2021年1月23日土曜日

23- 緊急事態宣言から2週間 首都圏は感染爆発が加速

 日刊ゲンダイが「緊急事態宣言から2週間 首都圏は『全滅』感染爆発が加速」とする記事を出しました。
 首都圏の他7つの府県について、「宣言」発令前の感染者数/日、直近の感染者数/日、増減、宣言解除の指標を対置したもので、一目瞭然です。
 ズルズルと日が経つばかりで、政府が何をしようとしているのかさっぱり分かりません。まごまごしているうちに3月になれば変異種が流行する惧れがあるわけで、とても有事に当たっている政権とは思われません。

 それとは別に、孫崎享氏は、コラム「日本外交と政治の正体」で「自民党は菅首相“切り”に動く…果たしてその契機は何なのか」とする記事を出しました。
 いたずらに長引かせることなく、早急に有事に対応できる政権に変える責任は自民党にあります。
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緊急事態宣言から2週間 首都圏は「全滅」感染爆発が加速
                          日刊ゲンダイ 2021/01/22
 1都3県に緊急事態宣言が発令されてから2週間の折り返し。菅首相は21日の衆院本会議で、新型コロナの感染状況について「全国で高い水準が続き、緊張感を持って対応する必要がある」と焦りをにじませた。人々の行動変容が感染者数に反映されるのは約2週間後。効果が表れるのはこれからとも言えるが、途中経過を検証してみると、不安になる。見逃せない中間データが判明した。
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 宣言期間開始前(先行4都県は今月7日、7府県は13日まで)と、21日までの1週間平均の感染者数を比較したのが<別表>だ。宣言解除はステージ4(爆発的感染拡大)の指標を下回ることが目安とされる。感染者数のステージ4指標は、直近1週間で人口10万人当たり25人。実際の各都府県の人口に換算し、1日平均の感染者数として併記した。例えば、東京はステージ4脱却には、500人を下回る必要がある。

            緊急事態宣言後も人が溢れかえる東京・原宿の竹下通り

宣言発令前と直近の増減とステージ4指標
 首都圏1都3県の中間結果は“全滅”だ。感染者数は発令前より減るどころか、大幅に増え、ステージ4の脱却指標からもかけ離れている。
 昨年末には「Go To トラベル」が全面停止され、「静かな年末年始」が呼び掛けられた。実際、年末年始の人出は減った。その頃の行動が現在に反映されるはずなのに、首都圏の感染爆発は加速したのだ。

■3月以降 変異種流行も
 他の地域もステージ4を脱したのは岐阜と愛知のみ。感染者数が目に見えて減ったのも、4割減の栃木と2割減の愛知くらいだ。他の5府県は横ばいか、微減で、今のところ目覚ましい効果は表れていない。
 医療体制も厳しい状況だ。病床使用率のステージ4の指標は50%だが、20日時点で兵庫は79.5%と最も深刻。東京は4000床確保し、入院患者2839人で使用率は70%。空きがあるように見えても、自宅療養と入院等調整中が1万5000人を超え、実際はパンク状態である。
 西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)は言う。
「まだ2週間なのでもう少し様子を見る必要があります。対策を徹底して感染者を減少に転じさせる県も出てくると思います。ただ、昨年春よりはるかに深刻な状況なのに、前回の宣言よりもかなり緩い規制なので、なかなか効果が表れない面もある。さらに気がかりなのが、ウイルスの変異種です。現在の感染拡大はとくに低温などの環境によるもので、変異種が要因ではありません。英国では変異種の出現判明から、2カ月後に感染者が増えています。日本でも3月以降、感染力が最大17倍とされる変異種が主流になる恐れもあり、一段と感染者数が増えるかもしれません」
 21日静岡の60代女性が英国型の変異種に感染していたことが新たに判明した。緊急事態宣言はズルズル長引きそうだ。

変異種に現行ワクチン効果なし!
「新型コロナ変異種には現行のワクチンが効かない」――海外の研究機関により、こんな衝撃的な報告が相次いでいる。
 米ロックフェラー大が米ファイザー社と米モデルナ社のワクチンについて変異種への効果を検証した結果、南アフリカ型やブラジル型には従来型ウイルスに比べて効果が3分の1に、英国型には半分になったという。
 一方、南アの国家感染症研究所は20日、「南ア型変異種は新型コロナ感染症の抗体から実質的または完全に逃れた」として、現行ワクチンの効果は限定的だと指摘した。
 これでは新たな変異種が出るたびに新たなワクチンが必要となり、まるでイタチごっこだ。


日本外交と政治の正体
自民党は菅首相“切り”に動く  果たしてその契機は何なのか
                      孫崎享 日刊ゲンダイ 2021/01/22
 菅内閣の支持率が急落している。衆議院議員の任期満了は10月21日。それまでに衆議院選挙を行わねばならない。果たして自民党は菅首相で選挙を戦えるのだろうか。
 私が自民党員であれば、その選択はしない。支持率の下降があまりにも急激すぎる。1月の各報道機関の世論調査が発表されたが、ほぼすべての調査で不支持が支持を上回っている上、下落幅が大きい(10ポイント近い下落が相当ある)。安倍前首相の支持率は徐々に下落していったが、菅首相の支持率は、安倍前首相の退陣時に近い状況だ。
 問題は菅首相の支持率が今後、一段と下がるとみられることだ。国民にとって最大の課題は新型コロナウイルスへの対応である。コロナの現状は、感染率(一般的に5%が上下の境とみられ、現在は13%程度)も、新規陽性者における接触歴等不明者割合(6割程度)などの数値をみても当面収束は難しい
 コロナ感染の厳しい状況が続けば経済は低迷し、人々の生活は厳しさが増す。環境に好転は見られない。こうした中で、内閣の不支持が支持率よりも大きい状況が継続すれば、当然、今年のどこかで行われる衆議院選挙への悪影響が出る。
 自民党の下村政調会長は、4月25日投開票予定の衆院北海道2区補選と参院長野選挙区補選で、自民党候補が2敗した場合について触れ、「菅政権にとって大ダメージになる。その後は政局になる可能性もある」との認識を示していた。すでに自民党には「ポスト菅」あるいは「菅降ろし」の動きが出ているという。
 日本の大手マスコミは、政権が強い時にはひたすら政権に隷従する。その代わり、政権が弱くなると一斉に叩く。安倍政権の強みは、菅官房長官、杉田官房副長官の「警察国家的体制」が反対者を容赦なく抑え込んだことだった。だが菅政権には、こうした悪役を実施する人はいない。加藤官房長官の動きを見ると、菅首相とは必ずしも一体ではない。杉田官房副長官にしても、日本学術会議を巡る動きの中、混乱の責任を杉田氏に押し付ける動きを見せられたため、菅政権を必死に支える気持ちはないであろう。
 抑えがない状況で週刊誌は「菅官邸崩壊!」などと書く。政権寄りとみられている読売、日経、産経にも批判的な記事が出始めている。自民党は何を契機に菅首相“切り”に動くのか。菅首相を看板に総選挙を行えば、厳しい選挙結果が待っているのは間違いない。

孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。