2021年1月20日水曜日

20- バイデンが選んだビクトリア・ヌーランドを議会は承認するのか(マスコミに載らない海外記事)

 バイデン政権の国務次官ビクトリア・ヌーランドです。
 ヒラリー・クリントンとも親しいヌーランドは、「血塗られた」と形容される人物で、オバマ政権の国務次官補であった14年、現地で打合せした直後にウクライナでクーデターが引き起こされました。
 そのとき広場にいた群衆は労働組合ビル内に逃げ込むなどしましたが、暴徒は建物にも放火して虐殺を続けました。それはネオ・ナチ極右翼勢力など凶悪なメンバーを揃えて投入した、民衆を巻き込んだ凄惨なクーデターでした。
 その後の内戦で少なくとも13,000人死亡し、資源に恵まれ豊かだったウクライナはいまやヨーロッパ最貧国になりました。

 記事中で「50億ドル・クーデター」となっているのは、米国が5000億円を投じて準備したクーデターという意味です。
   ⇒18年8月4日)米国はどれだけの国を侵略し、または政権を転覆してきたのか
    (14年3月19日)ウクライナ・クリミア問題 ロシアは何も悪くない

 そんな女性を敢えてバイデンは国務次官に選んだのでした。政権の性格を占う上で注目すべきことです。
 「マスコミに載らない海外記事」を紹介します。
 長文の記事のため、著者3人の名前と彼らについての説明を省略しました。詳しくは
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2021/01/post-ed25ef.html(訳文)を参照ください。 
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上院はクーデター計画者ビクトリア・ヌーランドを承認するのだろうか?
                マスコミに載らない海外記事 2021年1月19日
       メディア・ベンジャミン他 Common Dreams 2021年1月14日
 ヌーランドは、オバマ二期目の外交を損なったのと同様、バイデンの善意を妨害するのを待ちながら、国務省でカチカチ時を刻む時限爆弾なのだ。
 ビクトリア・ヌーランドとは一体何者だろう?アメリカ商業メディアの外交政策報道は不毛地帯なので、ほとんどのアメリカ人は、彼女について一度も聞いたことがない。バイデン次期大統領が国務次官( 政治担当)に選んだ人物が、1950年代のアメリカ-ロシア冷戦政治や、NATO拡大継続や、極端な軍備競争や、ロシアの更なる包囲の夢という泥沼にはまりこんでいるのを、大半のアメリカ人は知らない。
 2003年-2005年、米軍によるイラク占領中、ヌーランドがブッシュ政権のダース・ベイダー、ディック・チェイニーの外交政策顧問だったこともアメリカ国民は知らない。
 だが、ウクライナ国民は、ネオコン・ヌーランドについて聞いたことがあるのは確実だ。多くの人々は、2014年の、駐ウクライナ・アメリカ大使ジェフリー・パイアットと彼女の漏洩した4分の電話録音で「EUくそくらえ」と言ったのさえ聞いている。
 選出された人々を置き換えようと企むヌーランドとパイアットの悪名高い電話中に、ロシアに友好的なウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコーヴィッチを置き換えるのに、アメリカ傀儡でNATOごますりのアルツェニー・ヤツェニュークではなく、元ヘビー級ボクサーで緊縮策の主張者ビターリ・クリチコを支持していることで、ヌーランドは欧州連合に対し、とうてい外交的と言いかねる嫌悪感を示したのだ。
「EUくそくらえ」電話が広まると、当惑した国務省は、電話の信ぴょう性は決して否定せず、NSAがヨーロッパ同盟諸国の電話を盗聴しているのに、電話を盗聴したと、ロシアを非難した。

 ドイツのアンジェラ・メルケル首相が激怒したにもかかわらず、誰もヌーランドを首にしなかったが、口汚い彼女は、更に重要な役割を演じることになった。選挙で選ばれたウクライナ政府を打倒し、少なくとも13,000人を死亡させ、ウクライナをヨーロッパで最貧国にした内戦に責任があるアメリカの策謀だ。
 その過程で、ヌーランドと、彼女の夫で「アメリカ新世紀プロジェクト」共同創設者ロバート・ケイガンと彼のネオコン仲間は、アメリカ-ロシア関係を、いまだに回復できない危険な悪循環に陥れるのに成功した
 ヌーランドは、ヨーロッパ・ユーラシア担当国務次官補という比較的下級の地位でこれをなし遂げたのだ。彼女はバイデンの国務省で、ナンパー・スリーとして、どれだけ多くの問題を煽動できるのだろう? 彼女の指名を上院が承認するかどうか間もなくわかる。

