2019年10月12日土曜日

安倍首相の答弁は現実を覆い隠すもので不誠実(信濃毎日新聞)」

 信濃毎日新聞が「国会の首相答弁 現実を覆い隠し不誠実」とする社説を掲げました。
 所信表明演説に対する各党の代表質問に続き、衆院予算委員会における首相の質疑応答を見てのものですが、関電幹部らの金品受領問題、あいちトリエンナーレへの補助金不交付、NHK番組問題など追及されたことに対し「安倍首相は論点をずらし、当事者意識に欠けた発言を繰り返した。誠実さを欠いている」と批判しました。
 
 補助金不交付やNHK番組の問題は「表現の自由」に係わることなので、政府は事実を解明し説明する責任があるにもかかわらず、「不交付は文化庁が判断した」とし、「表現の自由」への影響は「ありもしない事象をいたずらにあおるような言動は、言論機関や芸術家に対して大変失礼」と述べ、問題自体が存在しないととぼけました。
 一方でメディアの報道に対して厳しい干渉を加えながら、「メディアがそんなことで萎縮する筈はない」と言い張るのは安倍首相の常套手段であり、問題のすり替えです。
 
 彼の頭の中にあるのはただただ「改憲」のことのようですが、それも「先の参院選で国民から支持された」というような認識でいるのですから話になりません。
 社説は、「政府には、事実やデータを厳しく検証した上で、誠実な姿勢で論戦に臨むことを求める」とまとめていますが、何とも空しい話です。 
 
 LITERAが「安倍首相が「消費税増税」国会答弁で開き直り! 」とする記事を出しましたので、併せて紹介します。
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国会の首相答弁 現実を覆い隠し不誠実
信濃毎日新聞 2019年10月11日
 国会で本格的な論戦が始まった。
 安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党の代表質問に続き、きのうは衆院予算委員会に首相と全閣僚が出席して、質疑を交わした。
 各党は代表質問と合わせ、関西電力幹部らの金品受領や国際芸術祭への補助金不交付、NHK番組の問題などを追及した。
 
 安倍首相は論点をずらし、当事者意識に欠けた発言を繰り返した。誠実さを欠いている。
 原発マネーが長期間にわたり還流していた可能性がある関電問題は、電気料金を支払う消費者の信頼を損ねた。原発と立地自治体の関係も問い直さねばならない。
 関電に金品を渡した高浜町の元助役と関係が深い会社は、自民党の世耕弘成参院幹事長に多額献金をしていた。解明が急務だ。
 首相は予算委で、関電が設置した第三者委員会に問題の調査を一任する姿勢を示した。主体的に問題を調べて、国民の疑問にこたえる意思が感じられない。
 
 補助金不交付やNHK番組の問題は「表現の自由」を脅かしかねない。政府は事実を解明し、説明していく責任がある。
 それなのに、首相は代表質問で問題の存在を否定した。不交付は「文化庁が判断した」とし、「表現の自由」への影響は「ありもしない事象をいたずらにあおるような言動は、言論機関や芸術家に対して大変失礼」と述べた。
 芸術家などから「文化に関わる者全てに圧力を与える」などの抗議が殺到していることは一顧だにしないのか。
 
 消費税にも無責任な答弁をした。「経済再生と財政健全化に取り組む」という不透明な根拠を掲げ、「消費税を今後10年間引き上げる必要はない」と述べた。
 社会保障の将来像が描けず、金融政策などアベノミクスは手詰まりになっている。財政健全化目標は5年先送りしたのに達成がおぼつかない。厳しい現実を覆い、楽観論に終始している。
 
 一方で改憲論議については参院選の結果や世論調査を自らに都合よく解釈し、「国民の声は憲法改正の議論を行うべきというものだ」と述べた。首相は改憲を実現する環境を整えることしか重要視していないのではないか。
 野党の責任は大きい。立憲民主党や国民民主党などの統一会派は問題を整理して連携し、核心を突く質疑をしていく必要がある。政府には、事実やデータを厳しく検証した上で、誠実な姿勢で論戦に臨むことを求める。 
 
 
安倍首相が「消費税増税」国会答弁で開き直り!
景気悪化、消費冷え込み、企業の内部留保過去最大なのに「法人税減税」を自慢
LITERA 2019.10.10
 消費税率が10%に引き上げられて約1週間が経ったが、その一方で悲惨な数字が立てつづけに発表されていることをご存知だろうか。
 まず、7日に内閣府が発表した8月の景気動向指数(速報値)では、現状を示す一致指数が前月より0.4ポイント低い99.3となり、基調判断は景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に引き下げた。「悪化」は5段階ある判断のうちもっとも悪いもので、今年3月分で6年2カ月ぶりに「悪化」となり、4月分でも「悪化」、5〜7月分では「下げ止まり」だったが、再び「悪化」に戻ったのだ。
 
 さらに、増税当日の1日に日本銀行が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・製造業の業況判断指数がプラス5で前回6月調査から2ポイント悪化。悪化は3四半期連続となっており、2013年6月調査(プラス4)以来の低水準だ。
 また、2日に内閣府が公表した9月の消費動向調査では、今後の財布のひもの緩み具合を示す消費者態度指数前月比1.5ポイント低下で35.6に。前月を下回るのは12カ月連続であり、今回のこの数字は、調査方法が変更された2013年以降では過去最低の水準のものだ。
 これだけではない。8日に厚労省が発表した8月の毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金は前年同月比で0.6%減となり、じつに8カ月連続のマイナスを記録した。つまり、今年に入ってずっとマイナスがつづいているのだ。
 
