大きい。
 
沖縄全戦没者追悼式で「平和の詩」を朗読した相良さんの招待は天皇サイドの希望か
 そもそも、相良さんの朗読に対しては、ネトウヨが「大人にやらされている」などとバッシングを展開しており、沖縄を蔑ろにしつづける安倍首相や官邸が、沖縄県民が希求する平和への願いを代弁した相良さんを招待するとは到底考えられない。
相良さんについては、天皇陛下サイドの希望と考えて間違いないでしょう。前回もそうですが、即位の礼の出席者は内々に天皇・皇后両陛下の希望も取り入れることになっていますから。その希望の背景にはもちろん、上皇・上皇后の意志を継承するという意味もあったと思います」(ベテラン皇室ジャーナリスト)
 
 周知のように、明仁上皇・美智子上皇后は一貫して沖縄に寄り添う姿勢を示してきた。今年2月におこなわれた在位30年記念式典では、ふたりが作詞・作曲を手掛け、本土へ復帰したばかりの沖縄を初訪問した際の思い出が詰まった琉歌「歌声の響」を、沖縄出身の三浦大知が歌い上げた。さらに、2013年4月28日、安倍首相の肝いりでおこなわれた「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」にあたっては、政府側の説明に対し「その当時、沖縄の主権はまだ回復されていません」と反論し、出席に難色を示していたという逸話も残っているほどだ。
 
 安倍政権が辺野古新基地建設の強行などで沖縄差別を強める一方で、2018年の誕生日に際した会見ではあらためて「沖縄に心を寄せていく」と訴えた明仁上皇。一方、天皇もまた沖縄とのつながりを大切にしてきたといわれる。たとえば、沖縄の小中学生50人が「豆記者」として本土に派遣される「豆記者制度」というものがあるのだが、上皇・上皇后は1963年からこの豆記者と懇談。じつは、この懇談に徳仁天皇も幼少時より同席して、上皇が天皇に即位したあとは皇太子として豆記者との懇談を引き継いだ(琉球新報2018年3月24日付)。
 こうしたことから考えると、今回、沖縄から平和のメッセージを力強く発信した相良さんが「即位礼正殿の儀」に招待されたのは、徳仁天皇が安倍政権に対して、「上皇の沖縄に寄り添う意志を引き継ぐ」ことをささやかなかたちで宣言したと言ってもいいかもしれない。
 実際、相良さんが「即位礼正殿の儀」に招待されたことを紹介した本日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、玉川徹氏が相良さんの「平和の詩」から〈今を一緒に、生きているのだ。だから、きっとわかるはずなんだ。戦争の無意味さを。本当の平和を。頭じゃなくて、その心で。戦力という愚かな力を持つことで、得られる平和など、本当は無いことを〉という部分を引用。「わざわざこの高校生を招待したことには意味がある」と言い、こうつづけた。
「陛下の思いと(詩が)違うものであれば呼ばれるはずがないのであって。(中略)陛下のいまの思いをこの詩が表しているって、受け取っていいんだと思います」
「それはもしかすると、つねづね僕思ってるんだけど、上皇陛下、天皇陛下の思いと、権力がいまやろうとしていることの乖離があるんじゃないかというふうなことすら、僕はここから垣間見えるんですね」
 安倍首相の目の前で披露された、「きっとわかるはずなんだ。戦争の無意味さを」「戦力という愚かな力を持つことで、得られる平和など、本当は無い」というメッセージ。それこそが天皇の思いであり、安倍政権の姿勢と乖離していると玉川氏は指摘したのである。
 
安倍首相が無視し、美智子上皇后が賞賛したICANのサーロー節子さんも
 しかも、今回の「即位礼正殿の儀」にはもう一人、安倍政権に抵抗するかのように招待された人物がいた。それは、サーロー節子さんだ。
 サーロー節子さんは、広島県生まれで13歳のときに被爆。戦後、留学を経て結婚、カナダへ移住し、平和活動に積極的に参加し、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の「顔」としてこれまで長年にわたって核兵器の恐ろしさを伝える活動をつづけてきた。そして、2017年には被爆者としてはじめてノーベル賞の授賞式で、世界に向けてスピーチをおこなった人物だ。
 しかし、ICANやサーロー節子さんが訴えてきた核兵器禁止条約に署名・批准しようとしない安倍首相は、ICANのノーベル平和賞受賞およびサーロー節子さんの授賞式スピーチをあからさまに無視。今年も吉野彰氏のノーベル化学賞受賞が発表されるやいなや電話をかけ「おめでとう。日本人として誇りに思う」と祝福し、ICANが受賞した年もカズオ・イシグロ氏の文学賞受賞にお祝いコメントを出していたが、ICANとサーロー節子さんには一切の祝福メッセージを出さなかったのだ。
 その上、昨年12月にサーロー節子さんは来日したが、その際も安倍首相との面会はかなわなかった。これについて、サーロー節子さんは「自分と違う意見を持つ人に会って語り続けるのが本当のリーダーシップではないか」と会見で述べている。
 
 他方、上皇后は2017年の自身の誕生日に際して公表された文書で、ICANのノーベル平和賞受賞を“印象に残る意義深いこと”として挙げ、「日本の被爆者の心が、決して戦いの連鎖を作る『報復』にではなく、常に将来の平和の希求へと向けられてきたことに、世界の目が注がれることを願っています」と綴っていた。
 そして、ICANの顔であり、安倍首相が面会さえ応じようとしないサーロー節子さんが、今回、「即位礼正殿の儀」に招待された──。これもまた政府が招待するとは思えず、天皇の意向だった可能性が高いのだ。
 沖縄と核廃絶。安倍首相が平和から逆行し、無視し、蔑ろにしつづけるふたつのテーマに対し、上皇・上皇后の思いを引き継ぐ意志を示した天皇。即位儀式によって天皇の権威づけが強化され、それを安倍政権が利用することは断じて容認できないが、今回、天皇が政権と対峙しても平和を願おうとする姿勢を見せたことは、一縷の希望といってもいいだろう。 (編集部)