2019年10月17日木曜日

17- 避難所のホームレス排除は憲法違反 災害時には誰でも受け入れるべし

 台風19号が首都圏を直撃した12日、台東区が設置した避難所に避難した路上生活者2人に対して、住所不定を理由に台東区の職員利用を拒絶しました上からの指示によるものでした。
 それに対して世田谷区は多摩川の河川敷に住んでいる路上生活者たちに対し、事前にチラシを配って台風と避難所の情報を知らせました。天と地の開きがある対応です
 植草一秀氏が「台東区のホームレス排除は憲法違反だ」とするブログを出しました。
 
 台東区長は15日午後、「対応が不十分であり、大変申し訳ありませんでした」と謝罪し、区は災害時の対応を検討する組織を新たに立ち上げ、全ての人たちを援助する方策について検討を進めていくとしました。
 いかなることがあろうとも絶対に誤りを認めない人がいる (^^) 中で、一応常識的な事後対応がなされました。
 「日々雑感」氏のブログを併せて紹介します。
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台東区のホームレス排除は憲法違反だ
植草一秀の「知られざる真実」 2019年10月15日
日本国憲法に次の条文がある。
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
 
台風19号の襲来に際して、台東区が設置した避難所に避難した路上生活者が台東区の職員によって利用を拒絶された
台東区は通常の避難所とは別に、外国人観光客や日本人の帰宅困難者のために東京文化会館を解放した路上生活者は東京文化会館の入り口付近に、塀で囲まれている箇所があり、そこに避難したが、台東区の職員から移動するようにと告げられ、避難を拒絶された
テレビではNHKが「命を守る行動をしてください」と繰り返し叫んでいた。
史上最大級の台風が東京を直撃した。屋外にとどまることは命の危険に直結する。台東区職員が示した行動は人間性が疑われる行動だ。
 
世田谷区は同区と神奈川県との境を流れる多摩川の河川敷に住んでいる路上生活者(ホームレス)の人たちに対し、事前にチラシを配って台風と避難所の情報を知らせた。対応に天と地の開きがある
台東区長は自民党の区議、都議を経て区長に就任した服部ゆくお氏。世田谷区長は社会民主党国会議員を経て区長に就任した保坂展人氏である。
どちらの対応が正しいのかは明白だ。台東区の対応は憲法違反である。
 
日本国憲法前文は、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と明記している。
また、
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
の条文も置かれている。
 
台東区の服部区長の対応は、安倍内閣の基本姿勢と通じる。安倍首相は国会質疑で、「生活保護は権利である」ことを認めなかった。
「生活保護」は生存権を守るための制度であり、この制度を利用することは国民の権利である。
ところが、安倍首相は生活保護を「権利である」と明言せず、多くの地方自治体が生活保護の利用を極力抑制する行政運営を行っている。
路上生活者が生命の危機に直面し、避難所を訪れても、これを排除するのは安倍内閣の冷酷な対応と平仄を一にする。
 
日本国憲法第25条は、すべての国民に、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障している。
台風襲来の際に、命の危険が生じ、避難所を訪れた国民に対して、避難所の利用を拒絶することは、日本国憲法第25条に反する違憲行為である
そもそも「路上生活者」をこの状態に放置していることが憲法第25条に抵触する。
 
日本の政治をどう変えるべきか。何よりも重要なことは、国家がすべての国民に保障する最低ラインを引き上げることなのだ。
そのための具体的施策が、最低賃金の大幅引き上げであり、最低保障年金の引き上げ、生活保護制度の是正だ。
生活保護制度利用の要件を満たしているのに生活保護制度を利用できていない国民が8割以上を占めている
利用要件を満たす人に対する実際に利用している人の比率を捕捉率という。日本の生活保護制度捕捉率は国際比較上も極めて低い
国民が権利としての生活保護制度を利用しにくい「空気」が作られている。
日本の主権者は「弱者を排除・差別する政治」を選ぶのか、それとも、「生存権保障によって弱者をなくす政治」を選ぶのか。問われているのは私たち主権者の判断でもある
(以下は有料ブログのため非公開)
 
 
災害時の避難所は誰でも何処でも受け入れるべきだ。 
日々雑感 2019年10月16日
 
 台風19号が接近した際、東京都台東区が避難所を訪れたホームレスの男性の利用を拒んだ問題で、同区の服部征夫区長は15日、「対応が不十分だった」と不手際を認めるコメントを発表した。
 
 服部区長は「避難所での路上生活者の方に対する対応が不十分であり、大変申し訳ありませんでした」と陳謝。さらに「今回の事例を真摯(しんし)に受け止め、災害時にすべての方を援助する方策について検討し対応を図っていく」として、新たに区役所に検討組織を設置したと明らかにした。
 この問題は15日の参院予算委員会で取り上げられ、安倍晋三首相は「各避難所においては避難したすべての被災者を適切に受け入れることが望ましい」と述べた>
(以上「毎日新聞」より引用)
 
 台東区の区長が避難所を訪れたホームレスの男性の利用を拒んだ件で「対応が不十分だった」と不手際を認めるコメントを発表したという。服部台東区長は「路上生活者に対する対応が不十分であり、大変申し訳なかった」と陳謝したようだ。
 ただ問題なのは路上生活者が住民票がないため避難所に入れないとしても、雨宿りにホールに留まらせてほしい、との申し出にも職員は「邪魔になる」として戸外へ追い出したことだ。
 
 確かに台東区の避難所には区民分の毛布や食料だけしかないかも知れない。しかし、それでも避難して来た人は避難所に受け入れるべきだった。
 日本人及び外国人の旅行者は台東区民ではない場合がある。あるいは災害により帰宅困難になった者が受け入れてもらえないとしたら、そうした人たちはどうすれば良いのか。住民以外の人の避難所も用意されていたようだが、その案内はなかったようだ。しかし緊急時の避難所で区民かどうかが受け入れ基準というのもいかがなものだろうか。
 東京だけではない。大量の住民票のない人たちが滞在する観光地では起こり得る問題だ。災害は起きないに越したことはない。しかし毎年のように災害に見舞われる日本で、地方自治他の避難所に他地域の住民でも避難せざるを得ない事態は日本国民の誰もが直面しうる。
 台東区長の「お詫び」で済ませるのではなく、日本政府と地方自治体の共通認識として災害時の緊急避難は誰でも何処でも受け入れる、という大原則を確立すべきだ。