2021年1月23日土曜日

廃絶へ新たなスタート 核兵器禁止条約が発効

 核兵器の保有や使用、使用の威嚇などを包括的に禁じる核兵器禁止条約が22日に発効しました。核兵器は国際法の下で初めて違法となります

 この日、日本や米国、欧州をはじめ世界各地155カ所で発効を祝うデモやオンライン集会が計画されていました。
 日本は唯一の戦争被爆国であり、その惨禍を世界に伝える責任を負っているにもかかわらず、米国の核の傘に入っていることを口実に条約に参加していません。大変残念なことです。
 せめてオブザーバー参加が求められている第1回締約国会議(条約の発効から1年以内に開催)には、出席して欲しいものです。

 しんぶん赤旗日曜版に、ノーベル平和賞を受賞したICAN事務局長ベアトリス・フィンさんのインタビュー記事が載りました。
 彼女は、史上初めて国際法が「核兵器は違法だ」と規定したことにより、核兵器に賛成する全ての国は永久に国際法違反国の側に立つことになるとして、日本も米国もその立場から逃れられないと強調しました。
 そして日本は唯一の戦争被爆国として核兵器の惨禍を世界に伝える特別の責任があるにもかかわらず、日本が毎年、国連総会に提出する核問題の決議案が年々悪い内容になっているのは深刻な問題であると指摘しています。

 湯沢町議会は12月の定例議会で、「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める意見書の提出に関する請願」を8対2で採択し、12月16日に意見書を国に提出しました。
 審議に当たり「請願」の紹介議員を務めた佐藤守正議員が、核兵器禁止条約の持つ意義を 欺瞞的な核兵器不拡散条約(NPT)と対比して分かりやすく説きました。
 格調高い全文は既に「通信平和の輪」のPDF版で紹介しましたが、この際改めてテキスト版で紹介します。
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核禁条約 きょう発効 世界各地で行動を計画
                       しんぶん赤旗 2021年1月22日
【ワシントン=池田晋】核兵器の保有や使用、使用の威嚇などを包括的に禁じる核兵器禁止条約が22日に発効し、核兵器は国際法の下で初めて違法となります
 核保有国や、日本をはじめ核の傘に入る国は、条約に加盟していません。しかし、条約の法的な規範力と、市民社会や条約加盟国から核保有国とその同盟国への圧力は強まります。今年8月に開催が再延期された核不拡散条約(NPT)再検討会議の場でも禁止条約が争点の一つとなります。
 国際NGOの連合体・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)によると、日本や米国、欧州をはじめ世界各地155カ所で発効を祝うデモやオンライン集会が計画されています。
 トランプ米前政権が条約成立後も批准国に撤回を迫るなど、米ロ英仏中は条約敵視の先頭に立ってきましたが、現在の条約への署名は86、批准は51カ国にのぼります。第1回締約国会議は、条約の発効から1年以内に開催されることとなっており、条約を推進してきたオーストリアが首都ウィーンでの開催を目指しています。


廃絶へ新たなスタート 核兵器禁止条約が発効 
 史上初めて国際法で違法に 日米とも逃げられません
     ノーベル平和賞のICAN事務局長 ベアトリス・フィンさん
                  しんぶん赤旗日曜版 2021年1月24日号
   史上初めて核兵器を違法化し、「悪の烙印」を押す核兵器禁止条約が22日ついに
発効します。2017年の同条約の国連会議での採択に貢献し、ノーベル平和賞を受賞
したICAN(核兵器廃絶キャンペーン)のベアトリス・フィン事務局長に条約発効の
意義などを聞きました。           坂口明記者
       Beatrice Finn = 1982年、スウェーデン生まれ。婦人国際平和自由連
               盟(WILPF)などを経て、2013年からICANで活動。
               14年から同事務局長。

