新しい安倍政権の「改憲シフト」では、憲法改正推進本部長に細田博之元幹事長を再登場させました。細田氏は自民党案は「たたき台」であるとして、修正にも柔軟に応じる姿勢を示しています。
昨年「強権型改憲シフト」で失敗した反省を踏まえ、野党への対応に手腕を持つ人材を配置して野党を論議に引き込むことを狙ったわけです。
これまでそれほど改憲に熱心でなかった二階幹事長と岸田政調会長を改憲に向けて前面に立たせる構図にしたのも、挙党体制を印象づけると同時に「安倍カラー」を薄める狙いも持っています。
その一方で、「2020年に新憲法を施行」するとしてきた安倍首相としては、時間的に追い込まれているなかで強権を発動する可能性も否定できません。
野党を改憲議論に引き込むことで、来年の通常国会で改憲発議を成立させることに焦点を合わせているのは間違いありません。
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首相 改憲論議引き込み 来年の通常国会に照準
しんぶん赤旗 2019年9月30日
安倍自民党の新「改憲シフト」の顔ぶれがほぼ出そろい、動き始めました。
党憲法改正推進本部長には細田博之元幹事長が再登板しました。細田氏は昨年3月の党大会で自民党改憲4項目をまとめたときの本部長です。
細田氏は27日の時事通信のインタビューで、改憲4項目について「友党公明党と野党のいくつかの党が前向きに議論してもらわないといけない」「修正案や新たな提案が出てきたら、それはまた(自民)党に戻して議論する」と述べました。自民党案は「たたき台」であり、修正にも柔軟に応じる姿勢を示し、各党を論議に引き込む狙いです。
他方、公明党の北側一雄憲法調査会長は26日の記者会見で、10月4日召集の臨時国会での改憲論議に関し「憲法審査会で積極的に論議していく姿勢で臨みたい」とし、「憲法審査会の論議を見ながら党内の論議も進めていきたい」と語りました。細田氏と北側氏のパイプで、自民・公明間の調整を加速するシフトが動きだします。
野党巻き込み
衆院憲法審査会会長には国会対策の経験が長い佐藤勉元総務相を起用しました。官邸直結の国会運営で、2015年の安保法制=戦争法審議をめぐり一部野党を修正協議に巻き込み強行成立させた“手腕”に期待します。
野党との直接の交渉役を担う同審査会の筆頭幹事には、日本会議国会議員懇談会きっての“行動派”である新藤義孝元総務相を留任させます。
参院憲法審査会長には新たに林芳正元文科相をあてます。林氏は防衛相も歴任した日米同盟強化派の一人です。
7月の参院選で「改憲勢力3分の2」を割り込んだ参院では、世耕弘成前経産相を党参院幹事長に据え、官邸直結での党運営、野党対策を強めています。新たに議長に就任した山東昭子氏は、麻生派で日本会議議連の幹部を務める改憲派。参院の改憲シフトも強化されました。
これら、公明党との論議加速と野党分断対策を重視した布陣は、強権布陣で失敗した昨年の「改憲シフト」への反省を踏まえ、改憲論議推進の「本気」度を示すものです。他方で、「2020年に新憲法施行」に執着する安倍首相にとって時間的ゆとりはなく、追い込まれた状態であり、強権発動の余地を残した体制です。
安倍晋三首相は、25日(日本時間26日午前)、訪問先のニューヨークで記者会見し、「改憲原案の策定に向けて野党各党もそれぞれ案を持ち寄り、(衆参両院の)憲法審査会の場で国民の期待に応える議論を深めてもらいたい」と述べ、改憲推進への強い執念を改めて示しました。
「党一丸」推進
一方、自民党内では「党一丸」の改憲推進の動きが強化されています。
25日には二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長が懇談。改憲論議促進に向け「結束を確認」したと報じられています。
岸田氏は21日にも訪問先のシンガポールで、「党を挙げて憲法改正を動かしていきたい」と発言。「国民の理解や世論喚起は大変重要だ」と述べ、全国各地で開く地方政調会で改憲をテーマにしていく方針を示しました。
二階・岸田両氏が前面に立つ構図には、挙党体制を印象づけると同時に、「安倍カラー」を薄める狙いもあります。
安倍首相と自民党の思惑は、憲法審査会での改憲国民投票法の「改定」問題を臨時国会で決着させ、来年の通常国会から本格的な9条改憲論議に進むことにあります。国民投票法改定と並行し「自由討議」などの名目で改憲4項目の議論を始めることも狙っています。(中祖寅一)