2021年1月9日土曜日

菅政権のコロナ対応に見られる中小企業淘汰の冷酷非情

 コロナを「感染爆発」の状況まで悪化させたのは菅首相です。経済を回すには何よりも早い段階で感染を抑え込む必要があったのですが、何の感染防止策を打ち出すこともなく「Go To」を推進した結果、いまや全国規模の感染拡大になりました。
 7日に、遅れに遅れて緊急事態宣言を出しましたが、火の勢いが強すぎて感染を抑え込むのにどれだけの時間がかかるのか見当もつきません。1ヵ月で収まるようなものでは決してありません。
 緊急事態宣言によって廃業・倒産の危機に晒されるのは飲食業だけではありません。そこと連動している業界は勿論のこと、このさき中小・零細企業ははさらに危機に晒されます。
 個人事業主は「雇用調整助成金」では救えないので、事業を継続させるためには2度目の「持続化給付金」「家賃支援給付金」の実施が必要ですが、菅首相はその当然の支援策を打ち切るというのです。何故そんなことができるのでしょうか。

 LITERAは、その背景には首相の兼ねてからの目論見である“中小企業の淘汰”を、この緊急事態を利用して達成させようという狙いがあるとしています。
 この“中小企業の淘汰”は菅首相が心酔しているブレーンであるデービッド・アトキンソン氏(ゴールドマン・サックス証券の元アナリスト)が従前から唱えているもので、「人口減少の観点からして、小規模事業者の中でも慢性的な赤字企業はただの寄生虫ですから、退場してもらったほうがいい」と、20年5月にも「プレジデント」で述べています。
 菅首相はこうしたアトキンソン氏の考えを政策に反映させ、現に、閣議決定された第3次補正予算案のなかの中小企業の支援策には「事業転換が条件」と記されています。
 そんな事業転換が容易にできるようであれば何の苦労もありません。ましてやコロナ禍という異常事態の中で体力のない中小企業に出来る筈がありません。
 別掲の「世に倦む日々」は菅首相の「無能さ」を取り上げましたが、LITERAはいわば菅首相の「冷酷非情さ(=恐るべき人間性)」に焦点を当てています。
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菅首相 緊急事態宣言の記者会見で露呈したヤバさ 支援策打ち切りを隠し、結婚式の祝辞のような締め台詞
                             LITERA 2021.01.08
 首都圏の1都3県に昨日7日、再発出された緊急事態宣言だが、前回とは比較にならない感染爆発状態にあるというのに、時短営業や外出自粛が「午後8時以降」と限定的であることなどから、「これで感染者数が減るのかと考えているのか」と早くもその効果を疑問視する声が殺到している。
 当然の反応だろう。実際、菅義偉首相は昨晩の会見で、数値目標を掲げることも期間を1カ月とした説得力ある根拠も語らず、「1カ月後には必ず事態を改善させる」「とにかく1カ月で何としても感染拡大防止をしたい」などと言うだけ。一方、記者から「仮に延長となった場合は1カ月程度になるのか」と質問された際には、「仮定のことについては私からは答えは控えさせていただきたい」と逃げたが、ようするに菅首相は1カ月後の想定さえしていないのである。
 しかも、この会見の冒頭発言の最後、菅首相はなんと「私からの挨拶とさせていただきます」と締めくくったのである。菅首相のポンコツぶりは本サイトでは何度も指摘していることではあるが、いくらなんでも、緊急事態宣言を説明する会見で、こんな結婚式の来賓のようなこんなセリフが出てくること自体、切迫感がないことの証明だろう。
 だが、菅首相の問題は記者会見のひどさや感染防止対策への関心のなさだけではない。緊急事態宣言の発出でさらに苦境に立たされる人びとへの支援策についても、まったく考えていないのだ。
 今回、政府は時短営業をおこなった事業者に対する給付金の増額、今年2月末までとなっている「雇用調整助成金」特例措置の延長と大企業の助成率を最大75%から100%への引き上げをおこなうというが、いまのところ打ち出されている追加の支援策はたったのこれだけ
 そればかりか、緊急事態宣言を発出したというのに、企業倒産を防ぐための「持続化給付金」や「家賃支援給付金」は、予定どおり1月15日で申請期限を終了させ、延長しないというのだ。
 実際、昨日の会見で記者から「持続化給付金の第二弾は考えているのか」という質問が飛んだが、菅首相は「雇用調整助成金」の話にすり替え、そのほかの支援策は「検討していきたい」と語るのみで、「持続化給付金」の第二弾の実施という質問には何も答えなかった。