 景気は「悪化」し、実質賃金も上がらない──いま必要な財政政策は減税であることは間違いないが、こうした状況を一切省みることなく、安倍政権は増税を実行してしまった。はっきり言って正気の沙汰ではない。
 本サイトでは何度も繰り返し訴えてきたように、逆進性の高い消費税よりも、まずは消費増税とは反対に税率が下げられてきた法人税や、安倍政権が増税を見送った株式の配当や売却益といった金融所得への課税を見直すべきだ。
 
 実際、8日に衆院本会議でおこなわれた代表質問では、共産党の志位和夫委員長がこの問題を追及。そもそも政府は「財政再建のため」「社会保障のため」と言っては消費税の税率を引き上げてきたが、この31年間で、国と地方の借金は246兆円から1069兆円と約4倍以上になっており、社会保障のほうも年金は減り、サラリーマンの医療費窓口負担も3倍になっているように「財政再建、社会保障のため」という政府の言い分は「どちらも嘘」だと喝破。こうつづけた。
「この31年間の消費税収は397兆円ですが、同時期に法人3税の税収は298兆円減り、所得税・住民税の税収も275兆円減りました。大企業と富裕層への減税が繰り返されたのに加えて、消費税増税がもたらした経済の低迷が税収を減らした結果です。結局、弱者から吸い上げ、大企業と富裕層を潤す。これこそが消費税の正体であることは、31年間の現実ですっかり明らかではありませんか」
 
 大企業と富裕層に優遇する一方で、消費増税によってその分を穴埋めしてきた──。この追及に対し、しかし安倍首相は、淡々と原稿をこう読み上げた。
「所得税や法人税による税収の減少の背景としては、制度改正要因にくわえ、バブル期以降の資産価格の下落等、経済情勢の要因もあることに留意が必要です。この間、急速な高齢化等を背景として年金・医療・介護等の社会保障給付費は大きく増加してきました。消費税は税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定しており、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから社会保障にかかる費用を賄うための財源としてふさわしく、引き上げによる増収分は実際に社会保障の財源として活用されてきました」
 
安倍首相の「法人税を下げないと企業が海外に逃げる」は真っ赤な嘘
 何か言っているように見えるかもしれないが、安倍首相は「制度改正によって減税し、その分、社会保障費は消費税で賄ってきた」と言っているだけ。しかも、法人税については、こんなことまで言い出した。
「企業に対する税制については国際競争力への影響を踏まえ慎重に検討する必要があります。安倍政権では租税特別措置の縮減・廃止等により、課税ベースを拡大しつつ法人税率を引き下げるなど、成長志向の法人税改革に取り組んできました」
 ようするに、法人税を下げないと企業が税率の低い海外に行ってしまうと主張しているのだが、これは完全なデタラメ。実際、経産省の調査でも「海外現地法人に新規投資または追加投資を行った本社企業」が投資決定のポイントとして挙げたのは「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」がトップで、法人税にかかわる「税制、融資等の優遇措置がある」をポイントとして挙げた企業はごくわずかで、11項目中7番目にすぎなかった(「海外事業活動基本調査結果概要確報」2008年度実績)。
 
 しかも、安倍首相は「租税特別措置の縮減・廃止によって課税ベースを拡大しつつ法人税率を引き下げた」などと誇らしげに語っているが、実際には租税特別措置である研究開発減税などで多くの大企業が法人税額を控除されるなど税の優遇を受けてきた。たとえばトヨタ自動車は安倍政権下の5年間で約5000億円の減税となっているが、こうした大企業優遇政策の結果、企業の内部留保は2018年度でも463兆1308億円を記録し、安倍政権下で過去最高を更新しつづけているのだ。
 つまり、安倍首相の言う「成長志向の法人税改革」とはあきらかに「税の大企業優遇」でしかない。逆進性の高い消費税を増税する前に、まずはこうした法人税や富裕層ほど割合が高い金融所得の課税を見直し、税の累進性を強化すべきなのは明々白々だ。
 
 しかし、安倍首相は事も無げに、こう答弁した。
「低所得者への配慮として軽減税率制度を実施することとしたほか、増収分を活用して幼児教育・保育の無償化や年間最大6万円の年金生活者支援給付金等の社会保障の充実をおこないながら社会保障の安定化も同時にはかろうとしており、消費税が弱者から吸い上げ、大企業と富裕層を潤すとのご指摘は当たりません」
 「今回の引き上げは、全世代型社会保障制度へと大きく転換していくためのものであり、減税はまったく考えておりません」
 低所得者への配慮で軽減税率を実施するというのなら、食料品をはじめ生活必需品はすべて非課税にしてはじめて「低所得者への配慮」と言えるはずで、結局、軽減税率は付け焼き刃でしかない。しかも、幼児教育・保育の無償化や年金生活者支援給付金は全員が恩恵を受けられるわけではなく、それでなくても格差が広がっているこの現状で「低所得者への配慮」が必要になるような増税はすべきではないのだ。
 それなのに、安倍首相は「消費税が弱者から吸い上げ、大企業と富裕層を潤す」という事実を「ご指摘は当たりません」と述べ、消費税の減税・廃止という訴えを「まったく考えていない」と一蹴したのである。
 
 しかし、この強気な判断も、早晩わたしたちの生活に結果として目にみえるものとなる。景気が悪化するなかで消費税の増税を実行するという前代未聞の政策によって、経済はどこに行き着くのか。地獄が訪れる前に、減税・廃止を訴えつづけるほかないだろう。(編集部)