第4回目は、首都圏で人気の「ティーサロン憲法」を始めた女性弁護士の武井 由起子さん(46)です。14年間大手商社につとめた後に司法試験を突破したという異色の経歴の持ち主です。
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9条とわたし<4>
「ティーサロン憲法」武井 由起子さん(46) 良い未来 子どもに
東京新聞 2014年5月6日
「『みんなちがって、みんないい』。憲法はそのための決まり」と童謡詩人金子みすゞの言葉を使って切り出し、育児中のママさんたちの関心を高める。「コーラが好きな人にお茶が好きな人。憲法に書かれた『幸福』はおのおの違う。それを大切にするのが個人の尊厳」
首都圏で人気の「ティーサロン憲法」で武井由起子弁護士(46)=川崎市高津区=は話のツカミにひと工夫。会場のカフェに居合わせた客に「耳に残った」と言われ、笑顔を見せた。
大学卒業後、十四年間大手商社で海外を渡り歩き、その後に大学院で学び司法試験を突破した異色の経歴だ。
政党色のある団体に所属したことはない。しかし、長女(4つ)を出産し、すてきな未来を残したい責任感を強めたころ、東日本大震災が起きた。震災がれきの受け入れをめぐり、放射性物質汚染や子どもの健康を心配する母親たちが非国民扱いされていたのを見て、行動力のスイッチが入った。
いまや市民感覚を無視した原発回帰に、特定秘密保護法、集団的自衛権。増税や年金減額もあり「政府が本音むき出しで、お金も安全も奪い尽くす。私には、天井が落ちてくる圧迫感がある」という。
日々育児に追われ、社会の動きに興味を持てない人がいることも分かる。しかし今、平和憲法が変えられようとしている。子どもに一生懸命習いごとをさせても、戦争にとられて殺されたら終わり。「近視眼から、あと一歩、あと半歩の想像力を開くきっかけにしたい」と今年二月、ティーサロン憲法を始めた。保育園、診療所でも開催。ワインにも造詣が深く、ワインを楽しみ憲法を語る試みもある。
集団的自衛権の行使は、自国が攻められなくても海外に出て戦争することにつながり、「十年前にあれば、イラク派兵で相当数の死者が出たはず」と語りかける。「王様」(権力者)を縛って私たちを守るのが立憲主義との解説に、ある母親は「私も子どもに対して権力者だったかも」と育児にあてはめながら考えていた。
商社時代、中近東、東南アジアで親日感をひしひしと感じた。「アジアで経済成長したことに加え、海外で人を殺していないのが大きかった。憲法九条の恩恵です」。一方、米国人はパスポートを人に見られないようビクビク。「安全のための集団的自衛権というが、逆に在外邦人、出張者の安全は脅かされ、各国とのビジネスも難しくなる。国内テロも増える」
よく考え、良い世の中を子どもたちに手渡したい。「子どもは選挙で投票できない。一票が自分と子どもの二票だと思って、帰ったら夫婦で考えてほしい」と、ママさんたちに呼び掛け続ける。 (山本哲正)
ティーサロン憲法
これまで憲法を勉強したことのない人たち向けに、基本的知識と最近の動きについて、お茶をいただきつつ和やかな雰囲気で学ぶ会。各地での開催を募っている。問い合わせは、はまかぜ法律事務所=電045(212)5688=へ。