 核兵器禁止条約は、広島・長崎への原爆投下から75年続けられてきた被爆者の活動や長年の核兵塵屍絶運動など、さまざまな活動が結実L)だものです。条約が発効しても、核をめぐる状況が一夜で変わるわけではありません。しかし、これによって史上初めて、国際法が「核兵器は違法だ」と規定したのです。
 核兵器保有国が受ける圧力は今後、時間の経過につれて増大するでしょう。日本など、核兵器を承認する核依存国も同様の圧力を受けます。核兵器に賛成する全ての国は永久に国際法違反国の側に立つことになります。
 多くの人々にとって国際法は、あまり身近なものではありません。それでも国連憲章、ジュネープ条約、生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約、地雷禁止条約などを振り返れば、これらの条約が各国の行動を縛っていることが分かります。それらは条約未参加の国の行動をも縛っています。
 核兵器が史上初めて違法化される今は、本当に歴史的な瞬間です。核廃絶に向けた新たな局面の出発点です。

国々の力関係が変わった
 国連安全保障理事会の常任理事国5カ国(P5)は全て核保有国であり、核兵器禁止条約を認めていません。禁止条約発効により、P5が国際法に従わないという信じがたい状況が生まれます
 これまではP5のような大きな力を持つ大国がルール(規則、国際法)を作るのが、国際社会の伝統的な在り方でした。しかし今は、それがひっくり返り、世界の多数派の国々が核兵器禁止条約のようなルールを定める時代になっています。この条約は、世界の力関係の変化を象徴的に示しています。
 世界は今、コロナ禍という地球規模の大災害に直面していますこれが示すのは、人類が今日と将来に直面する危機は、パンデミック(感染症の世界的大流行)、気候変動、資源紛争など、米ソ冷戦よりもっと複雑な危機だということです。そこでは核兵器は何の役にも立ちません。
 今日の世界では核兵器に膨大な資金が投資されています。しかし、それによって人々は守られていません。人々は兵器使用の威嚇によってではなく、お互いを気遣うことによって守られています。今、私たちに必要なのは核兵器ではなく、より多くの医師、看護師、医療・介護従事者です。
 今こそ真の安全保障とは何かを考え直す好機です。パンデミックが示すのは、国境を超えて協力しあう必要性です。ウイルスも気候変動も国境を超えて影響を及ぼします。今では、これらこそ国の安全保障の問題です。それらは一国だけでは解決できません。
 私たちが直面する、これらの複雑な安全保障の危機は、兵器と無関係です。時代遅れの冷戦思考に頼っていては今日の脅威に対処できません。兵器に巨費を投資し、他国を威嚇する「冷戦」の手法は、もう通用しません。

絶望に陥った核保有国
 米国は昨年10月、核兵器禁止条約を批准した国に、批准の撤回を求める書簡を送りました。国際法の専門家に尋ねたところ、自国が気に入らない条約を批准した他国に、その撤回を求めるという攻撃的行為は前例がないそうです。それは禁止条約をめぐり核保有国が、どれほど絶望的になっているかを示七ています。この要求を真に受けた国は皆無でした。禁止条約は効いているのです。
 フランス政府代表は国連の会議でP5を代表して発言し、「P5は禁止条約に拘束されない。同条約が慣習国際法の発展に貢献するとか、新たな国際規範を樹立するとの主張を受け入れない」と述べました。禁止条約の批准国は51で、署名国は86です。慣習国際法としてはまだ不十分です。しかし、それと国際規範の確立は別問題です。
 国際規範を作るのは外交官ではなく、世界の諸国民です。禁止条約の批准国は今後ますます増えます。条約を支持する都市、国会議員、文化人も増えています。今、「核兵器は違法だ」という新たな国際規範が台頭しつつあるのです。禁止条約に賛成していない国も今後、立場を変えると私は確信しています。
 核兵器保有国は9力国だけで、180以上の国は持っていません。気候変動は生活の全てが関係しますが、核問題は気候変動より解決しやすい課題です。

