2021年1月9日土曜日

「突破されてゆく菅義偉の防衛ライン ~ 五輪中止へ」(世に倦む日々)

 ブログ「世に倦む日々」が「突破されてゆく菅義偉の防衛ライン ~ 五輪中止へ」とする記事を出しました。

 7日の緊急事態宣言が如何に遅すぎたか、そこに盛られた対策が如何に不十分なものであるかを明らかにし、尾身・分科会長も同罪だとしています。「世に倦む日々」は第1波のときから分科会のあり方を痛烈に批判して来ました。
 コロナを甘く見て経済を回すことしか頭になかった菅首相が、いまや燃え盛る火を前にしてなすすべを知らないというのが客観的な状況なのですが、当人にはまだその自覚がないように思われます。言うこと為すことすべてが的を外しています。
 当人は東京五輪の開催と成功が 乾坤一擲・起死回生の策と考えているのでしょうが、その芽を自ら摘んでいることに気が付かないようです。この時期に少なくとも首都圏が感染爆発に向かっているのですから、普通に考えて開催は無理やりたくてもできる環境ではなく、菅政権は五輪中止の決断に追い込まれた時点で方向性と推進力を失って自滅自壊の道を辿るとしています一体どこまで無能なのでしょうか。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
突破されてゆく菅義偉の防衛ライン - 全国終日休業へ、定額給付金へ、五輪中止へ
                          世に倦む日々 2021-01-07
ようやく緊急事態宣言が発出される段となった。だが、明らかに時すでに遅しだし、飲食だけにフォーカスした、夜間だけに限定した抑制策では効果が出ないのは明白だ。私は11月中旬の時点から4月と同じ緊急事態宣言(=日本型ロックダウン)の措置をせよと言ってきたが、実際の進行はそこからGo To是非の道草論議に入り、延々と1か月以上、菅義偉とネオリベ右翼に粘らせる無駄な政局を続けてきた。飲食がコロナ感染の元兇となっていたのは11月以前の疫学的事実であり、12月に入ってからは飲食以外の場所や機会でも市中感染が広がっている。現在の感染爆発の段階では、飲食の空間だけを封鎖しても対策の意味はない。また、1都3県の首都圏だけを対策しても感染は収まらない。春と同様、すべての人流を半強制的に止める必要があり、いずれその方向へ対象拡大するに違いない。茨城・栃木・群馬も範囲に含めざるを得ないし、愛知・大阪・兵庫等にも地域が広がり、全国が適用対象になるだろう。空間だけでなく時間も同様で、午後8時以降だけを規制すれば済む話ではない。限定戦略は即頓挫する。

6日の東京都の新規感染者数は2447人となった。全国の感染者数は7000人を超えるだろう。この数は、欧州諸国の1日の感染者数と並ぶレベルである。来週には、日本の1日の感染者数は1万人を突破することが確実で、ニュースとなって世界から注目を浴びるだろう。日本の対策は無能で不真面目で話にならない。まず指摘し糾弾しなければならないのは、忖度技官の尾身茂の無様と失態である。尾身茂は12月9日の時点で何と言っていたか。国会での答弁で「国として緊急事態宣言を出すステージかというと、まだそういうところに至っていない」と述べている。その後も、何度も会見の度に記者から緊急事態宣言について質問を受けたが、必要性を否定するコメントを発し続けてきた。12月25日、今から2週間前のクリスマスの会見では、「緊急事態宣言を出すとか出さないとか(の前に)、やるべきこと(がある)」と言い、小池百合子に午後8時の時短要請を出すよう求める発言をしていた。菅義偉に寄り添い、小池百合子に責任を押し被せる菅義偉の姑息で卑劣な政治手法に援護射撃していた政治家の道具になって役割を果たしていた

このとき、巷ではすでに死屍累々の惨事が起きていたのである。病院に収容されないまま自宅や路上で122人がコロナで死亡し、うち56人が12月に命を落としていた。この警察発表は昨日1月6日になって初めて報道され、われわれを震撼させたが、この事実が政府分科会に情報として入ってなかったはずがない。要するに、発熱して受診しPCR検査で陽性になっても、入院調整がつかず自宅にとどめられたまま、そこで重症化して患者が次々と絶命していたのだ。同じく初めて大きく伝えられた情報だが、東京都では5日時点で入院調整中の感染者数が3083人に上り、自宅療養中の感染者数が4480人もいて、約7000人が病院で治療を受けられないまま自宅で待機させられていた。この数は、5日時点の入院患者数3025人の2倍以上である。毎日1000人を超える新規陽性者が増えているが、彼らは病院に入れず自宅に止まるしかない。そして、重症化して呼吸困難になっても救急搬送されないまま死を迎えさせられてしまう。そうやって56人が12月に死んだ。その状況を知りながら、尾身茂は、まだ緊急事態宣言を出す段階ではないと言っていたのだ

今になって急に、緊急事態宣言を発しても1か月で下火にできるとは保証できないなどと言い、解除は3月4月になるなどと言っている。呆れ果てる。これでも専門家か。日本の感染症対策のトップか。なぜこれほど最悪の事態になる前に、早く手を打とうとしなかったのか。指標は明確に緊急事態宣言を出すべきステージに達していたのに、尾身茂はそれを無視して楽観的かつ消極的態度に徹し、菅義偉の判断と主張にお墨付きを与えていた

