2021年1月18日月曜日

18- 首席秘書官が3か月半で交代 近づく官邸崩壊の足音 トヨタ社長もダメ出し

 元日首相官邸で異例の人事が発令され総理首席秘書官政務秘書官)の新田章文氏が辞職し後任に財務官僚寺岡光博内閣審議官が就任しまし

 安倍前内閣では“総理の懐刀”といわれた経産省出身の今井尚哉氏が7年半(内閣の全期間)にわたって政務秘書官を務めまし。長ければ良いというものではありませんが、政権発足3か月半での交代は例がないということです
 政治ジャーナリスト・藤本順一氏によれば、「勝負の3週間が始まった昨年11月頃から、菅首相は各省出身の秘書官と頻繁に打ち合わせをしているが、首相がGo Toを継続したいと頑なだから、秘書官が中止を具申したくてもできない」という状況だったということです。
 自分の意向に沿った意見でないと受け入れないというのでは、周囲も助言など出来ません。そもそも長期に渡った官房長官時代に高級官僚に対して恣意的な人事を行ってきたため、いまや官僚機構が機能不全に陥っているとも言われています。
 これでは国民に信頼される政治など行われようがありません。
 肝心の経済対策についても、専門家から批判が殺到しトヨタ社長も「ダメ出し」をしたということです。
 NEWSポストセブン2つの記事を紹介します。
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総理首席秘書官が3か月半で異例の交代 近づく官邸崩壊の足音
                      NEWSポストセブン 2021/01/17
                       週刊ポスト2021年1月29日号
 菅政権がコロナ対策の甘さで窮地に陥っているが、官邸崩壊も近づいているようだ。元日、首相官邸で異例の人事が発令された。「総理首席秘書官」と呼ばれる政務秘書官の交代だ。菅事務所の秘書である新田章文氏が辞職し、後任に財務官僚で内閣審議官を務めた寺岡光博氏が就任した。
 政務秘書官は各省庁から派遣される6人の事務秘書官を束ねる役割で、官房長官と並んで官邸中枢を取り仕切る。
 安倍前内閣では、“総理の懐刀”といわれた経産省出身の今井尚哉氏が7年半にわたって政務秘書官を務めたが、政権発足3か月半での政務秘書官の交代は例がない。政治ジャーナリスト・藤本順一氏が語る。
「勝負の3週間が始まった昨年11月頃から、菅首相の秘書官が『総理に直接、打ち込めない』とぼやいているという情報があった。菅首相は各省出身の秘書官と頻繁に打ち合わせをしているが、首相がGo Toを継続したいと頑なだから、秘書官が中止を具申したくてもできないというのです」
 その結果、対策が後手に回ってGo To一時停止と支持率急落に見舞われた。官邸スタッフが語る。
「菅総理は官房長官時代のように役所や党の情報が入ってこないからコロナ対策の判断が遅れたと不満が強い。その責任を政務秘書官が取らされた」

 安倍政権時代、コロナ対策は「官邸官僚」といわれた今井氏を中心とする経産官僚が仕切り、各省庁をまとめていたが、菅首相は安倍時代の官邸官僚を“パージ”し、官邸から追放した。その結果、経産省は菅政権と距離を置き、コロナ対応も情報の継続性が失われた
 菅首相が推進するデジタル庁設立や「縦割り行政の打破」という行革も霞が関を敵に回す政策だ。
 財務官僚の寺岡氏を政務秘書官に据えたのは、財務省の力を借りて官邸を立て直し、役所の反乱を防ぐため。つまり、菅氏自身が総理としての力の低下を自覚し、延命を図る目的ではないか。


菅政権の経済政策に専門家から批判殺到 トヨタ社長もダメ出し
                       NEWSポストセブン2021.01.16 
                        週刊ポスト2021年1月29日号
 後手後手に回ったコロナ対策で菅政権が窮地に陥っている。菅義偉・首相は「感染拡大防止と経済の両立」を掲げたが、その対応には、政府のコロナ分科会の経済専門家からも公然と批判が出ている。
 経済学者の小林慶一郎氏(東京財団政策研究所研究主幹)は毎日新聞(1月9日掲載)のインタビューでこう指摘している。
〈勝負の3週間が始まった11月に強い策をやって12月上旬までに感染者が減り、年末年始の催しが一定程度可能となっていれば、経済的な損失も少なかったはずだ。「Go To」を進めることで外食や旅行に進んで行くべきだというメッセージになり、経済活動を活発にさせる流れとなって、人々が感染にあまり注意を払わなくなった側面はあると思う〉
 安倍晋三・前首相のブレーンも菅政権の経済政策に異議ありという。元財務官僚で安倍政権の内閣官房参与を務めた本田悦朗・元駐スイス大使が語る。
「財政資金を使って旅行・外食の需要を喚起するGo Toキャンペーンを実施すると、ほぼ確実に感染が拡大します。需要喚起には国民が移動し、接触するのが普通だからです。そのため安倍政権の閣議決定では、Go Toキャンペーンは感染収束後に実施されるべき政策とされていた。
 感染防止と経済を回すことはトレードオフ(二律背反)の関係にあり、両立を目指す菅政権の政策は不可能を強いるもの。だから“二兎を追う者は一兎をも得ず”になっている。経済を回すには一刻も早く、感染封じ込めを優先する必要があります」
 経済界からは、感染対策の失敗を機に菅政権の「カーボンニュートラル」(*注)などの経済政策にも批判があがり始めた。
【*注/二酸化炭素の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になること。菅政権は2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすると宣言】
 日本自動車工業会会長の豊田章男・トヨタ自動車社長は政府が2030年代にガソリン車の新車販売をなくすことを検討していることに対し、会見(12月17日)で「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と懸念を表明。電気自動車(EV)は製造や発電段階で多くの電力を消費し、火力発電の割合が高い日本ではEV製造がCO2を多く排出すると指摘した上で、「国のエネルギー政策の大変革なしに達成は難しい」と厳しい言い方をした。
 経済界の大立者が首相の政策に真っ向から注文をつけるなど近年なかったことだ。経済ジャーナリスト・福田俊之氏が語る。
「企業の経営トップは重要なことは必ず自ら決断する。しかし、菅首相は感染対策は専門家任せ、景気対策、成長戦略はブレーンの言いなり。企業トップの多くは、リーダーとして決断力に欠け、頼りないと見ている。カーボンニュートラルはそんな菅首相が打ち上げた人気取りのスローガンだが、自動車をはじめ多くの産業にとっては死活問題になる。豊田社長としては、首相がどこまで本気なのかを確かめる狙いもあって、ガツンと言ったのではないか」
 リーダーシップなき首相は経済界にとっても“お荷物”でしかない。