ここに来て俄かに政府首脳から、集団的自衛権の行使容認は今国会中でなくて良いという意向が表明されるようになりました。公明党が、集団的自衛権の行使容認に慎重な姿勢を崩さないためです。
公明党の意向を重視する石破幹事長は早くから、集団的自衛権の行使とは関係ない、武力攻撃に至らない侵害=いわゆるグレーゾーンに対処するための法整備を先行させるべきだという意見でした。それであれば公明党の同意が得られるというわけです。自民党内でも公明党の意向を踏まえて、秋の臨時国会では集団的自衛権の行使とは関係ないグレーゾーンに対処するための法整備を先行させるべきだという意見が強まっています。
それに対して安倍首相は、集団的自衛権の行使容認の閣議決定に向けてまっしぐらで、「安保法制懇」の報告書の提出を待って先ず「行使容認」の政府方針=安倍方針を打ち出して、公明党に会期末の6月22日までに同意するのかどうかを迫るという態度でした。もしも公明党が同意しなくても、みんなの党や維新の会が賛成するからというわけです。
しかし、辺野古移設が争点になった1月の沖縄の名護市長選では、公明党が自主投票に回ったこともあって自民党は惨敗しました。その後、同じ沖縄県の石垣市、沖縄市の市長選、さらには、鹿児島2区の衆院補選は、公明党の協力を得て連勝することができました。
自民党には、公明党の固定票を貰わないことには小選挙区で勝てない議員が多数います。そうした人たちは公明党との連携を解消することは絶対反対です。
来年に統一地方選を控えていることを考えれば、自民党は公明党との関係を壊すことなどはできないません。
来年に統一地方選を控えていることを考えれば、自民党は公明党との関係を壊すことなどはできないません。
4月はじめから約1ヶ月間は、極めて強硬に「行使容認」を進めようとしていた安倍首相が、俄かに態度を和らげた背景には、上述のことを再認識させる何かがあったのではないかと見られています。
まさに党利党略そのものですが、これまでの異様な高揚気分を冷ましたということであれば、ひとまずは喜ばしいことです。
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憲法解釈変更の閣議決定「期限ありきでない」
NHK NEWS WEB 2014年5月7日
ベルギーを訪れている安倍総理大臣は、日本時間の7日未明、NATO=北大西洋条約機構の本部で記者会見し、集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更を閣議決定する時期について、「期限ありきではない」と述べ、慎重な姿勢を堅持する公明党との調整を丁寧に進める考えを重ねて示しました。
ベルギーを訪れている安倍総理大臣は、ブリュッセルにあるNATO=北大西洋条約機構の本部で演説したあと、日本時間の7日未明、ラスムセン事務総長との共同記者会見に臨みました。
この中で安倍総理大臣は、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認について、「演説でも具体的な事例を挙げて説明し、われわれが何を検討していくかご理解いただいた」と述べました。
そのうえで安倍総理大臣は、憲法解釈の変更を閣議決定する時期について、「『いつまでに』と期限を決めているわけではない。期限ありきではなく、与党においてもじっくり議論いただきたいと考えている」と述べ、慎重な姿勢を堅持する公明党との調整を丁寧に進める考えを重ねて示しました。
官房長官 今国会中の閣議決定こだわらず
NHK NEWS WEB 2014年5月7日
菅官房長官は記者会見で、集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更について、慎重な姿勢を堅持する公明党の理解を得ることを最優先に、今の国会の会期中の閣議決定にこだわらない考えを明言しました。
この中で菅官房長官は、集団的自衛権の行使容認について、「政府の有識者懇談会から報告書の提出を受けて、これを参考にして、政府としては基本的な考え方、その方針を示したうえで、内閣法制局の意見を踏まえながら与党と相談し、憲法解釈の変更の閣議決定を行いたい」と述べました。
そして菅官房長官は、記者団が「閣議決定の時期は今国会にこだわらないのか」と質問したのに対し、「特別こだわらない。まず与党の理解をいただくことが最優先と考えている」と述べ、慎重な姿勢を堅持する公明党の理解を得ることを最優先に、今の国会の会期中の閣議決定にこだわらない考えを明言しました。
また菅官房長官は、与党内から秋の臨時国会では集団的自衛権の行使とは関係ない、武力攻撃に至らない侵害、いわゆるグレーゾーンに対処するための法整備を先行させるべきだという意見が出ていることについて、「国会での進め方は党と相談しながらと思っているが、そういうこともありうるのではないか」と述べました。
“グレーゾーン”法整備先行 意見強まる
NHK NEWS WEB 2014年5月6日
集団的自衛権の扱いを巡り、自民党内では、公明党の意向を踏まえ、秋の臨時国会で、集団的自衛権の行使とは関係ない武力攻撃に至らない侵害、いわゆるグレーゾーンに対処するための法整備を先行させるべきだという意見が強まっています。
集団的自衛権の行使容認を巡って、安倍総理大臣は、来週にも政府の有識者懇談会から報告書の提出を受け、政府内での検討や与党との協議を本格化させる考えです。
そのうえで、憲法解釈の変更を閣議決定する時期については、「与党で一致することが極めて重要であり、場合によっては時間を要することもある」と述べ、慎重な姿勢を堅持する公明党との調整を丁寧に進める意向です。
これを受けて、公明党は、外国の潜水艦が領海からの退去要求に応じない場合など、集団的自衛権の行使とは関係ない武力攻撃に至らない侵害、いわゆるグレーゾーンに対処するための法整備などの検討を先行させるよう求めることにしています。
これについて、自民党の石破幹事長も「沖縄県の尖閣諸島の情勢などを考えれば、個別的自衛権の見直しにも、十分、プライオリティー、優先順位がある」と述べるなど、自民党内では、公明党の意向を踏まえ、秋の臨時国会で、集団的自衛権の行使容認のための法整備より、いわゆるグレーゾーンに対処するための法整備を先行させるべきだという意見が強まっています。