2019年10月17日木曜日

完成堤防の決壊は重い 安倍政権は治水予算を最低に固定

 温暖化の影響なのか、毎年大規模な水害の被害が出ています。今回の台風19号に伴う大雨で各地の堤防が決壊しました。なかでも長野県の千曲川と宮城・福島県を流れる阿武隈川の堤防決壊は大規模で、周辺に大災害をもたらしました。
 千曲川で70mにわたった堤防の決壊は、84年に完成した後、強度を維持する盛り土工事を行ったものでした。その完成堤防が決壊したわけで、堤防の構造を根本的に見直す必要がありそうです。
 「日々雑感」氏は、「古来の土を積み重ねただけの堤防では短期的な増水には耐えられても、時間をかけた増水には耐えられない。芯となるコンクリートの壁を入れなければならない」と述べています。専門家による工法の見直しが必須です。
 
 十分に頑丈な堤防を築くには当然それなりの予算が必要です。安倍政権は発足当時 国土強靭化を叫びましたが、治水関係予算の推移を見ると1996~7年の1兆3700億円をピークに年々ひたすら減少し、安倍政権になってから組まれた予算は2014年以降7900億円台の過去最低レベルに固定されています。
 これでは温暖化で豪雨が頻繁に襲来する現状には耐えられせん。一旦大洪水が起きればそこから復旧するまでには少なくとも数ヶ月から1年以上が掛かります。役に立たない米国兵器の爆買いは止めて、洪水対策・堤防の拡充強化に本腰を入れるべきです。
 そもそも憲法改悪と軍備増強、それにトランプ氏への迎合しか頭にないのであれば国のリーダーは務まりません。即刻退場すべきです。
 
 信濃毎日新聞、河北新報の社説とブログ「日々雑感」を紹介します。
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社説 千曲川の氾濫 完成堤防の決壊は重い
信濃毎日新聞 2019年10月16日
 台風19号による記録的な大雨で、千曲川の堤防が長野市穂保で決壊した。
 水が堤防を越える越水を合わせると千曲川本流で少なくとも計17カ所、支流では18カ所に上っている。濁流は住宅地などを襲い、住民は孤立し、道路や橋、田畑にも大きな被害が出ている。
 危険性は今回の災害をみても明らかだ。千曲川の堤防が決壊したのは1983(昭和58)年以来になる。なぜ決壊したのか検証し、今後に生かす必要がある。
 
 決壊地点は、洪水の発生しやすい地帯でもある。
 南佐久郡川上村を源流とする千曲川は、佐久、上田地域に降り注いだ雨水を運び、中信の雨を集める犀川と長野市内で合流する。さらに長野市内に降った雨が浅川などで運ばれ、決壊した地点近くで千曲川に注ぎ込む。
 東北信、中信の雨を集めた千曲川は、その先で川幅が狭くなる。中野市立ケ花の狭窄(きょうさく)部である。決壊地点の川幅が約1050メートルなのに、立ケ花は約210メートルで5分の1程度しかない
 
 流れをせき止められたような形で行き場をなくした水が、今回の決壊地点の周辺で堤防を越え、被害をもたらしてきた歴史がある。
 中野市立ケ花の水位は前回の決壊時の11・13メートルを更新し、12・44メートルを記録した。台風19号の猛烈な雨で千曲川が一気に増水し、堤防を越えて外側の斜面を削り、決壊したとみられている。
 決壊は約70メートルにわたった。84年に完成して、その後、強度を維持する盛り土工事を行った堤防だ。長野市の加藤久雄市長は記者会見で「工事が終わった堤防で、破堤しないという安心感があった」と述べている。
 計画に基づいて完成した堤防が崩れたことを、重く受け止めなければならない。
 
 温暖化の影響なのか、全国各地で大規模な水害が毎年のように発生している。想定していた以上に雨が降った場合にどう対応するのか。現在、国が進めている千曲川の改修計画の見直しを含めて、考えていく必要があるだろう。
 決壊地点の危険性を下げるには、立ケ花部分の川幅を広げる改修が必要になる。ただし、下流の整備を進めないまま立ケ花を拡幅すると、下流の流量が増えて洪水の危険性が増す
 河川改修には時間が必要だ。上下流のバランスを取りながら、慎重に進めなくてはならない。河道のしゅんせつなどで堤防の効果を維持する作業も欠かせない。 
 