 ジョー・バイデンは、オバマの失敗から、こうした任命が極めて重要なのを知るべきだった。一期目に、オバマは、タカ派のヒラリー・クリントン国務長官、共和党のロバート・ゲイツ国防長官や、ブッシュ政権から居残った軍やCIA指導者による果てしない戦争が、「希望と変化」という彼のメッセージに勝つのを可能にしたのだ。
 ノーベル平和賞受賞者オバマは、グアンタナモ湾での告訴・裁判なしの無期限拘留、無辜の一般人を殺害する無人飛行機攻撃の強化、アフガニスタン占領強化、テロと対テロの自己増殖サイクルや、リビアやシリアでの悲惨な新戦争を取り仕切ることになった。

 二期目には、クリントンが外れ、新幹部が入り、オバマは自身で、外交政策を指揮し始めた。彼はシリアや他の不安定地域の危機を解決するため、直接ロシアのプーチン大統領と協力し始めた。2013年9月に、プーチンは、シリア化学兵器備蓄の除去と破壊を交渉し、シリアでの戦争拡大を避けるのを後押しし、オバマが、JCPOA核合意をもたらしたイランとの暫定合意交渉を支援した。
 だが、オバマに、シリアで、大規模空爆作戦を命じさせ、秘密代理戦争を拡大させるよう説得するのに失敗し、イランとの戦争の見込みが弱まるのに、ネオコンは激怒した。彼らによるアメリカ外交政策支配が弱まるのを恐れて、オバマは外交政策が「弱い」とレッテルを貼り、彼に連中の権力を思い知らせる作戦を開始した。

 ヌーランドが編集を支援して、夫のロバート・ケイガンは「もしこの民主超大国がつまずけば、世界を救うために待機している民主的超大国はない」と宣言する「超大国は引退しない」という題の2014年のニュー・リパブリック記事を書いた。ケイガンはアメリカが支配できない多極世界に対する不安を拭うため、一層攻撃的な外交政策を主張した。
 オバマがケイガンをホワイトハウスの私的昼食に招待すると、ネオコンは権力を誇示して、イランに対し、静かに推し進む中、ロシアとの外交を縮小するよう圧力をかけた。
 オバマの善意に対するネオコンのとどめの一撃が、負債に悩み、NATO加盟の戦略候補で、ロシア国境に接するウクライナでの、ヌーランドによる2014年クーデターだった。
 ウクライナのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ首相がロシアの150億ドル救済措置を好んで、欧州連合とアメリカの貿易協定をはねつけると、国務省は怒りを爆発させた。
 裏切られた超大国は、激怒して執念深くなる
 EU貿易協定は、ウクライナ経済をEU輸入に開くはずだったが、EU市場による互恵的な開放なしでは、ウクライナにとって、ヤヌコーヴィチが受け入れらなかった不平等な取り引きだった。協定はクーデター後の政府に認可されたが、ウクライナの経済上の困窮を増やしただけだった。
 ヌーランドの50億ドル・クーデターの軍勢は、オレフ・チャフニボクのネオ・ナチ、スボボダ党と、いかがわしい新たな「右派セクター」民兵だった。漏洩した彼女の電話で、ヌーランドは、チャフニボクを、アメリカが支援する政権内のヤツェニューク首相に対し、外部から手を貸せる「ビッグ・スリー」野党指導者の一人と呼んだ。これは、かつて、第二次世界大戦中、ユダヤ人や「他の人間のかす」に対して戦うウクライナ人を称賛する演説をした同じチャフニボクなのだ。
 2014年2月、キエフのユーロ・マイダン広場での抗議が警察との戦いに変わった後、ヤヌコーヴィッチと、欧米に支援される野党は、フランス、ドイツとポーランドが仲介した、全国統一政府を組織し、年末までに新しい選挙を行う協定に署名した。
 だが、それは、アメリカが解き放つのを支援したネオ・ナチと、極右翼勢力にとって十分ではなかった。右派セクター率いる暴徒の民兵が行進し、議会ビルに乱入したが、今やアメリカ人が想像するのが困難ではない光景だ。ヤヌコーヴィッチと彼の党の議員は命からがら逃げ出した。
 クリミアのセバストポリの戦略上最重要なロシア海軍基地の喪失に直面して、ロシアは、1783年から1954年まで、その一部だったクリミアが、ウクライナを離脱し、ロシア再加入を票決した住民投票の圧倒的結果(83%の投票者、97%の圧倒的多数)を受け入れた
 大多数がロシア語を話す東ウクライナのドネツクとルハンスク州は、一方的に、ウクライナからの独立を宣言して、2021年も依然紛糾しているアメリカとロシアに支援される勢力間の血まみれの内戦を引き起こした。