ふざけているとしか言いようがない。12月、日本医師会長の中川俊男は悲鳴を上げていた。東京都医師会長の尾﨑治夫や日本病院会会長の相澤孝夫は、ずっと緊急事態宣言(=より厳しい措置:ロックダウン)を求めていた。年明けの後、急に分科会の中で変化が生じ、ステージ3になるまで緊急事態宣言を続けるべきだとか、飲食店の規制だけでなく県境をまたぐ移動の自粛が必要だと言い始めた。感染者数の波が高くなったら、それを抑えて沈静化するのに時間がかかるということは、感染症の専門家が最もよく理解していることではないか。12月初に緊急事態宣言を発して人流を止めていれば、東京アラートを出して自粛運動を高揚させていれば、クリスマスや忘年会の外出と宴会もなかっただろうし、初詣での密集密着もなかっただろう。3週間ほどで収束に向かわせ、年明けにはステージ2のレベルに落ち着いていただろう。経済活動を平常に再開させる条件を得ていただろう。12月初の段階では東京都の1日の感染者数は500人で、現在の4分の1の山の高さである。だが、この頃のテレビは、ホテルや飲食店の声を前面に出して、Go To政策の正当化ばかりやっていた

飲食店については、現段階では時短ではなく休業が必要だ。そのための補償をどうするかはテクニカルな問題であり、小林慶一郎や野党の政策担当者が算盤をはじいて具体的に提案すればいい。ブログで言えることは、時短では感染者抑制の効き目がなく、いずれ全面休業要請になるだろうという予測と確信である。コロナは時間を選ばないのだから。飲食店だけでなく、イベントは当然のこと、飲食以外の小売店も休業を余儀なくされ、ロンドンのロックダウンと同じ状況になるだろう。順番にそうした進行になり、否応なく経済活動を縮小させて行くだろう。今回の緊急事態宣言は、泥縄的で、後ろ向きで、不承不承、嫌々ながら消極的に踏み出すもので、政府側に事態の重大さが何も分かっておらず、当初策定の対策内容ではとても現状の厳しい禍難に対処できないものだ。本当は、果断に強力に厳重に都市封鎖した方が効果があるのであり、短期に目標を達成できるのであって、中国方式こそが感染症対策の基本なのだが、今の日本にはそれができない。「ウィズコロナ」の誤った路線と方針があり、資本の論理が先行するため、後手後手の、無責任でドタバタの、無駄に時間と財政資金をかける愚策になる。

先月の記事で、Go Toの政局の後は緊急事態宣言の政局になるだろうと見通しを述べた。Go Toでも菅義偉は押し切られて負けるだろうし、緊急事態宣言でも抵抗しきれずに寄り切られるだろうと予想した。相手はコロナだから勝てないのだと断言した。頭の悪い菅義偉は、まだコロナの脅威と勢いを理解できず、独り相撲の茶番劇を演じている。医療体制を崩壊させ、国民に犠牲を押しつけている。今後の展開を考えよう。ひとまず、緊急事態宣言の政局は菅義偉の完敗で決着した。次は、限定戦略の破綻であり、宣言措置の空間的時間的拡大である。1都3県から全国へ、飲食店だけでなく小売店とイベントの全面規制へ。午後8時まででなく終日規制へ。このとき、菅義偉と自民党は、五輪中止に繋がるスポーツ試合の無観客化に抵抗するだろう。が、大相撲初場所で感染者が出る等のアクシデントが発生して、またしても無駄な悪あがきの再現になるだろう。措置の時間的空間的拡大は、必然的に補償金額の追加増大となり、行き着くところ、定額給付金の再拠出という問題が浮上する。ここでまた一悶着の政局が起きるだろう。麻生太郎と菅義偉にとって定額給付金阻止は「絶対国防圏」の防衛ラインである。公明党が再び動くかどうかは不明だが、ここもまた攻防の末に突破されるだろうと予想する。

その次か同時に起きるのは学校休業の問題で、2月頃になるだろうが、ここも突破されるに違いない。コロナは学校にも忖度しない。学校でクラスターが頻発すると思われる。これらの事態と悶着の進行に付随して、菅内閣の支持率はどんどん下がる。1月は12月から5-10ポイント下がり、不支持率が大幅に上がり、菅義偉を擁護するマスコミの声は小さくなるだろう。2月の支持率は30%を切る線に落ちるかもしれない。ドタバタしつつ各問題の攻防を経て、3月に入ると、いよいよ東京五輪の開催可否が正念場になる。ここが菅政権にとっての「本土決戦」と「国体護持」の局面だが、やはりコロナに突破されるだろう。IOCと菅政権は開催を断固死守する構えだけれど、世界と日本の3月4月の感染状況は依然として修羅の地獄で、したがって昨年同様、各国の選手と個々の競技種目団体が異議を唱え始め、それが次第に燎原の炎となって各国五輪委の総意となり、IOCを衝き動かす次第になるだろう。普通に考えて開催は無理だ。やりたくてもできる環境ではない五輪中止の決断に追い込まれた時点で、菅政権は方向性と推進力を失って自滅自壊の道を辿る。コロナは無能な政権に忖度しない。「平和の祭典」と欺瞞された聖なる資本の祭典にも忖度しない。ただ自然科学的な法則性に則って、ヒトの空間に自己を増殖させて行くだけだ。