2021年1月14日木曜日

医療が受けられない 医療緊急事態 神奈川県の例

 日本医師会の中川会長は13日、「このままコロナの感染が拡大すると、医療崩壊から医療壊滅になってしまう」と危機感を表し、「人は一生に一度戦争を体験するというが、今がまさに有事の時だ」と述べ、特に若者に対して徹底した感染防止対策を行うよう呼びかけました。

 11月ごろから、コロナ感染者がこれ以上増えれば「医療が崩壊する」という警告を医師会側は出しましたが、政府は聞く耳を持ちませんでした。その結果引き起こされたのが現状の感染爆発です。中川会長が直接国民に訴えたのは、政府に要求しても無駄だからと思ったかのように見えます。
 厚労省に新型コロナ感染症対策を助言する専門家組織は13日、国内各地の感染状況を分析する会合を開き、「通常であれば受けられる医療を受けられない事態が生じ始めている」との分析結果をまとめました。
 医療崩壊は既に起きています。東京新聞が神奈川県の例を報じました。
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医療受けられない事態発生 前週比2万人増と専門家
                          東京新聞 2021年1月13日
 政府が緊急事態宣言の対象地域拡大を決定するのを前に、厚生労働省に新型コロナウイルス感染症対策を助言する専門家組織は13日、国内各地の感染状況を分析する会合を開き、保健所や医療機関の職員が相当疲弊していて「通常であれば受けられる医療を受けられない事態が生じ始めている」との分析結果をまとめた。
 直近の1週間に報告された新たな感染者数は約4万5千人。その前の1週間より約2万人増えており、年明け以降、増加のペースが上がっている
 首都圏だけでなく中京圏、関西圏、北関東、九州でも感染者が急増。首都圏の感染拡大の影響で隣接する栃木で特に感染者が増えている。(共同通信)

<新型コロナ>
「異常事態が起きている」 入院病床が限られ、肺炎患者も自宅で酸素吸入 神奈川
                          東京新聞 2021年1月13日
 新型コロナウイルス感染者が急増し、神奈川県内でも医療体制にほころびが見えつつある。特に患者が多い横浜市や川崎市でコロナ患者の治療に当たる医師らからは「もう既に入院できる病床は限られる状況」「あり得なかった異常事態が起きている。とにかく今は人に会うことを避けてほしい」とし、人との接触を減らすよう訴えている。 (石原真樹、安藤恭子)
 「救急隊員が一一九番した患者を家に置いて帰るという、これまであり得なかった異常事態が起きている」。こう明かすのは、県立循環器呼吸器病センター(横浜市金沢区)でコロナ患者の治療に当たる丹羽崇医師。
 丹羽医師によると、県庁や保健所から来ていたコロナ患者の受け入れ要請が、年明けに救急隊から直接来るようになったという。同病院の中等症用の病床三十三床は昨年十二月からほぼ満床が続いていた。今は一日七、八件の救急隊からの要請をほとんど断らざるを得ないという。

 救急車を呼ぶ患者は軽症が多いとしつつ「安心の医療インフラである救急車が今まで通りに使えなくなっていることを知ってほしい」と訴える。「守るべき家族、パートナーにうつさないために、第三者に会わないようにすることがとても大事」と強調する。
 主に重症のコロナ患者を受け入れてきた聖マリアンナ医科大病院(川崎市宮前区)はこれまで病床数を徐々に増やしてきたが、昨年末からは満床で受け入れを断らざるを得ない日があるという。
 十二日朝の段階でコロナ入院患者は三十一人。大坪毅人病院長は「比較的患者の少ない小児用のコロナ病床と医療スタッフも成人用に転じてきたが、この三連休は綱渡りだった」と振り返る。
 受け入れられなかった患者の中には別の入院先が見つからず、肺炎の症状に自宅での酸素吸入を余儀なくされるケースがあるという。同病院では医療人員確保のため、命に別条のないコロナ以外の手術について延期し、75%程度に抑制する対応もとった。
 峯下昌道副院長(呼吸器内科)は「患者の症状悪化は日々の感染発表に遅れてやってくる。仮に一週間後に重症者が倍増したとして、もう既に入院できる病床は限られる状況。感染予防は自らの命に関わる問題と思ってほしい」と訴えた。