 
社説 台風19号と堤防決壊/もろさを露呈 避難が先決
 河北新報 2019年10月16日
 台風19号のもたらした集中豪雨によって、洪水が発生し、東日本を中心に被害は極めて広範囲に及んでいる。
 孤立している集落の救済と一刻も早い復旧が待たれる。国や自治体などは緊密に連携して救助活動に当たってもらいたい。
 今回の台風被害では、数多くの河川で堤防がもろくも決壊した。中下流域は水浸しとなり、ここまで水は来ないと見て逃げ遅れた住民が巻き込まれる事態になった。
 昨年の西日本豪雨を受け、強い国土づくりの掛け声の下、最新テクノロジーを駆使した河川堤防を整備しているさなかだった
 宮城、福島両県を流れる阿武隈川、長野県の千曲川など日本を代表する河川で堤防が決壊したことをみても、想像を超える雨量には太刀打ちできないと分かる。
 国などは決壊箇所の回復を急ぐとともに、耐久力の強化や古くなった堤防の点検などに目配りしてほしい。
 
 堤防やダムの役割について、日ごろから住民の理解が進むよう意識を高める活動も求められよう。住民も教訓として胸に刻んでおきたい。
 国土の7割が山地である日本では川の流れが急で、古くから洪水を治める堤囲いなどが図られてきた。
 近代になって堤防の建設には技術の粋が集められた。堤防の高さを決める際、洪水につながるほどの雨量が発生する確率と水量を計算する。
 ダムや遊水池での貯水なども勘案した上で、安全に流せる最大の流量を導いて高さを決めるとされる。
 しかし、今回のように複数の支流からも流れ込み、堤防を越える「越水」が起きると、越えた側の土塁などが浸食されていく。
 不安定になった堤防はてっぺんから崩れて決壊する。一般に決壊の原因は「越水」によるものが7割とされ、千曲川の映像を見てもその様子がうかがえる。
 水が堤防を越えたら、水流が緩くても最大の危険が近づいていると認識し、避難行動に移っていただきたい。
 
 ダムの緊急放流という、あまり耳慣れない言葉に戸惑った人も多いのではないか。関東を中心に6カ所のダムで行われた。
 貯水量が満杯近くまで増え、決壊を防ぐために放流する。西日本豪雨では愛媛県のダムで放流した後、下流で氾濫が起きて犠牲者を出した
 その教訓から、ダム管理者から自治体への予告を前倒しする対応を取ったものの、何度か時間を変更するなどの不慣れが目立った。
 そもそも放流による下流への影響などの情報が不足している。通告だけを連呼すれば不安を広げかねない。
 災害のたびに新たな課題が見つかるのも、ここ数年の傾向だ。全容が見え始めた時点で検証を行い、次の事態に備えたい。
 
 
国土強靭化がコレか
日々雑感 2019年10月15
 
 今回の台風19号では、国が13日夕までに「堤防決壊」を確認した21河川のうち、7河川が国管理の大規模河川だった。広範囲で大量の雨が降ったことにより、複数の支流から大量の水が一気に流れ込み、一般的には整備が進んでいるとされる大規模河川の堤防の対応能力も超えてしまった。国土交通省は、近年相次ぐ大規模災害を受けて緊急対策を進めているが、堤防整備が間に合っていないのが実情だ
(以上「毎日新聞」より引用)
 
 台風19号で全国各地の河川の堤防が決壊した。濁流が市街地や農地に流れ込み、深刻な被害を与えている。
 なぜ堤防が氾濫ではなく、決壊するのか。それは堤防に芯が入ってないからだ。ただ土を積み重ねただけの堤防では短期的な増水には耐えられても、時間をかけた増水には耐えられないからだ。
 
 土を積み重ねただけの堤防は時間とともに堤防の土に水が浸透して対水力が著しく低下する。大量の水を含んだ土は自重で崩れるように、堤防も脆くなる。
 そうした水を含んだ「ドベ」に還る堤防が崩壊するのを防ぐために、土を積み上げただけの堤防に芯となるコンクリートの壁を入れなければならない。そうすれば増水しても「氾濫」で済み、「決壊」にはならない。擁壁工事で用いられるL字型のコンクリート壁を入れていれば「氾濫」で市街地側が抉られても「芯」が倒壊することはない。
 そうした工学的な検証はこれまで充分に行われて来たはずだし、土木工事の専門家から行政に再三指摘されて来たはずだ。それでもなぜ堤防の「強靭化」をして来なかったのだろうか
 各地の決壊した堤防の断面写真を見る限りでは、いずれも土を積み固めただけのものだ。それでは増水の時間の経過とともに堤防は脆弱になり決壊するのは自明の理だ。なぜ安倍自公政権は政権発足当時の「国土強靭化」を公約通りに実施しなかったのだろうか。
 
 外敵により日本国民は戦後一人も亡くなってはいないが、自然災害では何万人も亡くなっている。今回の台風19号だけで数十人が犠牲になり、多くの家屋や田畑が濁流に呑み込まれた。戦争は自然災害という形で毎年のように繰り返され、毎年のように犠牲者が出ている。
 なぜ国土強靭化は公約通りに実施されなかったのか。なぜ公共事業費は削りに削られたのか。政権与党は江戸時代さながらの土を積み固めただけの堤防を放置している現状を国民に説明する義務がある。