安倍政権は参院選を控えた7月1日、突如、半導体やディスプレーの材料等3品目(フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジスト)の韓国への輸出を厳しく規制すると発表しました。同時に「ホワイト国」から韓国を除外することも決定しました。
日本政府は、韓国は悲鳴をあげて「徴用工問題」で妥協してくると目論んだのですが、韓国はすぐさま政府の支援のもとでそれらを国産に切り替える方針を固めました。完全に国産に切り替わるまでにはまだ時間を要しますが、韓国向けの年間500億円の市場が再び戻ることはなくなりました。
韓国民は報復として日本品の不買運動を始め、日本観光を自粛しました。
人気が高かった日本のビールの売り上げは8月以降数%に落ちたと言われ、訪日も激減しました。九州方面の観光関連業は惨憺たるものです。
2018年の訪日外国人数は3120万人で、その経済効果(消費額)は4・5兆円でした。政府は20年には4000万人、8兆円になると見込んでいたのですが、飛んだ皮算用でした。アベノミクスで唯一成功していると揶揄されているインバウンド効果がこの有様では、さすがに経済界も黙ってはいません。
日韓間の軋轢に米国がイライラを募らせていることもまた明らかです。
日刊ゲンダイが「~ 安倍政権…財界と米国の圧力に屈し対韓軟化」とする記事を出しました。
早く安倍政権が登場する以前の関係に戻って欲しいものですが、安倍首相は、自らが強調する「国際法」の最新の認識にも欠け※、戦前における韓国への加害の認識に欠けているので、簡単ではないようです。
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“カラ威張り”安倍政権…財界と米国の圧力に屈し対韓軟化
日刊ゲンダイ 2019/10/29
戦後最悪の日韓対立の火種となった韓国最高裁の元徴用工判決から30日で1年。対韓輸出規制を発動し、韓国叩きでブイブイいわせてきた安倍政権が態度を軟化し始めた。文在寅大統領との首脳会談を拒んできた安倍首相は「即位の礼」を機に李洛淵首相と会談。菅官房長官は「話し合いをという雰囲気になってきている」と言い出した。政権の支持基盤である財界の不満噴出、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)をめぐる米国の圧力で膝を折らざるを得なくなってきたようだ。骨の髄まで染み込んだポチ気質。弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものだ。
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菅氏が日韓関係について言及したのは、27日に都内で開かれた「G1経営者会議」での講演。元徴用工判決は日韓請求権協定違反だとの従来の主張を繰り返し、「国際法は大原則だ。ここを崩したらすべてが崩れてしまう」と強調しながらも、「韓国もこのままではダメだと、何らかの話し合いをという雰囲気にはなってきているのかなと思う」と踏み込んだ。安倍・李洛淵会談や文在寅からの親書が影響したと解説されているが、理由はもっと単純だ。
「不買運動などのあおりを食らう財界から批判が上がり始めています。9月の貿易統計で対韓輸出額の減少幅は前年同月比15・9%減の4028億円となり、マイナス幅は拡大の一途。経団連の中西宏明会長は会談した李洛淵首相をあふれんばかりの笑顔で出迎え、〈何とかしなければいけないという点では李首相も経済界もまったく同じ考え方だ〉と力を込めていた。官邸も財界の意向を無視できなくなってきています」(与党関係者)
国務省高官が日韓まわり最後通牒
さらに、文在寅政権が報復措置として破棄通告したGSOMIAの更新期限が来月23日に迫り、米国が日韓両国に露骨な圧力を掛けている。
「スティルウェル国務次官補(東アジア・太平洋担当)がGSOMIA延長に向けて動き回っています。26日まで訪日し、来月1~5日はバンコク開催のASEAN首脳会議で日韓当局者と接触。来月5~7日に訪韓するスケジュールで、日韓に協議を強く働きかけている。いわば最後通牒です」(日韓外交事情通)
文在寅政権は対韓輸出規制とGSOMIA延長の一括解決を主張。元徴用工訴訟への対応をまずは求める安倍政権とは平行線をたどってきた。
国際ジャーナリストの太刀川正樹氏は言う。
「トップ会談で融和を演出したい韓国側はGSOMIA期限前の首脳会談を求めていて、ASEANあるいはAPEC首脳会議(11月16、17日=チリ・サンティアゴ)を利用したいと要望していますが、日本側が難色を示している。韓国側が提案している日韓企業と韓国政府が賠償基金をつくる〈1+1+α〉も、韓国政府が基金を設立して日韓企業が参加する〈α+1+1〉もダメだと言う。と言いつつも、GSOMIAについては米国のプレッシャーに屈するしかない。もはや強気一辺倒ではいられず、GSOMIA延長が現実的なのではないでしょうか」
安倍首相周辺は12月に北京で開催される日中韓サミットでの日韓首脳会談を検討しているようだが、これもホストの中国のメンツを借りて、自分たちの顔を立てるため。空威張りそのものだ。