<新型コロナ>
救急隊の悲痛な要請 「17件目です」にも満床で応えられない… 神奈川の医師が語る緊急事態の現実
                          東京新聞 2021年1月13日
 新型コロナウイルス患者用の病床が逼迫し、自宅療養中に病状が悪化して救急車を呼んでも入院できない状況になっている-。7日に緊急事態宣言が再発令される中、神奈川県立循環器呼吸器病センター(横浜市金沢区)でコロナ患者の治療にあたる丹羽崇医師は現場の状況をこう訴え、「今は人に会わないで」と呼びかけている。詳しいやりとりは以下の通り。(石原真樹)

◆患者が苦しくて119番
―循環器呼吸器病センターの状況は。
 新型コロナウイルス感染症の中等症患者を受け入れていて病床が33床ありますが、昨年12月に入ったあたりからほぼ満床に近い状況が続いています。それまで保健所や県庁を経由して病院に患者が割り振られていたのが、正月明けごろからダイレクトに救急隊から病院に連絡がくるようになり、緊急事態宣言前の1月6、7日あたりから急増しました。
 県も一生懸命、自宅療養している人をケアするチームを増強したが、患者が増えすぎて、保健所も県もすべての患者さんを管理しきれなくなった。それまで、いざとなったらコロナ119番に連絡してくださいと県は言っていたのが、そこがつながらなくなり、患者さんが苦しいからと通常の119番を呼ぶようになったと思います。

◆救急車、家の前で1時間半動けず
―満床の状況で病院としてどう対応するのか。
 朝から晩までひっきりなし、救急隊から1日7、8件連絡がきますが、そのほとんどを断らなければいけなくなっています。救急隊から「貴院で17件目です」「ずっと断られて」と悲痛な声で入電しても、満床では受けたくても物理的に受けられない。
 救急隊は運ぶ先がなくなってしまっているので、呼ばれた家の前に救急車が1時間半横付けされた状態で電話をかけ続ける状態が起きている。そうすると、入院基準を満たす可能性が低い患者さんは「置いて帰る」ことになり、実際にそれが起きている。不安だからと救急車を呼んでも、家で療養するしかない。入院できなくなっているのです。
 そういう患者さんは、症状としては軽症の方が多い。とはいえ、日本の救急医療は今まで安心安全をモットーに、裾野を広く誰でも受け入れるようにという精神で構築されてきました。
 しんどかったら救急車を呼べば、病院を必ず探してくれて、必ずそこに運んでくれる。それが、今までとは違う異常事態になっている。すぐそばの安心の医療インフラである救急車が今までどおりに使えなくなっているのです。日本の救急医療の世界ではあり得なかったことが起きているということをみなさんに知って欲しい。

◆ウイルスは時と場所と人を選ばない
―新型コロナウイルスに対する正しい知識とは。
 コロナに感染しない人間がいる、と思っていることがまず間違い。ウイルスは人を選びません。年齢も性別も人種も選びません。必ず誰でもかかります。ウイルスは時間も場所も選びません。午後8時までに家に帰ったからといってかからないわけではない。
 飲食店に行かないからといってかからないわけではない。確実に言えることは、ウイルスは時と場所と人を選ばず、絶対に「人から人」にうつります。人と会ったら一定の確率でうつるのです。マスクをする目的は、社会全体として人にうつしにくくしましょう、というだけ。でも、うつります。
 医療従事者は、清潔領域と不潔領域を分けて診療します。病棟も清潔ゾーンと汚染ゾーンに分け、汚染ゾーンに入ったときは絶対に自分の体にウイルスが入らないように手袋の付け方などいろんなことを気にしてやる。でも日常生活の中でゾーンを分けることは事実上不可能です。
 いつどこでうつるかわからないけれど、絶対に「人から」ですから、とにかく第三者と会うのを避けるということがとても大事。守るべき家族、大切なパートナーにうつさないようにするために。

