2021年1月9日土曜日

09- くじ引きで決める首相の方が菅首相よりも立派になるのでは(孫崎享氏)

 元外務省官僚で外交評論家の孫崎享氏が、日刊ゲンダイに定期的に掲載している「日本外交と政治の正体」に「くじ引きで決める首相の方が菅首相よりも立派になるのでは」という記事を出しました。
 まことに大胆な発想で、勿論「お笑い」が秘められていることと思われますが、説得力があります。そうすれば少なくとも菅氏よりはマシな首相になることでしょう。
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日本外交と政治の正体
くじ引きで決める首相の方が菅首相よりも立派になるのでは
                      孫崎享 日刊ゲンダイ 2021/01/08
 日本の司法制度に「裁判員裁判制度」がある。国民から選ばれた裁判員が、裁判官とともに特定の刑事事件の裁判に関与するのだが、この際、首相も、くじ引きで選んで決めたらどうだろうか。
 今の日本の政治状況を見ていると、くじ引きで選んだ首相の方が、菅首相よりも確実にあるべき姿に近い政治ができるのではないかと思う。
 くじ引きであれば、菅首相のように、首相になるため特別にお世話になった党内派閥の領袖らに頭が上がらないということも起きないし、特定の団体に対して利益誘導するような歪んだ政治をする必要もない。
 選挙のために資金集めをする必要も、資金提供者に縛られることもない。今の政権を投票で選んだ有権者の割合は実質2割程度に過ぎないのに、あたかも100%の支持を得たかのように威張ることもないだろう。

 くじ引きで選ばれた首相は、世の中に専門分野で秀でた人がいる、と素直に考える。つまり、専門家の意見を聞くことができる。菅首相のように「俺の見解に反対するやつは許せない」という思い上がりもなく、自分の見解と異なる官僚やメディアを外すためにはどうしたらいいのか、ということも考えない。
 メディアに強い影響力があるわけではないため、メディアは遠慮なく報道できる。
 日本は今、新型コロナウイルスの感染拡大で大変な状況になりつつある。
 新型コロナについてはあまり知られていないが、それでも旅行中の人との接触機会を増やすことが一因というのが共通の知識になっている。昨年12月初旬の読売新聞の世論調査では、「いったん中止」(57%)と「やめる」(20%)を合わせ、8割近くが否定的な見方であったが、菅首相は十分なエビデンスがないとして、「Go Toトラベル」を継続した。
 この政策は多分、間違っているだろう
 なぜ、国民の総意と異なる政権が生まれたのか。なぜ、菅政権はあるべき政策から離反しているのか。
 それは国民が国会議員選挙の時、「この政党に投票したらどういう政策を取るのか」ということを吟味せず、惰性で投票してきたからだ。
 今年は衆議院選挙がある。選挙の時、我々はもっと真剣に、どの政党が重要問題で行動してくれるかを判断するべきだ。

 孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交
採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、
国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場から
証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」
「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。