2021年1月27日水曜日

首相答弁 反省なく国民に届かぬ / 棒読み・紋切り型

 国会は衆院予算委員会で本格的な論戦に入りましたが、一問一答の質疑でも、菅首相の木で鼻をくくったような答弁はなにも変わりませんでした。
 北海道新聞が社説「予算委首相答弁 反省なく国民に届かぬ」を掲げました。
 そもそも自分の非は認めず、コロナ対策の無策と遅れについても何の反省も見せず、全てを専門委員会のせいにしています。崩壊状態にある医療体制の立て直しについて問われても、十分な予算措置を講じている繰り返すだけです。
 野党がコロナ特措法の改正感染が一段落している段階で行っておくべきだったと追及しても、緊急事態宣言を昨年末に出さなかった経緯を繰り返し説明するという有様で、何を聞かれているのか理解していないように見えます。
 西浦教授らによってGo Toトラベルがコロナ感染を拡大させたことが証明され、年度内のGo To再開の可能性はゼロにもかかわらず、1兆円余りの予備費をコロナ対策費に充てることについては、「しかるべき時期の再開に備えて計上した」と述べて拒否しました。何らの合理的な説明ができなくても、一度決めたことは破綻が明らかになっても絶対に変えないという頑迷さにはほとほと呆れます。これでは30%前半まで堕ちた支持率が持ち直すどころかさらに落ち込むことでしょう。

 東京新聞の記事「『全集中の呼吸』はどこへ? 首相答弁は棒読み、淡々、抑揚なし」を併せて紹介します。「『全集中の呼吸』で答弁する」とは、人気マンガ「鬼滅の刃」から首相自身が引いてきた言葉です。
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社説 予算委首相答弁 反省なく国民に届かぬ
                           北海道新聞 2021/01/26
 国会は衆院予算委員会で本格的な論戦に入った。
 立憲民主党は新型コロナウイルス対策が後手に回り、感染急拡大を招いた政府の責任を追及した。
 だが、一問一答の質疑でも、菅義偉首相の木で鼻をくくったような答弁はなんら変わらなかった
 Go To事業見直しなどが遅れ、緊急事態宣言の再発令に追い込まれた反省がまるで見えない
 崩壊状態にある医療体制の立て直しも、十分な予算措置を講じていると素っ気なく繰り返すだけだった。
 感染対策の失敗で内閣支持率が落ち込む中、従来方針を繰り返すばかりの首相答弁に覇気が感じられない。これで国民の命と暮らしを守れるのか。不安が膨らむ。
 首相は、感染拡大で一時停止しているGo To事業の追加費用を盛り込んだ本年度第3次補正予算案の組み替えを重ねて拒否した。
 「しかるべき時期の再開に備えて計上した」と説明したが、補正予算を執行する3月末までに再開できる見通しが立つのか疑問だ。
 宣言再発令で住民に外出自粛を要請しながら、旅行や外食を奨励する事業の推進を図るのでは、国民に危機感が伝わらない
 Go To事業見直しや緊急事態宣言が遅れた理由をただされると「専門家の意見を聞いて判断した」と同じ答弁でかわし続けた
 コロナ特措法の改正に至っては、感染が一段落しているうちに実現すべきだったと追及されたのに、緊急事態宣言を昨年末に出さなかった経緯を何度も説明した。
 はぐらかすどころか、何を聞かれているのかさえ理解していないのではないかとの疑念が湧く。
 首相に答弁が求められながら、コロナ対策を担当する田村憲久厚生労働相や西村康稔経済再生担当相が答える場面も目立った。自信なさげに説明を委ねる姿は国民に頼りなげに映ったのではないか。
 立憲民主党は、症状が改善した重症者の移転先がないことが医療現場の逼迫(ひっぱく)を招いているとして、大学病院や国立病院と民間医療機関との連携などを求めた。
 ところが、首相はコロナ患者を受け入れる医療機関への支援金を設けたと説明するだけだった
 金銭的な支援だけでは医療体制を拡充できない。感染拡大地域で医師や看護師を確保し、人工呼吸器などを効果的に運用できる仕組みを構築する必要がある。
 国民の命が脅かされる危機的状況にあっては、野党の主張でも受け入れる柔軟さが求められよう。


「全集中の呼吸」はどこへ? 首相答弁は棒読み、淡々、抑揚なし 
                         東京新聞 2021年1月26日
 菅義偉首相は25日の衆院予算委員会で、昨年11月25日以来となる野党との1問1答形式の論戦に臨んだ。この2カ月の間に、新型コロナの感染が爆発的に拡大。政府の対応には「後手」との批判が付きまとっており、首相にとっては自らの言葉で国民に説明し、理解と協力を呼びかける機会でもあったが、自身の会食問題などを追及されて防戦を強いられる場面も目立った。官房長官時代に「鉄壁」と評された答弁スタイルに対しては、与党からも淡泊で国民に届かないとの評価が漏れ、この日も迫力を欠いた。(村上一樹、井上峻輔)


◆野党との1対1論戦にも必死さなし
 「『全集中の呼吸で答弁』という言葉は一体、どこに行ったのか」
 立憲民主党の江田憲司氏は、昨年11月の臨時国会で首相が人気漫画「鬼滅の刃」の主人公のせりふを引用し、論戦への決意を示したことに触れて質問。「全くそうなっていない。メモの棒読み、紋切り型答弁だ」と指摘した。
 首相は、これまで多用してきた「ご指摘は当たらない」「答弁は控える」といった言葉を避けつつも、江田氏の指摘には「私なりに受け止めさせていただいている」と言葉少なに返しただけだった。野党との1対1の論戦で必死さは見せなかった。

◆小学生の声にも淡々
 野党は質疑で、コロナ関連法の改正をはじめとした政府のコロナ対応を集中的に取り上げた。江田氏は、野党が昨年の臨時国会に新型コロナ特措法改正案などを提出したのに、政府・与党が審議に応じず閉会させたと指摘し「政府は改正もせずに何をやっていたのか」と追及した。
 立民の岡本章子氏は首相の会食問題に関連し、ある小学校6年生の思いを紹介。「コロナで思い出づくりの行事がなくなり、給食の時も黙って食べなくてはいけない。一生懸命、我慢しているのに、大人はどうして楽しくご飯を食べていいのか」と読み上げ、首相にメッセージを求めた。
 首相は江田氏の追及に「9月16日の就任から1日も休まず対策をしていた」と反論したが、この2カ月間の対応には言及しなかった。会食問題では「大変申し訳ない思いでいっぱいだ。安心して過ごせる日常を取り戻すことができるように頑張っていきたい」と語ったが、淡々とした口調で言葉に抑揚はなかった。

◆自民党議員も「首相の答弁にはパンチが無い」
 法改正や変異種を巡る答弁も素っ気なかった。立民の今井雅人氏は法改正を「もう少し早くやれば良かったという気持ちはないか」とただしたが、首相は昨年12月の段階では「専門家の中でも意見が分かれていた」と釈明。国内で感染が確認された変異種について、今井氏が日本に入らないよう厳しい水際の対応を求めたのに対し、首相は「そのようにする」と一言しか答弁せず自席に戻った。
 21日の参院本会議で行われた各党代表質問では、首相の答弁が短すぎだとして、参院側が丁寧な答弁を求める異例の申し入れを政府に行ったばかり。自民党の中堅議員は言う。「首相の答弁には全くパンチがない。パンチが効いていないと、耳に入ってこない