2021年1月31日日曜日

自民党本部職員は全員PCR検査/生活保護受給者には事前に許可を取れと

 自民党が党本部勤務の全職員200人を対象にPCR検査を実施するとの報道にネット上では「すぐに検査できない人もいるのに」「一般市民は頭にくる」などの声が相次ぎ、「上級国民の集まりか」がツイッターのトレンド上位に入りました。
 積極的PCR検査を受けること自体はいいことなのですが、政府が何時まで経っても検査を拡大しない中で、与党の本部勤務の職員が大々的に受けることに対して、多くの人たちが何となく釈然としない気持ちでいることの反映と思われます。まあ与党に繋がっていることへのトバッチリとでも思ってもらうしかありません。
 折しも田中龍作ジャーナルが、「『生活保護受給者は事前に許可を取れ、さもなくば自腹』埼玉で」とする記事を出しました。
 埼玉県ふじみ野市在住の生活保護受給者の8歳の長女が高熱を出し、近所の発熱外来を受診したところ医師が「PCR検査を受けますか」と言うので検査を受けたところ、4日後に同市の福祉課から電話が入り、「次回からPCR検査を受ける場合は事前に許可を取ってくれ。さもなくば自腹になる可能性がある」と告げたということです。
 生活保護を受けようとする人たちを役所は徹底的に妨害するだけでなく、こうした受給者を見下すような態度を取ります。日本では「上級国民」には検察司法も一目置く一方で、弱者に対しては平然とこうした人権無視的対応をすることがあります。
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なぜ「自民党本部全職員PCR検査」は大ブーイングを浴びたのか
                          毎日新聞 2021年1月30日
 自民党が党本部勤務の全職員を対象にPCR検査を実施するとの報道に批判が噴出した。ネット上では「すぐに検査できない人もいるのに」「一般市民は頭にくる」などの声が相次ぎ、「上級国民の集まりか」がツイッターのトレンド上位に入った。職場での積極的な検査自体はいいことなのに、なぜ自民党は集中砲火を浴びるのか。【大場伸也/政治部、大迫麻記子/統合デジタル取材センター】

またもや相次ぐ「上級国民」批判
 自民党は29日、党本部に勤務する全職員約200人を対象にPCR検査を実施することを決めた。これが報道されると、ツイッターには「自分たちだけ積極的なPCR検査」「体調不良でもなかなか検査してもらえない一般市民は頭にくる」「国民には自粛を求めて自分らは銀座で遅くまで会食、陽性者が一人出たら全員検査。身内大事にするのも大概にしろ!」などの批判が数多く投稿された。
 また「さすが上級国民。全国民が気軽にPCR検査ができる体制を望んでいます。自分たちだけですか?」「上級国民はやっぱり扱いが違うなあ……」といった批判も相次いだ。「上級国民」とは2019年に起きた東京・池袋の乗用車暴走事故で、旧通産省工業技術院長が逮捕されなかったことをきっかけに広く使われるようになった言葉だ。
 1月22日に感染が判明した石原伸晃元幹事長が無症状なのに即入院した直後にも同じような批判が相次いでいた。
 野党の政治家からは検査態勢の拡充を求める声が上がっている。立憲民主党の泉健太政調会長は「自民党総裁は、党職員へのPCR検査の重要性を認識しているならば、医療・介護従事者、せめて無症状患者となりやすい若年の医療・介護従事者には、PCR検査を公費で実施すべき」だとツイート。同党の原口一博元総務相も「全ての人にPCR検査が無料で受けられる体制を作るべき。自民党職員は全員PCR検査が受けられるのに、生活保護受給者が抑制圧力を受けるなどあってはならない」と投稿した。

議員への不信が党への不信に
 なぜ自民党は今回、党本部職員全員のPCR検査をすることになったのか。
 党本部の所属国会議員に対する説明によると、党組織運動本部の20代の男性職員が新型コロナウイルスに感染、28日に陽性が判明した。職員は保健所の指示に従って自宅療養している。この職員は直近の1週間に国会や議員会館への出入りはしておらず、党本部内にも濃厚接触者はいないものの、翌週までに党本部の全職員を対象に検査をすることにしたという。
 職場での積極的な感染拡大防止策といえるが、なぜ、ここまで批判が高まったのか。
 「党職員の検査は本来批判されることではありません。議員の問題行動と同一視されて不信感を持たれてしまったのではないでしょうか」と、政治評論家の有馬晴海さんは指摘する。「国民に夜の飲食の自粛などを求めながら、菅義偉首相が8人で不急の会食をしたり、自民党の松本純前国対委員長代理が深夜に銀座のクラブに行ったりと、脇の甘い行動が国民の反感を買って党への不信につながっています。新型コロナ対策の特別措置法が改正されれば国民に一層の負担を求めることになる。与党は『李下(りか)に冠を正さず』で、一層慎重に行動することが求められます」


【PCR検査】
「生活保護受給者は事前に許可を取れ、さもなくば自腹」埼玉で
                     田中龍作ジャーナル 2021年1月29日
    【写真説明】ふじみ野市が福祉事務所長名で市内の医療機関に出した通達。生活保
          護に詳しい弁護士は通達の文言に驚く。=市内の医師より入手=
 ある生活保護受給者(埼玉県ふじみ野市在住・男性)の8歳の長女が38度5分の高熱を出し、近所の発熱外来を受診した。
 医師が「PCR検査を受けますか」と言うので検査を受けた。今月14日のことだ。
 それから4日後の18日にふじみ野市役所の福祉課から男性の携帯に電話が掛かってきた。
 福祉課は男性の長女がPCR検査を受けたことを確認すると「次回からPCR検査を受ける場合は事前に(福祉課の)許可を取ってくれ。さもなくば自腹になる可能性がある」と告げた。
 ふじみ野市役所は14日、福祉事務所長名で市内の医療機関に対して「生活保護受給者がPCR検査を実施する場合は、必ず福祉課までご連絡下さい」との通達を出している。
 生活保護受給家庭の子供のPCR検査を実施した病院が、通達に沿い福祉課に連絡したのである。男性は「自腹というのを聞き、すっかり萎縮してしまった」と力なく語った。
 
 知人のベテラン医師(60代)は「人道問題だ」と言って驚きを隠さない。
    【写真説明】通達を見た医師は怒りに手が震えた。「生活保護受給者への差別
          だ」。=ふじみ野市の医師より入手=
 生活保護問題に長年取り組んできた弁護士は、次のように指摘した―
 「生活保護受給者は栄養摂取が満足でなく免疫力が低下しているため、ウイルスに感染しやすい。(なのに)自腹という恫喝でPCR検査を抑制させようとしている」。
 医師が必要と判断すればPCR検査(※)は無料だ。生活保護受給者だけが自腹というのは憲法25条の精神を踏みにじるに等しい。
 
 前出のベテラン医師は「コロナ感染を抑制するためにも、生活保護受給者が受診を自粛するような指導は厳に慎むべきだ」と怒りを抑えきれない様子で語った。
 厚労省のスタンスは、生活保護受給者のPCR検査は問題ない、だ。
 同省生活保護課の医療係は田中の電話取材に「医師が必要と認めた場合は保険適用となるので(生活保護受給者のPCR検査は)問題ない」との見解を示した。
 ふじみ野市福祉課は田中の問い合わせに「医療扶助を出すべきかどうかを把握するためにも事前に連絡を頂きたい」と答えた。
 この国の最高権力者は「最後は生活保護がある」と言い放った。だが現場では生活保護受給者が見捨てられようとしている。
                 ~終わり~