2021年1月21日木曜日

首相「コロナ対応の遅れ全くない」と 衆院代表質問に

 施政方針演説などに対する各党代表質問が20日、衆院本会議で始まりました。
 菅首相は新型コロナ感染症への政府の対応について「根拠なき楽観論に立って対応が遅れたとは考えていない」と述べました。立民党の枝野幸男代表「都合の悪い情報を無視、過小評価する『正常性バイアス』という根拠なき楽観論で対応が遅れた」との指摘にえたものですが、この根本的にずれている認識では国民に『不安』と『絶望』が広がるだけです。自分がGo Toを強行した失政を認めず、「専門家の意見を聞きながら判断してきた」と繰り返し強調する態度も見苦しいというしかありませんこんなことでは「感染爆発」は収まりません。
 暗澹たるスタートとなりました。野党は的確に政府を糾していくことで解決に向かわせて欲しいものです。毎日新聞の記事を紹介します。
 日刊ゲンダイが「国民に広がる『不安』と『絶望』 しゃべればしゃべるほど国民感情を逆撫で」とする記事を出しましたので併せて紹介します。
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首相「コロナ対応の遅れ全くない」 枝野氏「根拠なき楽観論」指摘に 衆院代表質問
                                                     毎日新聞 2021年1月20日
 菅義偉首相の施政方針演説など政府4演説に対する各党代表質問が20日、衆院本会議で始まった。首相は新型コロナウイルス感染症への政府の対応について「根拠なき楽観論に立って対応が遅れたとは考えていない」と述べた。立憲民主党の枝野幸男代表への答弁。枝野氏は、首相が「Go Toキャンペーン」にこだわって対応が遅れたと指摘し、「都合の悪い情報を無視、過小評価することを『正常性バイアス』という。根拠なき楽観論で対応が遅れたと言わざるを得ない」と質問していた。
 枝野氏は現状を「感染爆発と呼ばざるを得ない」とし、1月7日の緊急事態宣言発令について「私たちは昨年12月18日には決断すべきだと提案していた。なぜこんなに後手に回っているのか」と追及した。首相は「専門家のご意見もうかがいながら判断してきた」と繰り返し強調し、対応の遅れを真っ向から否定した。

 2020年度第3次補正予算案にGo Toトラベルの延長経費1兆円が含まれていることに関し、枝野氏は「ピント外れの極みだ」と批判し、感染症対策に組み替えるべきだと質問。首相は「雇用や事業の支援に加え、予備費を確保している。組み替えなくても拡大防止に十分だ」と組み替えを否定した。「緊急事態宣言に基づき、強力な対策を講じることで何としても感染拡大を食い止める決意だ」とも語った。
 立憲の逢坂誠二氏は、内閣支持率の下落が続く要因をどう分析するかをただしたが、首相は「国政を預かるものとして、今後もご指摘を謙虚に受け止める」と述べるにとどめた。首相は逢坂氏への答弁で、感染による自宅・宿泊療養者の人数は13日時点で全国で3万8011人に上ると説明。救急搬送の困難事案は前年比で全国で約2・2倍に増加していると説明した。【飼手勇介、畠山嵩】


<悪夢の自民党・菅政権>
国民に広がる「不安」と「絶望」 しゃべればしゃべるほど国民感情を逆撫で
                       日刊ゲンダイ 2021年1月19日
                      (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 一体なにを言っているのか。18日行われた菅首相の施政方針演説。やたらに「安心」と「希望」が強調されていたが、国民は怒り、呆れ、絶望したのではないか。
 深刻化するコロナ禍に対して、どんな手を打ち、どんなメッセージを発するのか注目されたが、最後まで楽観論に終始し、具体策はゼロだった。しかも、相変わらずの棒読みである。
 呆れ返ったのは、この4カ月間、新型コロナウイルスの感染爆発を招いた“戦犯”のくせに、冒頭から「政権を担って4カ月、全力で駆け抜けてまいりました」と自画自賛したことだ。さらにつづけて、「私が、一貫して追い求めてきたものは、国民の皆さんの“安心”そして“希望”です」と、ヌケヌケと言い放った。さすがに野党席からは「対策が後手後手だろう!」「スピード感がない!」とヤジが飛ぶ始末。実際、「Go To」に執着し、「緊急事態宣言」の発令を最後まで嫌がり、国民を不安のドン底に落としながら、よくも「安心」などと口にできたものだ。
 肝心のコロナ対策も、「徹底的な対策を行っております」「一日も早く収束させます」と豪語したが、並んだのは「飲食店への時短要請」「20時以降の外出自粛」など。目新しい対策は全くなかった。
 総理就任後、初の通常国会に臨む施政方針演説が、この程度とはどうしようもない。
「長年、裏方を務めてきた菅首相は、もともと表に出て堂々と話ができるタイプではありません。ただ、それにしても中身がなく、国民の耳目をひくような発言がなかった。コロナ対策を巡っても、明るい将来像を示すような言葉は皆無。いまだに東京五輪について『人類が新型コロナに打ち勝った証しに』と繰り返しているのだからどうかしています。過去、世界で蔓延した感染症を振り返ると、終息に2年はかかっている。本当に『打ち勝った証し』にしたいなら、『2024年以降へのスライド開催が可能か検証する』などと世界中がハッとする発言をするべきでした」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
 さらに、演説の終盤では、唐突に政治の師・梶山静六元官房長官の言葉を紹介。「(国民負担をお願いする政策の)必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない」と言われたことを明かしたが、まったくの意味不明。あまりの唐突さにあっけにとられたのか、議場も静まり返っていた。

