2021年1月25日月曜日

厚労省 非正規労働者を生活困窮者扱い、雇用保険を否定

 立民党の山井和則議員によれば、緊急事態宣言のせいで「男女含めて120万人くらいが構造的に無収入になって」いるということです。

 田中龍作ジャーナルが、外食産業など大手企業のシフト制労働者に休業手当が支払われていない問題で、厚労省が、企業と行政の怠慢により受け取るべき手当を受け取ることができない非正規労働者に向かって「福祉に行け」と言った問題を取り上げました。
 22日と24日の田中龍作ジャーナルの記事を紹介します。
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厚労省が暴言 非正規労働者を生活困窮者扱い、雇用保険を否定
                    田中龍作ジャーナル 2021年1月22日
    【写真説明】山井和則議員。「男女含めて120万人くらいが構造的に無収入にな
          ってるんですよ。政府の要請である緊急事態宣言のせいで」。=22
          日、参院会館 撮影:田中龍作=
 外食産業など大手企業のシフト制労働者に休業手当が支払われていない問題-
 きょう22日、開かれた立憲民主党の厚労部会で、厚労省から雇用保険制度を否定する仰天発言が飛び出した。
 いきさつはこうだ―
 きょうの厚労部会には外食大手で働くシフト労働者(1児の母)が出席していた。
 彼女が勤務する会社にはパートやアルバイトが7,800人いる。正社員には休業手当が支払われているが、非正規の7,800人には支払われていない。
 彼女が務める大手飲食会社のケースは、あくまでも氷山の一角である。野村総研の推計によるとコロナで仕事が激減したにもかかわらず、休業手当なしの非正規労働者は90万人(女性のみ)にのぼる
 にもかかわらず、休業手当の支給実績はあまりに低い。大量の非正規労働者の生き死にを左右するまでになっている。
    【写真説明】厚労省は「休業手当」を「休業支援金」とすり替えるなどした。問題
         を煙に巻こうとする姿勢がありありだった。=22日、参院会館 撮影
         :田中龍作=
 厚労部会に出席した議員は「企業がきちんと払うところまで責任をもってやって頂けるのか?」と厚労省を追及した。
 厚労省は「必ず支払うとかは、そこは企業のご判断で」などと無責任な答弁をした。
 立憲厚労部会の石橋みちひろ副部会長は「(非正規労働者を)見捨てるのか」と詰め寄った。
 それに対して出たのが厚労省の仰天発言だった。「生活がお困りの方につきましては生活困窮者に対する支援の窓口もございますので、そちらのほうを訪れて…」と言い放ったのだ。
 自らも非正規労働者だった経験を持つ女性議員は「生活困窮者と言われて傷つきますよ」と声をあげた。
 雇用調整助成金(休業手当)の原資は雇用保険だ。コロナ禍を受けての対策であり、非正規、パート、アルバイトといったすべての被雇用者が対象となる。多くは雇用保険に入っており、休業手当を受け取る権利があるのだ。
 厚労省の暴言は、企業と行政の怠慢により受け取るべき手当を受け取ることができない非正規労働者に向かって「福祉に行け」と言ったに等しい
 厚労省は雇用問題を福祉で片付けようというのだろうか。だとすれば職務放棄である。
                 ~終わり~


会社がシフト制の非正規労働者に休業手当を払わないカラクリ教えます
                    田中龍作ジャーナル 2021年1月24日
    【写真説明】大手飲食チェーンで働くシフト制非正規労働者は「手当が出るよう
          に何とかしてほしい」と訴えた。=21日、参院会館 撮影:田中
          龍作=
 大手飲食業界を支えるシフト制の非正規労働者。緊急事態宣言下、お上の要請による時短営業のため、勤務が激減した。
 企業は正規労働者には休業手当を支給するが、シフト制の非正規労働者は対象外だ。生活が成り立たなくなるまでに収入が減った。
 これでは生きてゆけない。去る21日、大手飲食チェーン店で働く非正規労働者のユニオンが厚労省と交渉を持った。
 とんかつ、かつ丼大手チェーン店に勤めるシフト制の非正規労働者(男性40代)は、コロナ前の手取り収入は月25万円あった。
 だが前回の緊急事態宣言が出た去年4月ごろからシフトカットが始まり、収入は半分以下になった。シフトカットはもちろん今も続く
 男性は「企業名を公表するなどの罰則を課してほしい」と訴えた。
 厚労省は「シフト労働者であっても勤務実績に基づいて労働日数が設定されていれば、雇用調整助成金(休業手当)の対象となる」と答えた。
 ところが大手企業はそんなに甘くない。ごくたまに大体の勤務日数が設定されていても「勤務日数は変動がある」と契約書に一筆添えられているのだ。
 会社の責任で休業させた場合の補償を定めた労基法26条に該当しない。
    【写真説明】自民党の大臣経験者が掛け合っても、厚労省は、中小企業対象の「休
          業支援金」を大手のシフト制非正規労働者に充てるのは難しい、と答
          えたという。=21日、参院会館 撮影:田中龍作=
 シフト制労働は雇用の調整弁なのだ。それも究極の調整弁である。
 最初から勤務を入れないのだから「仕事から外した」などと責められなくても済む。「派遣切り」でもない。企業が手放すはずがないのだ。
 もう一つ。大手企業がシフト労働者の権利をここで認めてしまえば、コロナ後も同様に対応しなければならなくなる。
 財務省にも“事情“がある。雇用調整助成金を活用する休業手当を、財務省は使わせたくない。雇用調整助成金の財源は雇用保険だ。その雇用保険がパンク寸前なのだ。
 ならば、中小企業の労働者を対象にした「休業支援金制度」を大企業にも適用すべきだ・・・・と野党は主張しているが、政府の反応はすこぶる鈍い。昨年9月から言い続けているのだが、進展は見られない。
 大手外食産業を支えてきたシフト制労働者は、見捨てられたままとなるのか。
                  ~終わり~