2019年10月2日水曜日

02- 武田防災相が千葉災害に冷酷発言連発 官邸のデタラメさも浮き彫りに

 台風15号千葉県を中心に大規模な被害をもたらしてから3週間が経った1日、ようやく災害対策特別委員会の閉会中審査がおこなわれました。閉会中審査自体は9月17日の衆院災害対策特別委員会の理事懇談会で与野党が合意していたのですが、その後自民党は、災害に一区切りがついてからにしたいとして1日まで引き延ばしたのでした。それにしても何とも理解しがたい理由で、実際の理由は違うのではないかと言われています。
 それは内閣改造直後の9月13日に「週刊朝日」のネット版が、そして19日には「週刊文春」(文藝春秋)がそれぞれ武田防災担当相をめぐる元暴力団関係者や反社会的勢力との関係について報道をおこなったので、この追及を受けたくないために引き延ばした“スキャンダル追及からの逃亡”という見方です。
 
 そんな人物が大臣に就くこと自体がまず大問題なので追及されるのは当然なのですが、閉会中審査はそのことはひとまず措いて進められました。しかしそこで武田良太防災担当相の対応は信じがたいものでした。
 LITERAが報じました。
 
 メチャクチャだったのは彼だけでなく、西村明宏官房副長官も「どうして台風10号では関係閣僚会議が開かれ、今回は開かれなかったのか。その違いは何か」との追及に対して、全く的を得ない答弁しか出来ませんでした。そもそも官邸が初期対応を完全に誤っているので、まともな答弁を期待するのが無理でした。
 
 いずれにしても千葉県の大災害で、またしても安倍政権のデタラメさが浮き彫りになりました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
安倍内閣“反社大臣”武田防災相が千葉災害に冷酷発言連発!
「被害拡大は千葉が台風に慣れてないから」「災害に備える努力を」
LITERA 2019.10.01
 千葉県を中心に大規模な停電をはじめ甚大な被害をもたらした台風15号だが、本日1日、ようやく国会では災害対策特別委員会の閉会中審査がおこなわれた。
 災害発生からもうすぐ1カ月を迎えるというのに、あまりに遅すぎると言うべきだろう。実際、千葉県では台風による農林水産業での被害額は367億6200万円(9月26日時点)にものぼり、同県の東日本大震災での被害額346億100万円を超えた。支援策の打ち出し・検討は喫緊の課題なのだ。
 
 だが、そんな切羽詰まった状況だというのに、きょうの衆参災害対策特別委では、新大臣である武田良太防災担当相から信じがたい言葉が飛び出した。
 きょうの審議では、当然ながら政府の初動対応の遅れに批判が巻き起こったが、武田防災担当相は非常災害対策本部を設置しなかったことを「総合的な判断」などと述べ、災害対応も「ベストを尽くしてきた」「次に備える」などと答弁。停電による熱中症の死者やブルーシート張りによる転落死まで招き、停電をここまで長期化させておいて「ベストを尽くした」とはよく言えたものだが、驚かされたのは、武田防災担当相のこの一言だ。
 「今般、千葉県に起こりました災害につきましては、千葉県自体がですね、あれだけの台風、われわれ九州とは違いまして、非常に慣れていないという状況も作用したんだと思いますし」
 千葉県が台風に慣れていなかったから被害が拡大した……? 気象庁のデータによると、台風の上陸数が多い都道府県(1951~2019年第7号まで)では千葉県は熊本県と並んで全都道府県のなかで第8位にランクインしており、けっして「台風に非常に慣れていない」県などではない。
 
 だいたい、今回ここまで被害が拡大したのは、首都圏を台風が通過した前日の9月8日に気象庁が「記録的な暴風となるおそれがある」と発表していたにもかかわらず、暴風に備えた対策を政府が怠ったからだ。それを象徴するように、13日の記者会見では菅義偉官房長官は今回の災害を「豪雨災害」と呼んだ。災害発生から4日も経ってもなお、暴風被害・台風被害を「豪雨災害」などと言っていたのである。
 そして、言うに事欠いて、「千葉県が台風に慣れていないから被害が拡大した」と防災担当大臣が虚偽の事実に基づいて言い訳する──。まったくいい加減にしろという話だろう。
 いや、耳を疑ったのは、この武田防災担当相の答弁だけではない。
 前述したように、今回の台風15号によって千葉県内の農林水産業の被害額は367億6200万円にものぼっているが、そのうちビニールハウスなどの農業施設関連では238億7000万円もの被害が報告されている。ビニールハウス被害では園芸施設共済に加入していれば補助が受けられるものの共済非加入者も多いため、野党からは手厚い補助を求める意見が出たが、公明党の参院議員である河野義博・農水大臣政務官はこう答弁したのだ。
「災害対策の基本は農業者の自助、共助の努力を土台といたしまして、法制度により国が保険料などについて国庫補助することにより確立してまいりました農業共済制度にございます」
 「モラルハザードを防止し、農業者のみなさまが事前に災害に備える努力を促す観点からも、とくに災害が多発するなかでは、園芸施設共済に加入していただくことが重要と考えていることから、共済未加入者への補助率引き上げは現時点では考えてございません
 
 千葉県は主要な農産物産出額では全国4位(2017年度)の農業県であり、「首都圏の台所」とも呼ばれている。その千葉県の農家がかつてないほどの打撃を受けているというのに、「災害対策の基本は農業者の自助、共助の努力が土台」「農業者が事前に災害に備える努力を」などと農家に“自助努力”“自己責任”を説き、共済非加入者への補助率引き上げを拒否したのだ。
 
