2021年1月22日金曜日

首相の答弁「短すぎる・不誠実」 参院側が政府に申し入れ

 21、代表質問に対する菅首相の答弁が短すぎるとして、水落敏栄・参院議院運営委員長(自民)が政府に首相の丁寧な答弁を求める申し入れを行いました。
 政府の答弁は質問時間と同程度の時間とするのが「今までの慣例」だそうですが、立民党の30分の質問に対して首相の答弁はわずか9分半でした。トータルで、参院での質疑応答は予定より30分も短く、前日の衆院では40分も短く終わりました。
 簡にして要を得た答弁であればむしろ評価されるべきですが、勿論そうではなく野党議員から「もう終わり?」「答えていない」などのヤジが飛ぶもので、立民の福山哲郎幹事長「誠実に答弁する姿勢が微塵も感じられない」と批判しました。
 前日の衆院代表質問でも、立民党の枝野氏が「Go To事業の停止や緊急事態宣言の再発令が後手に回った根拠なき楽観論で対応が遅れた」と指摘したのに対して首相は「根拠なき楽観論で対応が遅れてきたとは考えていない」と反論しましたが、そう考える理由や根拠はなにもしませんでした。
 要するに官房長官時代に、「問題ない」「指摘は当たらない」などの決まり文句で質問をかわしてきたことの再現です。
 官房長官番だった記者たちから「説明能力がない」と評されていた菅氏が、防衛上「編み出した」(というより「舞い戻った」)作戦かも知れませんが、これでは国会の論戦が深まりようがありません。何よりも首相の答弁がそれで済まされる筈がありません。

 東京新聞の参院・衆院での首相答弁に関する2つの記事と北海道新聞の社説「国会代表質問 またも疑問は素通りか」を紹介します。

追記)新潟日報も21日、同様に首相の態度を批判する社説「国会代表質問 現実を謙虚に受け止めよを出しました。興味のあるかたは「緑字部分」をクリックしてご覧になってください。
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首相の答弁「短すぎる」 参院側が政府に申し入れ 所要時間30分を残して散会
                         東京新聞 2021年1月21日
 21日の参院本会議の代表質問で、菅義偉首相の答弁が短すぎるとして、水落敏栄・参院議院運営委員長(自民)が同日、政府に対し、首相の丁寧な答弁を求める申し入れを行った
 申し入れは、自民党の末松信介・参院国対委員長を通じ、岡田直樹官房副長官に伝えられた。岡田氏は記者会見で「丁寧な説明を行うよう政府として対応していきたい」と述べた。
 この日は自民と立憲民主党に30分ずつの質問時間が割り当てられ、首相や閣僚の答弁を含めた本会議の所要時間は2時間が予定されていた。所要時間は質問時間を2倍にして決められ、答弁は質問時間と同程度の時間とするのが「今までの慣例」(水落氏)だ。

◆「誠実に答弁する姿勢なし」
 しかし、立民議員の質問に対する首相の答弁時間はわずか9分半。閣僚と合わせても12分ほどで終わらせた。短い答弁に、野党議員からは「もう終わり?」「答えていない」などのヤジが飛んだ。続く自民議員の質問への答弁も12分ほどで終わり、本会議は予定の所要時間を30分残して散会となった。
 その後、参院議運委理事会で、野党側が首相の答弁を問題視。水落氏も「簡潔すぎる」と苦言を呈した。立民の福山哲郎幹事長は記者団に「誠実に答弁する姿勢がみじんも感じられない。国民に説明を拒否していることと同じだ」と批判した。
 この日の衆院本会議代表質問も、首相答弁が短く、予定より40分ほど早く終わった。(井上峻輔)


「菅氏にキレがなくなった…」 疑問はぐらかし、言い間違いも…首相答弁力に与党不安 衆院代表質問
                         東京新聞 2021年1月21日
 菅義偉首相の施政方針演説に対する20日の衆院本会議での代表質問は、議論が新型コロナウイルス対策に集中した。立憲民主党の枝野幸男代表は、感染拡大を防げなかった「失政」を指摘し経済支援の拡充を訴えた。首相は強気な姿勢を前面に出し、感染の早期収束に向けた決意を表明したが、投げかけられた疑問には正面から答えなかった