 アメリカとロシアの核兵器庫が依然我々の生命に対する最大の脅威なのに、アメリカ-ロシア関係は決して回復していない。ウクライナ内戦と2016年アメリカ選挙に対するロシア干渉の主張について、アメリカ人が何を信じているにせよ、我々は、バイデンがロシアと重要な外交を行うのを、ネオコンと、彼らが奉仕する軍産複合体が阻止し、我々を核戦争への自殺的進路から遠ざけるのを許してはならない。
 だがヌーランドとネオコンは、軍国主義外交政策と記録的な国防総省予算を正当化するため、ロシアと中国との一層消耗的で危険な冷戦姿勢を崩そうとしていない。2020年7月「プーチンをくぎ付けにする」という題のForeign Affairs論文で、ヌーランドは、ソビエト社会主義共和国連邦が旧冷戦中そうだったよりも、「リベラル世界」にとって、ロシアは大きな脅威だという異様な主張をしている。
 ヌーランドの主張は、ロシアの攻撃とアメリカの善意という、全く神話的で、歴史的に不正確な言説に基づいている。彼女は、アメリカの10分の1のロシア軍事予算が「ロシアの対決と軍国化」の証拠で、アメリカと同盟国は「強固な防衛予算を維持し、アメリカと連合軍の核兵器システムを近代化し続け、新通常ミサイルとロシア新兵器システムから防衛するミサイル防衛を配備する」ことで、ロシアに対処するというふりをしている。

 ヌーランドは、攻撃的なNATOでロシアに対決したいとも望んでいる。ジョージ・W・ブッシュ大統領二期目に、アメリカNATO大使になって以来、彼女はロシア国境までのNATO拡大支持者だ。彼女は「NATO東国境に沿った恒久基地」を要求している。我々はヨーロッパ地図をよく検討したが、NATOいう名前の国境をもった国は発見できない。ヌーランドは20世紀の一連の欧米侵略後、自身を守ろうとするロシアの決意を、NATO拡張主義者の野心に対する耐え難い障害として見なしている。
 ヌーランドの軍国主義世界観は、まさに、アメリカが、ネオコンと「リベラル干渉主義者」の影響で、ロシアや中国やイランや他の国々との緊張を悪化させながら、アメリカでの組織的な投資不足をもたらして、1990年代以来追求してきた愚行を示している。
 オバマが学んだのは手遅れだったが、まずい時期の、まずい場所の、まずい人物は、まずい方向へのひと押しで、何年も手に負えない紛争暴力や混乱や国際的不和をもたらしかねない。ビクトリア・ヌーランドは、オバマ二期目に外交を傷つけたの同様、彼の善意を妨害するのを待って、バイデンの国務省でカチカチ時を刻む時限爆弾だ。

 だからバイデンと世界のために一肌脱ごうではないか。World Beyond WarやCODEPINKや平和と外交に対する脅威として、ネオコン・ヌーランドの承認に反対する他の多数の組織に参加しよう。202-224-3121に電話して、地元上院議員に、ヌーランドの国務省就任に反対するよう言おう。