2021年1月2日土曜日

仏記者が酷評「菅首相は本当の記者会見をしたことがない」

 日本駐在歴23仏リベラシオン紙のカリン西村記者が、日刊ゲンダイのインタビューに応じました。

 彼女は菅首相の記者会見のあり方を手厳しく批判するとともに、記者側にも問題があると指摘しました。
 首相会見では、不十分な回答に対しての再質問が禁じられていたそうです。これは驚くべきことです。そういえば官房長官時代の記者会見でまさにそれで、記者の質問に対して不十分過ぎる回答が行われても。常にそれで済まされてきました。これは極めて異様な情景でそれが常態であってはどうしようもありません。
 メディアは大いに反省しインタビューでカリンさんが提案した方法を早速取り入れるべきです。

                 お知らせ
     都合により3日と4日は記事の更新が出来ません。ご了承ください
          ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
仏記者が酷評「菅首相は本当の記者会見をしたことがない」
                          日刊ゲンダイ 2020/12/29
 菅政権発足から100日超。25日には3回目の首相会見を実施したが、これまでの会見は海外メディアには、どう映っているのか――。日本駐在歴23年、仏リベラシオン紙のカリン西村記者(50)に聞いた。
                               ◇  ◇  ◇
 ――首相会見をどう見ていますか。
 8年近くの官房長官時代、菅氏は文書を読み上げ、即答できない質問には官僚がメモを渡していた。総理になっても同じ。本当の記者会見をしたことがないのだなと思います。

 ――会見と呼べるものではない、と。
 自分の言葉で語っていません。記者が事前に質問を伝えて、官僚が作った回答の原稿を読み上げているだけです。それを記者は一生懸命、カチャカチャとタイピングする。ならば、原稿を配ればいい。厳しい質問には少し自分の言葉で切り出すが、後はメモを読むのみ。安倍前首相よりひどいと思う。

 ――フランスのトップの会見はどうなのですか。
 大統領は数多く会見をしているわけではありません。一方的に話をすることも時々あります。しかし、大統領の会見は多いときには200人超の記者が参加し、事前の質問通告はなく、メモを読み上げることもない。挙手する記者全員の質問が尽きるまで、自分の言葉で答えます。それは、政治家の仕事の一部なのです。

再質問禁止は報道の自由の侵害
 ――首相会見では、不十分な回答に対しての再質問ができない。25日の会見でも、記者の再質問を司会が止めていた
 本当にうんざりしています。真正面から答えない側の逃げ得を許すことになる。記者の「知る権利」を閉ざすもので、再質問禁止は報道の自由を侵害しています。ただ、記者側にも問題があります。

 ――といいますと。
 首相の答えが不十分だった場合、次の記者が突っ込めばいいちゃんと答えるまで、記者が繰り返し問えば、逃げられない。記者も準備通りの質問に終始し、アドリブがない。首相も記者も台本通りという印象です。

 ――報じ方にも問題がありますか。
 一番印象に残っているのは、私が別室で音声のみ傍聴した2回目のグループインタビューです。日本学術会議問題が主題でしたが、菅首相は10回以上、繰り返し事前に用意したメモを読みました。質問に窮して、答えられなかったのです。異様な光景でした。この場面が最大のハイライトなのに、ほとんどのメディアは、発言内容を伝えるだけで、首相の困惑ぶりを報じなかった

 ――まっとうな会見にするためには何が必要ですか。
 棒読みで済ませられる菅首相は楽ですよ。首相に自分の言葉で語らせる会見にするには、メディアが不満を持ち、もっと求めないといけません。事前に質問を伝えることをやめ、再質問も要求する。メディア次第で仏大統領のような会見は日本でもできるはずです。
  (聞き手=生田修平/日刊ゲンダイ)

カリン西村 1970年、フランス・ブルゴーニュ生まれ。パリ第8大卒業後、ラジオ、テレビ局を経て、97年に来日。AFP通信東京特派員を15年間務め、今年から仏リベラシオン紙、ラジオフランスの特派員。日本社会についてのエッセー多数。