国民の思いと「乖離」
 いま国民のなかには、「不安」と「絶望」しか広がっていないのではないか。なにしろ、感染者は連日、過去最多を更新し、医療崩壊は目前である。経済も動かない。これでは「希望」を持てるはずがない。
 恐らく、多くの国民は、菅がしゃべればしゃべるほど、「覚悟が見えない」「説明が足りない」「メッセージが伝わらない」「イライラする」と、感情を逆撫でされているに違いない。それもこれも、国民の思いと、大きく乖離しているからだ。
 国民が望んでいることは、ハッキリしている。先手、先手による徹底したコロナ対策だ。朝日新聞が昨年11~12月に行った世論調査でも、「経済と感染抑制のどちらを優先すべきか」について、感染抑制が69%と経済の26%を大きく上回っている。なのに、菅政権は相変わらず「経済回復」に色気を持ち、コロナ終息との“二兎”を追っているのだから、どうかしている。医療崩壊が迫っているのに、経済を動かせるはずがないだろう。危機に臨むリーダーに求められるのは、正確な現実認識だ。菅は現実が見えていないのではないか。
「経済を回すというのなら、まずは新型コロナの脅威を徹底的に『撲滅』すること。それが早道です。そのためには、科学的な『安全』に加え、国民の『安心』が必要です。専門病棟の造成をはじめとした病床確保はもちろん、国民の『安心』を得るには、幅広いPCR検査の実施も必要でしょう」(五野井郁夫氏=前出)
 ところが、菅政権は補償金が膨らむのを嫌がり、時短要請も緊急事態宣言の拡大にも躊躇している。現実を見ようともせず、ロクに説明もしない。これでは、国民がフラストレーションを強めるのも当然である。

民主党政権の方が危機対応はマシだった
 コロナ禍のような国家的な危機に直面しているのに、トップが菅首相なのは、最悪の巡り合わせだ。
 そもそも自民党政権は、民主党政権の4年間を「悪夢だった」とおとしめているが、この8年間こそ悪夢だったのではないか。
 本来、自民党は、庶民の声をすくい上げ、政策に反映させる政党だった。ところが、第2次安倍政権の誕生後、国民の声に耳を傾けなくなっている。声を聞くどころか、国民に向かって、安倍首相みずから「あんな人たちに負けるわけにはいかない」と敵意をむき出しにする始末だ。
 安倍政治を継承した菅政権が、国民意識と大きく乖離しているのも、国民の声を聞こうとしないからだろう。
 いま振り返ってみると同じ危機対応でも、よほど民主党政権の方が真摯にやっていたのではないか。たしかに、3・11の時の民主党政権の対応も褒められたものじゃなかった。菅直人首相は、メルトダウンした福島原発に乗り込み、東電社員に向かって「ここから撤退するのは認められない」とわめき散らし、現場を混乱させたと非難された。でも、なんとか原発事故を抑え込みたい、という熱意と責任感だけはあった。
 共産党の小池晃書記局長も、最新号の「サンデー毎日」で、<そこは3・11の民主党政権より深刻だ。あの時は僕らも政権批判したが、彼らには受けて立つ構えはあった。記者会見を途中で打ち切るようなことはなかった。それに比べ菅体制の体たらくは正視に堪えない>と語っている。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「安倍首相にしろ、菅首相にしろ、新型コロナウイルスへの無策ぶりは目を覆うばかりです。よくも民主党を悪夢などと誹謗できたものです。3・11は巨大地震が発生したうえ、原発のメルトダウンという未曽有の危機だった。自民党政権でも対応は難しかったでしょう。もちろん、新型コロナウイルスも対応は簡単ではないですが、台湾や韓国は、感染拡大を阻止している。日本の感染拡大が止まらないのは、自民党政権が無策だからです」

社会の土台が破壊された8年間
 この8年間、自民党がやってきたことは、ほとんどトランプ大統領の手法と同じだ。
 トランプ大統領も、オバマ政権の実績をことごとく否定することで、支持基盤を固めてきた。
 さらに、もう一つ同じなのが、外に仮想敵をつくることで求心力を高めてきたことだ。トランプ大統領は、中国を敵視し、アメリカファーストを掲げることで支持者を熱狂させてきた。
 安倍政権も、中国、韓国、北朝鮮を敵視し、危機をあおることで支持者をつなぎ留めてきた。ヒドイのは、それほどの危機でもないのに、支持率が下落すると「北からミサイルが飛んでくる!」と、Jアラートを鳴らして危機を演出してきたことだ。
 しかし、その結末は、日本もアメリカも惨憺たるものだ。どちらも社会が破壊されてしまった
「トランプ政治の4年間は、支持者が議会に乱入し、5人が死亡した一件に凝縮されています。社会が分断され、フェイクニュースが飛び交い、民主政治のルールが破壊されてしまった。日本も同じです。総理大臣が国会で嘘をついても許され、公文書が改ざんされるなど、社会の土台が壊されてしまった。しかも、いざ新型コロナという“本物の危機”に直面した時、安倍首相も菅首相も、なにひとつ対策を打てない。やりたい放題やってきた、この8年間で危機対応力も衰えたのでしょう。完全に化けの皮がはがれた形です」(五十嵐仁氏=前出)

 自民党政権は、民主党政権をコキ下ろしていれば、自分たちの無能を隠せると計算していたのだろう。しかし、とっくに国民は、自民党政権ではこの国難には対応できないと見抜いている。無能政権を代えないと、コロナ禍は拡大する一方だ。