2014年5月5日月曜日

「9条とわたし」 第2回 (東京新聞神奈川版)

 第2回目は、イラク戦争へと向かう米国を支援する日本政府の姿勢に危機感を抱いて、03「平和の詩(うた)~平和のためにできること」を作詞作曲し04「歌う9条の会バンド」を結成した横浜市中区の二人の弁護士、折本和司さん(58)と小賀坂徹さん(52)です。
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9条とわたし<2>
     弁護士バンド「うた9」 折本 和司さん(58) 憲法守る心 歌に
東京新聞 2014年5月4日
 ギターをかき鳴らし、軽快なメロディーに乗せて問いかける。
 
 <What can we do for the peace of the world
              (世界の平和のために、僕たちは何ができるだろうか)
 
 二〇〇三年、横浜市中区の弁護士、折本和司さん(58)と小賀坂(こがさか)徹さん(52)は「平和の詩(うた)~平和のためにできること」を作詞作曲した。イラク戦争へと向かう米国を支援する日本政府の姿勢に、危機感を抱いたことがきっかけだった。
 
 「『今は平和を祈るときではない。具体的に行動しよう』という思いを込めた」。当時は憲法九条が、イラクに派遣された自衛隊の活動範囲の歯止めとなった。政府が集団的自衛権の行使容認に動いている現在も、まさにその「今」だと折本さんは感じている。
 反戦を歌うジョン・レノンの曲で育ち、高校時代からバンドが趣味。県内で法律家団体が開く憲法集会で小賀坂さんと一緒に「イマジン」を歌うようになって間もなく、米国による戦争が現実になっていく。「関心がない人は、集会に来ない。広く平和を呼び掛けたい」。二人でギターを手に横浜・山下公園に飛び出し、道行く人にこの曲を届けた。
 
 二人の音楽に共感した県内の弁護士とともに、〇四年、「歌う9条の会バンド」を結成した。「うた9」と呼ぶ。九条をはじめ日本国憲法を守る心を歌声とギター、ドラム、キーボードで広める。オリジナル曲は八曲ほどで、憲法前文をラップ調にした曲もある。
 
 「今の理想的な憲法がなくなったら、広島で起きたことが繰り返される」と、折本さんは恐れる。
 広島市の中心部に架かり、原爆投下の目標になったとされる丁字形の相生橋(あいおいばし)のそばで生まれた。原爆ドームのある平和記念公園の中を歩いて通学し、全国から訪れる多くの人の姿を見てきた。十五歳の時に被爆した父親は四十代で歯が抜け、よく体調を崩した。大人になって、原爆の影響だったと理解した。
 県内の被爆者が国に原爆症認定を求めた集団訴訟の弁護団に参加していた〇六年。故郷に帰り、「相生橋から」という一曲を作る。
 
 <朽ちたドームが川面に映る、消えることのない灯火よ。相生橋から、街を見てるだけさ>
 
 自分の目に映る広島の風景を描き、平和への願いを重ねた。「廃虚から立ち直り、今がある。胸を張って、九条の考えを世界に広めていかなければならない」と自らに誓う。
 うた9は昨年、「平和の詩」と「相生橋から」を収めたCDを自主制作した。多忙な弁護士としての仕事と両立し、今後も各地の集会に出掛けて憲法の価値を伝えていくつもりだ。ライブハウスでの演奏も計画している。
 特定秘密保護法が昨年末に成立した。解釈改憲で「戦争ができる国」に進むかどうかの岐路にさしかかり、折本さんは原点に立ち返る。「いつの時代でも音楽は、シンプルなことばで本質を伝えてきた。伝えるべきことが伝わりにくい今こそ、音楽の力を信じている」 (杉原麻央)