日本には特別責任が
 核不拡散条約(NPT)は核軍縮・廃絶を各国に義務づけています。2010年のNPT再検討会議は「核への依存を減らす」と合意しました。ところが米国の「核の傘」の強化を求める日本はこのNPTの義務、合意を実行せず、その土台を掘り崩しています。
 日本が毎年、国連総会に提出する核問題の決議案は、ますます悪い内容になっています。これは深刻な問題です。
 日本国民は核兵器の被害を世界で最もよく理解し、それを世界に伝える特別の責任があります。日本政府が国民の意思を代表していないことを私たちは知っています。
 「禁止条約に賛成しないなら投票しない」と政治家に迫ってください。
 北大西洋条鰐機構(NATO)加盟国でも禁止条約をめぐって新たな動きが出ており、今年は連の国で選挙があります。日本でも新たな進展があることを期待しています。
       (スイス・ジュネープ勤務の同氏にスカイプで取材)


佐藤守正議員(請願の紹介議員)の賛成討論(全文)
20年12月16日 湯沢町議会「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める意見書の提出に関する請願」の審議における)

 核兵器禁止条約の批准国が規程の50カ国を超え、明けの1月22日に同条約が発効する事になります。
 核兵器が国際法によって禁止されるのです。核兵器はもはや道義的に許されないだけでなく、法的に許されないものになります。核兵器を非難しその廃絶を主張する法的根拠が与えられるのです。
 核兵器禁止条約は核の廃絶を直ちに求める条約、核廃絶条約ではありません。核兵器を所有する国々がこの条約に参加していないのですから,核兵器廃絶を定めても意味のない事は分かり切っています。
 なので、そのためにまず核兵器を違法なものとして使用を禁止する国際法を確立し国際世論で核を全廃する道筋を作るを目的とした条約です。
 核兵器に関してはすでに核兵器不拡散条約(NPT)があります。これは既に核兵器を所有していた5カ国(米英仏ロ中)の核保有を認める一方、核不拡散の名目で,それ以外の国の核保有を禁止するいわば不平等条約でした。その不平等に不満を持つ国々の主張で,核保有国には「核軍備縮小を誠実に交渉する事」を同条約の中に義務づけたのでした。
 しかし、核保有国はこの条約を無視して、核戦力を強化しています。これでは何時までたっても「核なき世界」は実現しない。そこで各国の市民運動と連帯して核を持だない国々が始めだのが核兵器禁止条約を先行させるという取り組みでした
 核兵器は他の通常兵器とは異なり、大国がその特権的な地位を維持するために必要な、いわば戦略的兵器です。禁止条約の発効は、世界の市民運動が多数の小さな国々と協力して、こうした大国の戦略を縛る国際的な規範を作り上げたと言う点で画期的です。まさに大国がリードしてきた世界支配に対する市民運動と小国の挑戦と言ってもいいと思います。
 この運動の中で各国の市民運動が果たした役割は大きなものがありました。市民運動に後押しされてこの条約の批准に参加した国が沢山あります。アメリカの核の傘の下にいる国々がこの条約に参加する事が今求められているのですが、調べてみると前向きな動きが始まっている事が解ります。
 例えばNATO加盟国のベルギー。ここはアメリカの核兵器が置かれているのですが、今年の10月、下院外務委員会が自国領内からの核兵器撤去と核兵器禁止条約への加盟を求める動議を可決しています。この動議は国の方針としてはまだ承認されていませんが、NATO加盟国の中でこのような変化が生まれる意義は小さくはありません。
 また,同じNATO加盟国のドイツ。メルケル政権で連立を組むドイツ社会民主党は来年の選挙で、アメリカと核を共有することからの離脱を公約にすると言っています。こういう変化を支えるのはドイツの世論です。核禁止条約への参加を66%が支持し、反対はわずか12%なのです。
 問題は日本です。目下の最大の焦点は唯一の戦争被爆国である日本です。日本は最低でも、間もなく開かれる条約参加の国々の締約国会議に,オブザーバーで参加すべきです。核爆弾の洗礼を受けた唯一の国として、その会議に参加する事が当然、それが被爆国としての当然の任務だと世界から見られています。世論の力で政府をその気にさせたいと思います。この請願もその手だての一つです。
 湯沢町は非核平和都市宣言をした町です。その町の任務として、核兵器禁止条約への参加の世論を盛り上げる事に尽力しなければならないと思います。