2021年1月12日火曜日

「社会的責任」意識が完全欠落した菅政権が第3波をもたらした

 日刊ゲンダイに浜矩子同志社大教授の「『PSR』の意識が完全欠落した菅政権が第3波をもたらした」というタイトルの特別寄稿が載りました。
 文中で「PSR」は「政治の社会的責任」と説明されています。私企業に対してもCSR(企業の社会的責任)か伴うことは強調されて久しく、それに反すれば社会的な批判を浴びます。
 それなのに、「社会的責任意識の塊であって、それ以外の何ものであってもいけない政治(浜矩子氏)」が、しかもそのリーダーがそうした意識を持ち合わせていないなどあってはならないことです。
「4000万泊云々」などとデタラメなエビデンス!?を謳って「Go To」を強行した結果が今日のコロナの蔓延、緊急事態を招いたのは明らかですが、菅首相はいまだにその非を認めているようには見えません。そんな政治がもたらした災禍が、今のコロナ第3波なのだと述べています。

 日刊ゲンダイの記事「さらば菅首相 虚像の仕事師 それにしても前評判との落差に愕然」を併せて紹介します。
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特別寄稿
「PSR」の意識が完全欠落した菅政権が第3波をもたらした
                      浜矩子 日刊ゲンダイ 2021/01/11
 昨今、CSR(企業の社会的責任)への高い意識が企業に求められるようになっていますが、それと同等か、それ以上に我々は政治に「PSR(政治の社会的責任)」を強く意識してもらうべきなんじゃないか。そんなことを思っています。
 新型コロナウイルスの感染拡大に対する菅政権のむちゃくちゃな対応を通して、PSRが日本においていかに低いか、この政権においていかに酷いかを日々、目の当たりにさせられています。首都圏の1都3県を対象に、遅ればせながら「緊急事態宣言」が再発令されました。本当は発令して欲しくなかったのですが、それをもたらすに至った一因は「Go To トラベル」という名の「Go To トラブル政策」。これぞ、PSR意識の低さを表していると言えます。
 CSRの重要な土台を形成するものは、「倫理観」と「利他性」です。菅政権には、これらが完全に欠落しているのは間違いありません。人々が痛み、恐れおののいている時に、「旅行に行け」「飲み食いに出ろ」とけしかけ、そのことが明らかに感染者数の悪化を招いている。当初は「エビデンスがない」などと言い訳していましたが、時間的な経過や数値を見れば、相関関係は明白です。
「Go To」をもっと早いタイミングで一時停止にしていたら、緊急事態宣言の再発令には至らなかったかもしれません。菅政権に、この「社会的責任」をどうやって取らせるべきか
 CSRの世界で最近もっぱら注目されているのは、「SCSR」という概念です。Sは「strategic(戦略的)」。どういうことかと言うと、CSRは「倫理観」と「利他性」という「清く正しくすばらしいもの」ではあるけれども、余裕のない企業にはコストとして受け止められがち。そこで、「利益追求と社会的責任を上手に結びつけるやり方があるのではないか」という考え方が出てきたのです。「本業に近いところで社会貢献するのがいい」と言っている学者もいます。

■社会的責任の取り方を全く理解できない集団が政策展開
 ただし、そうした考え方は、一方でご都合主義の利益誘導にも見えてしまう。いかにも虫のいい考えだと思われ、ステークホルダー⇒利害関係者に嫌悪されかねない、と顔をしかめる企業もある。むしろCSRは本業から遠いところで考えるべきという企業もあったりと、なかなか複雑ではあります。
 とはいえ、方向性としてはやはり、あちらを立てればこちらは立たず、などと言わないで、ダイナミックな発想でCSRを経営に有機的に取り込んでいくべきだと思うんですね。
 同じことは政治についても言えるのですが、問題は、今の日本の政治が、何はともあれ自分たちにとって利益になる方向性しか選択できないこと。せめて「情けは人のためならず」くらいのことは知っていて欲しいものですが、これさえもなさそう。社会的責任の取り方を全く理解できない政治集団が、政策を展開していることが恐ろしい。
 利益追求が本務である企業でさえ、社会的責任意識を高めているのに、社会的責任意識の塊であって、それ以外の何ものであってもいけない政治が、その意識を持ち合わせてない……。そんな政治がもたらした災禍が、今のコロナ第3波なのです。

 浜矩子 同志社大学教授
1952年、東京生まれ。一橋大経済学部卒業後、三菱総研に入社し英国駐在員事務所長、
主席研究員を経て、2002年から現職。「2015年日本経済景気大失速の年になる!」
(東洋経済新報社、共著)、「国民なき経済成長」(角川新書)など著書多数。