「台風10号で開いた関係閣僚会議をなぜ今回は開かないのか?」と追及された西村官房副長官は…
 悲鳴をあげる農家に対して血も涙もない答弁だが、驚愕の答弁はまだつづいた。千葉県では被害を受けた家屋のブルーシートの設置が遅れていると大きな問題になってきたが、なんと、昨日をもって自衛隊はその作業を終えてしまった、というのだ。
 これは無所属・小西洋之議員の質問に対する答弁で判明したのだが、昨日9月30日の時点で千葉県内のブルーシート未設置の家屋は1715軒、そのうち独居老人など自力での補修作業が困難な要支援者は32軒。一方、県内でブルーシート設置ができる自衛隊員の数は2000名いるという。そして、昨日は自衛隊員100名がブルーシート設置のために稼働したものの、「昨日の作業分をもって自衛隊が実施する箇所が終了したため、現時点では本日活動予定はございません」(菅原隆拓・防衛省統合幕僚監部総括官)と答弁したのだ。
 つまり、ブルーシート未設置家屋が1715軒もあるというのに、自衛隊の活動を終了させたというのである。
 
 これには小西議員が「自衛官にはまったく責任はないです。これは政府の責任です」と述べ、自衛隊の要請を求めたが、しかし、武田防災担当相は「自衛隊の活動は千葉県の要請に基づいておこなうというルールがある」「千葉県の要請が本日どうあったかということもいまから確認させていただく」などとまるで緊張感のない答弁をおこなったのだ。
 現在進行形の被害に対する対応も、この体たらく。無論、初動対応の遅れの象徴でもある関係閣僚会議が開かれていないことについても、無責任ぶりがあらわになった。
 国民民主党の奥野総一郎議員は「どうして台風10号では関係閣僚会議が開かれ、今回は開かれなかったのか。その違いは何か」と追及したが、これに対し西村明宏官房副長官は「どのような会議を開くかは被害状況を鑑みて判断している」などと述べ、閣僚懇談会でしっかり対応してきたと強調。関係閣僚会議と閣僚懇談会の違いについて訊かれると、西村官房副長官は「関係閣僚会議は特定の案件があったときに招集するものでございますけれども、閣僚懇談会は特定の案件というわけではなくて、まびろに開かれるもの」と説明した。
 
 繰り返すが、事前に気象庁が「記録的な暴風となるおそれがある」と発表し、その上、台風通過後には甚大な被害が発生していることが判明したというのに、なぜ「特定の案件」として関係閣僚会議を開かなかったのか。これではますます疑念が募るが、しかも西村官房副長官はその後、「特定の案件と認識しているからこそ、この閣僚懇談会においてしっかりとした議論がおこなわれている」と答弁。一体どっちなんだと言いたくなるが、ようするに、しどろもどろの状態に陥ったのだ。
 
初動遅れのうえ、武田防災担当相の暴力団スキャンダル隠しで、災害対応のための国会も開かず…
 なぜこんな筋道が通らない話しかできなかったかといえば、それは初動対応を見誤ったことを安倍政権が自覚しているからにほかならない。実際、災害発生前日の先月8日には関係閣僚会議を開催する動きがあったというのに「大きな被害は出ない」として見送りにしていた上、9日には官邸幹部との会議で「2、3日で復旧するだろう」という見方を共有していたと、9月13日放送の『NEWS23』(TBS)が報じている。つまり、関係閣僚会議を見送り、被害発生後も甘い見通しで危機意識を持てず、被災地無視で内閣改造まで実施したという「危機管理の欠如」を認めるわけにはいかないために、〈大臣の所管に拘らず、国務大臣としての立場から自由で忌憚のない意見交換を行う場〉(内閣官房資料より)でしかない閣僚懇談会を、西村官房副長官はさも重要な場であるかのように取り繕っただけなのだ。
 
 そもそも、この閉会中審査にしても、もっと早くおこなえたはずなのだ。しかし、きょうまで開催が遅れたのも、与党の要求があってのことだったという。
 被災地の要望などを踏まえた国会審議を早急におこなうべきという声はずっと起きており、9月17日におこなわれた衆院災害対策特別委員会の理事懇談会では閉会中審査を開催することで与野党が合意。しかし、立憲民主党・蓮舫議員の9月19日のツイートによると、〈与党から先送りしたい〉という申し出があったという。その理由は「(9月)27日で千葉県は停電解消見通し、1つの区切りを終わらせてから開会でいいのでは」というものだ。
 激甚災害指定を含め、迅速な対応が求められていたなかで「区切りがついてから」などと悠長なことをよく言っていられるものだが、じつはこれには別の理由があるのではと永田町では囁かれていた。その別の理由とは、“スキャンダル追及からの逃亡”だ。
 
 というのも、内閣改造直後の9月13日に「週刊朝日」Web版が、そして19日には「週刊文春」(文藝春秋)が、武田防災担当相をめぐる元暴力団関係者や反社会的勢力との関係について報道をおこなっていた。この追及を受けたくないために、自民党が閉会中審査の開催を延ばしたのではないか──そんな見方が出ていたのだ。
 大臣のスキャンダル追及を恐れて国会での被災地対応の審議を遅らせていたとすればとんでもない話だが、きょうの答弁をみているとそれも然もありなん。なにより、いまだに安倍首相は千葉県の現地視察さえおこなっていないのだ。
 そして、初動対応を見誤ったばかりか、千葉県に責任を押し付け、共済未加入者に自己責任をぶち、ブルーシート設置作業から自衛隊を撤退させていた……。きょうの閉会中審査によって、安倍政権がいかに無責任な姿勢のままでいるか、それが可視化されたと言えるだろう。 (編集部)