「持続化給付金」「家賃支援給付金」の打ち切りで零細企業を淘汰するのが狙い
 緊急事態宣言の発出によって、今後、中小・零細はさらに危機に晒されるのが必至なのはもちろんのこと、個人事業主は「雇用調整助成金」では救えない。菅首相は会見で「雇用を守って事業を継続していただくことが大事」と語っていたが、事業を継続させようというのなら2度目の「持続化給付金」「家賃支援給付金」の実施によって支えることが必要なのは言うまでもない。しかし、菅首相は緊急事態宣言を発出しながら、その当然の支援策を打ち切るというのである。
 言っておくが、いまの「感染爆発」まで状況を悪化させた張本人は菅首相だ。事実、東京都の実効再生産数は「Go Toトラベル」の対象に東京が追加となった昨年10月初旬から、感染が拡大に向かう「1」を再び上回りはじめた。しかも、早い段階で感染を抑え込んだほうが経済への打撃も軽くなるというのに感染防止策を打ち出すこともなく、むしろ「Go To」を推進させ、いまや感染拡大は全国規模となっている。
 さらに、緊急事態宣言の再発出が叫ばれていた最中の先月12月15日に閣議決定した第3次補正予算案では、菅首相は「Go Toトラベル」「Go Toイート」「Go To商店街」に追加で計1兆856億円も計上。第3次補正予算案の総額は73.6兆円だが、喫緊の最重要課題である病床の確保をはじめとする医療提供体制の強化や検査体制の充実といった「新型コロナ拡大防止策」に充てられたのは、たったの6兆円だった。
 そして、遅れに遅れて緊急事態宣言を再発出したことで感染を抑え込むのに時間がかかるのは目に見えており、中小・零細、個人事業主の打撃は計り知れないものになるというのに、この期に及んでその支援策を打ち切ろうとは──。
 だが、これはたんに支援をケチっているというだけの話ではない。むしろ、菅首相はこの緊急事態を利用して、自身の目論見を達成させようとしているのだろう。その目論見とは、“中小企業の淘汰”だ。

“ブレーン”アトキンソン氏の「中小企業は消えてもらうしかない」を実行する菅首相
 実際、菅首相が心酔しているブレーンである小西美術工藝社社長であるデービッド・アトキンソン氏は、以前から“中小企業の淘汰”を唱え、こう主張してきた。
「人口減少の観点からして、小規模事業者の中でも中堅企業にはならない、なろうとしない、慢性的な赤字企業はただの寄生虫ですから、退場してもらったほうがいい
「中小企業は、小さいこと自体が問題。ですから、中小企業を成長させたり再編したりして、器を大きくすることをまず考えるべきです。それができない中小企業は、どうすべきか。誤解を恐れずに言うと、消えてもらうしかありません」(「プレジデント」2020年5月29日号)
 雇用を守ることを最優先すべきこのコロナ禍にあって「ただの寄生虫」「消えてもらうしかない」と言い切ることには背筋が凍るが、恐ろしいことに、菅首相はこうしたアトキンソン氏の考えを政策に反映させ、実行に移そうとしている。現に、閣議決定された第3次補正予算案のなかの中小企業の支援策は、事業転換が条件わざわざ〈淘汰を目的とするものではない〉と記しているが、体力がないなかでの事業転換は容易なものではなく、〈人材やノウハウの乏しい中小が取り残される懸念がある〉という指摘も出ている(毎日新聞2020年12月9日付)。
 この国を緊急事態まで追い込んだだけではなく、手厚い「公助」が必要となる緊急事態でも「自助」を国民に迫り、さらには火事場泥棒のように目標を達成させようとする──。これは安倍晋三・前首相をも上回る冷血さと言わざるを得ないだろう。

 新型コロナ感染拡大による医療の崩壊のみならず、経済面でもこのままでは多くの人びとがこの男に殺されかねない。すでに「持続化給付金」「家賃支援給付金」の打ち切りに対しては野党から批判があがっているが、安倍前首相に一律現金給付を実行させたときのように、再び国民がさらなる支援を求めて声をあげ、菅首相に言うことを聞かせるしかない。(編集部)