2014年5月10日土曜日

NYT社説 安倍首相の解釈改憲への動きを批判

 
Peace Philosophy Centreのホームページに、8日付のニューヨークタイムズ電子版の社説:「日本の平和憲法」の翻訳が掲載されました。安倍首相の解釈改憲の動きを批判したものです。
 
 とても短い社説ですが要旨は下記のとおりで、安倍首相の策動を極めて的確に批判しています。
 『安倍首相は、日本の軍隊が国境を超えて同盟国とともに戦うことを目指しているが、その目的を達成するためには、国会両院の3分の2の承認の上に国民投票を要するというハードルがある。そこで安倍氏は政府憲法解釈を変えて9条を無効にしようとしているが、そうした行為は完全に民主的過程をないがしろにするものである。
 憲法の主要な機能は政府の権力を抑制するものである政府の思い付きで変えられるようなものではない。さもなければそもそも憲法などを持つ理由さえなくなってしまう。 
 現状では、平和主義を志向する政権連立メンバーの公明党だけが安倍氏の野心を抑えることができる。公明党ぬきでは与党は参議院で過半数に達しないので、公明党容認可能な解釈改憲への道を考え出そうとしている。
 安倍氏の出方は強気であり、日本の民主主義は真正な試練に直面している
 
 以下にPeace Philosophy Centreの記事を紹介します。
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ニューヨーク・タイムズ社説安倍首相の解釈改憲への動きを批判 
 
 ニューヨーク・タイムズの電子版に、安倍氏による解釈改憲の試みを批判する社説が出た。紙版では、5月9日のニューヨーク・タイムズ国際版に掲載されるのこと。
 
日本の平和憲法 
ニューヨーク・タイムズ社説 2014年5月8日
 日本の安倍晋三首相は、日本の軍隊が国境を超えて同盟国とともに戦うことを許すような役割の拡大を推し進めている。積極的平和主義と呼ぶものによって、安倍首相はより大きな世界的な安全保障の責任を担おうとしている。
 
 しかし安倍首相は大きなハードルに面している。今年ノーベル平和賞にノミネートされている憲法の第九条は、日本国民は「国権の発動たる戦争・・・永久にこれを放棄する」と定めている。安倍氏が目的としている軍隊の権限の変更は、国会両院の3分の2の承認の上に国民投票を要するという、大変困難なものであるからだ。だから替わりに、安倍氏は政府に憲法を再解釈させて九条を無効にしようとしている。このような行為は完全に民主的過程をないがしろにするものだ。
 
 安倍氏の政治の至上目的は、第二次世界大戦後米国陸軍によって起草され日本に課された67年間、一言も修正入っていない憲法を取り換えることである。安倍氏は、憲法は厄介な制約を日本の主権に課すものであって時代遅れであると感じている。しかし、安倍氏を批判する人たちが指摘するように、憲法の主要な機能は政府の権力を抑制するものであるということを安倍氏は知るべきである。政府の思い付きで変えられるようなものではない。さもなければそもそも憲法などを持つ理由さえなくなってしまう。
 
 現状では、深い平和主義傾向を持つ政権の少数派連立メンバーの公明党だけが安倍氏の野心を抑えることができる。公明党ぬきでは、与党は参議院で過半数を失う。安倍氏は公明党に容認可能な憲法再解釈への道を考え出すことに最大の努力を払っている。他の野党8党は足並みが揃っていない。安倍氏の出方は強気であり、日本の民主主義は真正な試練に直面している。 (翻訳・乗松聡子)