安倍首相は、私的懇談会である「安保法制懇」が5月中旬に報告書を提出するのを待って、集団的自衛権の行使容認を「政府方針」に明記する方針ですが、それは内閣全体の了解を得ない事実上の「首相見解」であるということです。
首相がこのタイミングで「政府方針」と銘打って自らの憲法解釈変更の見解を出すのは、集団的自衛権の行使に賛成しない公明党に対して、閣議決定で「集団的自衛権」の明記は譲らない、という考えをはっきり示す狙いがあるためです。
党の幹部が「集団的」の文言を外して「自衛権」と表記する方法もあると述べたのに対して、「それでは全然ダメだ」と否定したということで、何が何でもこれまでの内閣が否定してきた集団的自衛権の行使を、閣議決定で容認することに覆そうという構想です。
これが閣議決定に先立って「政府方針」を出すということの真意でした。政府方針=安倍方針というわけで、いよいよ留まるところを知らない暴走に入ります。
「平和の党」を理念とする公明党がそれに対してどう対応するのか、真価の問われる正念場です。
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朝日新聞 2014年5月2日
安倍晋三首相は、他国を守るために武力を使う集団的自衛権の行使容認を、憲法解釈変更の見解をまとめる「政府方針」に明記する方針を固めた。実態は内閣全体の了解を得ない事実上の「首相見解」だ。首相がこのタイミングで「政府方針」と銘打って自らの見解を出すのは、閣議決定で「集団的自衛権」の明記は譲らない、という考えをはっきり示す狙いがある。
首相は、この方針をもとに与党との協議に入り、6月22日が会期末の今国会中に行使容認の閣議決定を目指す。しかし、公明党は行使容認に強く反対している。閣議決定の文書に「集団的自衛権」の言葉が含まれること自体にも反対だ。今後、首相と公明党との対立が激しくなるのは間違いない。
安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」は、大型連休明けの5月中旬にも、首相の意向に沿った内容の報告書を発表。その後、首相は間を置かずに自公両党に対し、「政府方針」を示す考えだ。その中で、首相は「必要最小限度」の自衛権に集団的自衛権の一部が含まれる、などとする憲法解釈の変更を打ち出す方針だ。