◆今がぎりぎり
 このウイルスはすごく狡猾で、症状が出ない若い人がウイルスを運び、ある一定の確率で家族に感染し、その中で年齢が高い人ほど高い確率でロシアンルーレット的に重症化して、その中で命を確実に奪っていく。
 命を奪う確率は低くて、命を奪うか奪わないかのぎりぎりのところで集中治療の病床を埋める。だから人類、日本社会が構築してきた人間関係や、社会の医療インフラをすごく巧妙に狡猾にじわじわと奪っていくウイルスなのです。それと共存せざるをえない。
 ただ、対策をちゃんとすれば減る。第三者と会えば必ず一定の確率でうつると自覚して、行動を自粛すれば、社会全体の感染者数は減り、もとの救急医療に戻ります。今、医療のキャパシティを超える寸前のところで、一番に保健所と救急隊が悲鳴を上げています。今がぎりぎり。ここでみんなぐっとこらえないと、自分たちに跳ね返ってくると意識してほしい。

<新型コロナ>
自宅療養の患者1カ月で57倍に 病床がひっ迫、男性の死亡で引き継ぎミスも 神奈川県
                         東京新聞 2021年1月13日
 神奈川県によると、自宅で療養している新型コロナ患者は十一日時点で四千六百四十三人で、一カ月前の五・七倍に増えた。病床だけでなく宿泊療養施設も逼迫(ひっぱく)し、入所基準を厳格にしたためだ。自宅療養は家庭内感染や急変時の対応遅れのリスクがつきまとう。県医療危機対策本部室の本間健志担当課長は「県庁内では『いつ問題が起きてもおかしくない』との声が出ている」と話すが、宿泊療養施設を増やすのは容易でなく対応に頭を悩ませている。
 同じ期間で入院者数は一・九倍、宿泊療養者数は一・八倍に増えているが、自宅療養者の増加ぶりが際立っている
 確保済みの宿泊療養施設は、限界まで部屋を使っても約九百室で、六割が埋まっている。以前は施設に入るかどうか保健師の判断に委ねていたが、先月中旬以降は「同居する人に高齢者や持病のある人、妊娠している人、免疫抑制剤を服用中の人がいる場合」などに限り、入所する人を絞り込み、その結果、自宅療養者が増えている
 自宅療養者が増えれば家庭内感染が増え、安否確認する職員の負担は確実に増える。自宅療養中の男性が六日に死亡した事例では、対応が遅れた一因に内部での引き継ぎミスがあった。体調確認の方法など療養者への対応を効率化できないか見直しを進めている。
 宿泊療養施設の確保を急ぐが通路やエレベーターが複数あるなど感染防止の設備要件を満たすホテルは少ないという。

◆重症者用病床も「ステージ4」 県内利用率50%超える
 県内の新型コロナウイルスの感染状況を表す七つの指標のうち重症者用の病床利用率が十一日時点で初めて50%を超え、全体の病床利用率を除く六つの指標が最も深刻な「ステージ4」(爆発的感染拡大)の基準になった。
 重症者用病床は同日時点で百二床が埋まり、利用率は51%。軽症などを含む全病床のうち八百二十九床が埋まり、利用率は43%になった。全体の病床利用率も「ステージ4」の基準50%に近づいている
 すぐに使える「即応病床」で見ると、重症用は六床、軽症・中等症用は八十四床しか空いていない。黒岩祐治知事は「新型コロナ患者を受け入れていない病院も、新たに受け入れられるようにしたい。国に財政措置を要望した」と話した。(志村彰太)