◆枝野氏の猛攻に…
 「医療は逼迫というより、もはや崩壊だ」
 枝野氏は質問の冒頭でこう切り出した。首相が観光支援事業「Go To トラベル」の継続など経済活動を重視した結果、感染が爆発的に拡大したと批判し「今後の適切な対応のためにも判断の遅れを認めて反省から始めるべきだ」と強調した。
 対案として、感染の封じ込めを徹底させた後に経済活動を再開させる「zeroコロナ」への政策転換を迫った。医療従事者や大企業を含む労働者へのさらなる経済支援も訴えた。
 これに対し、菅首相は「感染拡大を抑えつつ、雇用や事業を維持する考えに基づいて必要な対策を講じていく」と主張。政府の対応の遅れや判断の誤りは一切認めなかった
 政府・与党が2月初旬の成立を目指す新型コロナ特措法などの改正案を巡っても、意見は食い違った。
 枝野氏は昨年12月上旬の臨時国会終盤に、野党が特措法などの改正案を提出していたと指摘。「1カ月半も国会を開かなかったのはなぜか。この間に審議すれば、改正はとっくに実現していた」と批判した。
 一方、首相は「私権の制約にも関わることから(専門家でつくる政府の)分科会などで慎重な議論が続けられてきた」と説明。臨時国会の閉会についても「会期は国会が決める」と述べるにとどめた。
 枝野氏は本会議後、記者団に「今やらなければいけないことの指摘はできたが、首相は責任を丸投げしたような答弁の繰り返しで、当事者意識を感じられなかった」と語った。
 代表質問の内容は政府側に事前通告されるため、首相は原稿を読み上げる「安全運転」に徹することができた。それでも「セーフティーネット」を「セーフネット」と言うなど、言い間違いが散見された。一問一答形式の予算委員会を控え、自民党には「官房長官の時のようなキレがなくなった」(若手)と答弁を不安視する声が漏れた。(川田篤志、市川千晴)


社説 国会代表質問 またも疑問は素通りか
                                                      北海道新聞 2021/01/21
 国会は各党の代表質問に入り、立憲民主党の枝野幸男代表と逢坂誠二氏は感染拡大が続く新型コロナウイルスへの政府対応を中心に菅義偉首相の見解をただした。
 Go To事業の停止や緊急事態宣言の再発令が後手に回ったとの指摘に、首相は「根拠なき楽観論で対応が遅れてきたとは考えていない」と反論した。
 そう考える理由や根拠は示さずに断言して質問をかわす。相変わらず説明しない首相のかたくなな姿が露骨に表れた
 疑問を素通りして「強力な対策を講じ、何としても感染拡大を食い止めていく決意だ」と主張しても、国民は納得できない。
 感染収束には外出自粛などへの国民の協力が欠かせない。首相の発する言葉への信頼度が対策の成否に直結すると自覚すべきだ。
 首相は緊急事態宣言の再発令について「専門家の意見を聞きながら判断した」と説明した。
 しかし、経済への影響を懸念した首相が慎重姿勢をとり続けた結果、医療崩壊を招き、急に方針転換したのが実態だろう。
 2020年度補正予算案や21年度当初予算案も「感染拡大防止策に十分な予算を確保している」として、組み替えを拒否した。
 枝野氏は補正に停止したGo To事業の追加費用を計上していることについて「ピント外れの極み」と批判した。うなずく人が多いのではないか。
 コロナ特措法を巡り、枝野氏は昨年の臨時国会を延長して改正しなかった責任を追及した。
 首相は「国会の会期は国会が決めること」と決まり文句で答えた。不誠実な態度と言うほかない。
 それにもかかわらず、特措法とともに見直す感染症法に関し「入院を拒否した場合に罰則を設けるなどの改正を行う」と言明した。
 政府の不手際を顧みずに、強権的に従わせるようなやり方は反発を招こう。
 吉川貴盛元農水相の収賄事件で、首相は贈賄側の鶏卵生産大手の元代表と政権との関わりについて「農水省で第三者による検証を始めると承知している」と述べた。
 まるで人ごとだ。安倍晋三内閣の官房長官だった首相は、率先して真相解明に努める責務がある。
 日本学術会議の会員任命を一部拒否した問題も「法令にのっとり適切に判断した。取り消す考えはない」と重ねて強弁した。
 法律違反が明らかで、学問の自由を脅かす重大な事案である。引き続き究明が必要だ。