さらば菅首相 虚像の仕事師 それにしても前評判との落差に愕然
                       日刊ゲンダイ 2021年1月10日
                      (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
「だめだこりゃ」――。多くの国民はそう言って、悪夢のような「もしもシリーズ」を終えたい心境だろう。その「もしも」とは、どうしようもないポンコツが総理大臣になってしまったら。就任から3カ月余り。菅首相が見せつけたのは、笑うに笑えないコントのような失政の連続だ。
「最優先課題は新型コロナウイルス対策です」
 菅は昨年9月16日の就任会見でそう息巻いたが、自ら旗振り役として始めた「Go Toトラベル」に固執し、コロナ対策は後回し。11月以降、政府分科会の尾身茂会長がGo Toの運用見直しを強く主張したのに、とことん「専門家」の意見を軽視。65歳以上の利用自粛など半端な制限にとどめ、感染拡大が止まらない悪循環に陥った。
 ようやく先月14日に重い腰を上げ、全面停止を決めた理由も、直前の世論調査で当初70%近かった支持率が3割台にほぼ半減したことへの焦燥感から。わが身可愛さで国民のことなど二の次、三の次。その上、停止まで約2週間の猶予を設ける「うすのろ」ぶりだ。
 とうとう大晦日には東京の新規感染者が1000人を軽く突破。新春早々、緊急事態宣言の再発令に追い込まれたが、この期に及んで「感染リスクが高い」と勝手に決め付けた飲食店を狙い撃ちの限定策に過ぎない。
 こんな生ぬるい対応で、1日1万人に近づく感染者数を封じ込められるわけがなく、恐らく宣言延長や対象地域の拡大、規制を強化することになるだろう。再び小出し、後出し、国民のダメ出しは目に見えており、つくづく菅は学習能力に欠けている。
 まさに「バカな大将、敵より怖い」。今や後手後手首相の存在こそ感染爆発の元凶と言っていい。政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「感染症対策はスピード勝負です。早いほど対策期間は短くて済むのに、菅首相は後手後手の場当たり策の連続で感染を拡大。医療機関はコロナ対応に追われ、崩壊寸前です。実際、冬場に増える脳卒中や心筋梗塞の『緊急患者を受け入れられない』と明言する大学病院も出てきました。救える命が救えない事態なのに、その惨状を招いた自覚と反省が菅首相からは感じられません。いまだに『人類がウイルスに打ち勝った証し』として“バラ色の五輪”開催にこだわり、海外から人を呼び込もうとするヨコシマな気持ちが抜本対策への重しとなっている。国民の命より五輪優先の政治姿勢は万死に値しますよ」

庶民派どころか、強烈な選民思想の持ち主
 記者会見や国会答弁では言い間違いを連発。許されないタイミングで「ガースーです」とやらかす。たった3カ月強で誰の目にもポンコツぶりが露呈した菅だが、それにしても前評判との落差に愕然とする
「最強の官房長官」「鉄壁の危機管理」なんて触れ込みは全部嘘だ。首相になっても「その指摘は当たらない」「答えは差し控える」とマトモな説明を拒み続けた7年8カ月もの長官時代と変わらぬスタンス。その場しのぎの逃げと、ごまかし話法で塗り固めたメッキは、はげ落ちた
 発足当初に「手堅い仕事師内閣」とか言われたのも、今となっては信じがたい。菅は「Go To感染」の失政を、さも飲食店の感染リスクは高いと決め付け、論点ずらし。宣言発令の土壇場で政令改正によって休業や時短営業を要請できる施設に飲食店を追加。要請に応じない店名を見せしめ的に公表し、新型コロナ特措法を改め、罰金まで科そうとしている。
「『仕事師』のクセにロクに仕事もせず、意に沿わない国民に罰を与えるとは、まるで『仕置人内閣』の恐怖政治です。かように愚劣な政治家の『雪深い秋田の農家に生まれ』というメッセージをことさら強調。『パンケーキ好きの令和おじさん』などと庶民派PRに加担した大マスコミの責任も重い高ゲタを履かせた印象操作で、無能首相に期待を持たせた国民に謝罪すべきです」(本澤二郎氏=前出)
 時短要請の夜8時までの繰り上げに応じなかった小池都政に、菅は不満タラタラだったようだが、Go To全面停止の発表当日の夜を忘れたのか。夜9時寸前に銀座の高級ステーキ店に駆けつけ、忘年会に興じていた二階幹事長や「世界の王」と野球談議に花を咲かせたのは、どこの誰だ?

首相にひれ伏し、ヨイショしてきた自民党も同罪
 首相である自分は特別な存在で、多人数での夜の会食も許されると思っていたなら、大間違い。あのステーキ会食が象徴するのは庶民派どころか、菅の選民意識。「自助」だけで総理の座まで上り詰めた強烈な自負心というよりも、勘違いの上に成り立つ驕りだ。
 菅の目に国民は愚弄し、見下す対象としか映っていないのだろう。でなければ、コロナ禍の苦境に立つ国民をさらに痛めつけ、見殺しにするような失政を続けられるわけがない。こんな首相にひれ伏し、ヨイショしてきた自民党も同罪だ。
 しゃべれない、逃げる、ごまかす。Go Toに頑迷固陋と政策の優先順位はトンチンカン。このコロナ禍にマイナンバーと免許証や預貯金口座のひもづけなど不要不急の仕事をやりたいと力む。やっぱり、菅はただのバカだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
もはや国家観がないというレベルではなく、菅首相には政治観がないのです。そもそも人前に出ることを恐れていては政治家としての資質にも欠けます。権謀術策を好み、闇に隠れて生きるタイプで、コロナ禍に必要な国民との絆は結べそうにない。安倍前首相同様、嘘とゴマカシにたけた人物をトップに担ぎ上げた自民党の“土壌”が腐敗しているとしか思えません。4月25日予定の2補選で『連敗すれば菅降ろし』との声も聞こえてきますが、そんな悠長なことを言っている場合ではない。政権の命脈よりも国民の命の方が大事。無能首相には即、退場を勧告します」
 感染爆発という国の危機に、虚像の仕事師の出る幕はない。さらば菅首相。サッサとお引き取り願い、「次、行ってみよう」が国民の望みだ。