2014年5月13日火曜日

正統性も権威もまったくない「安保法制懇」

 インターネットの「晴耕雨読」に、安保法制懇に関する川口創弁護士のツィート集成版が掲載されました。
 
 下記は、同弁護士が、安倍首相の私的懇談会『安保法制懇』の性格を皮肉ってツィートした秀逸な譬えです。
 
 例えば、保育政策について、首相が仮に「公立保育園は一切いらない」考えだとして、自分の考えに同調する人ばかり集めて「私的懇談会」を作り、その「報告書」を内閣に出させて、「公立保育園は全てつぶす方針」とすることが許されるとすれば、もはや日本は民主国家ではい。
 
  また、
 
 そもそも安保法制懇は、
①審議会ですらなく首相の私的諮問機関に過ぎない
②人選も極めて偏っており、公正さを著しく欠く
   ③法学部出身の憲法学者は一人もおらず(西氏は政治経済学部出身)、「法制懇」と言いながらまともな憲法上の議論がなされてもいない、
などという点で、正統性は皆無。
 (こんな茶番と暴挙をただ傍観するのではなく)マスコミはなぜ、「安保法制懇」の存在そのものの正統性のなさや権威のなさを問題にしないのか。 
 
 とも述べています。
 
 そんな茶番と暴挙が通用しているのは、マスメディアが安保法制懇の性格をまともに報じず、批判もせずに、さも当然の成り行きであるかのような報じ方をしているからです。
 「権威」といえば、はじめから結論が決まっていた報告書で、その理由付けが最後の最後までこんなに根本的に揺れ動いたという例は、この種の懇談会でも嘗てなかった筈です。権威などカケラもありません。
 
 
 NHKのニュースによれば15日に安保法制懇の報告書が提出されるということです。いよいよ、目指した結論への理由付けが最後の最後まで見つからなかったという、実にいい加減な報告書がまとめられるわけです。
  NHKや読売新聞、産経新聞などはさも重要な報告が出たかのように扱うものと思われます。
 報告書が出れば首相はそれを錦の御旗のように扱って、暴挙に出ることは間違いありません、メディアはそのことを予測しながらこれまで放置してきました。
 
 川口創弁護士のツィートを以下に紹介します。
 紙面の関係で抜粋にとどめましたので、全文は原記事でご覧下さい。
 
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正統性も権威もまったくない
安倍氏個人の「お友達」ばかりの「安保法制懇」
川口創弁護士) 晴耕雨読 2014年5月10日  
 安倍さんは、自分がやっている「解釈改憲」が「法の支配」の否定だってこと、分かって話してるのだろうか?
(中略)
 そもそも安保法制懇は、
①審議会ですらなく首相の私的諮問機関に過ぎない
②人選も極めて偏っており、公正さを著しく欠く
③法学部出身の憲法学者は一人もおらず(西氏は政治経済学部出身)、「法制懇」と言いながらまともな憲法上の議論がなされてもいない、
などという点で、正統性は皆無。
 正統性も権威もまったくない安倍氏個人の「お友達」ばかりの「安保法制懇」。
 その報告書を契機に政府が方針を変え、この国の根幹を変えてしまう、ということの愚かさ。
 僕らも、安倍氏とその「お友達」による茶番と暴挙をただ傍観している場合ではない。
 マスコミはなぜ、「安保法制懇」の存在そのものの正統性のなさや権威のなさを問題にしないのか。
 「有識者」とかそのまま言ってる場合ではないだろう。
 
 愛知県弁護士会の憲法委員会でも「若手安保法制懇」結成しました。
 私的懇談会であること、人選に偏りがある点は、安保法制懇と一緒です。
ただ、憲法の議論をちゃんと出来る点はこっちの方が上、と自負してます。
(中略)
 
 阪田元内閣法制局長官は次のように仰っている。
 「集団的自衛権行使を解釈改憲で行う、ということは、本来すべき憲法改正手続きをせず、主権者である国民に意見を無視して政府が憲法9条を削除してしまう、ということ」
 
 野田聖子さん。
 物言えぬ自民党の中で、集団的自衛権について、「世界」で自身の意見を毅然と表明したその姿勢を応援したい。
(中略)
 安倍首相が今進めていること。
 主権者である国民に無断で、憲法9条を勝手に削除しようとしている(集団的自衛権行使を解釈変更で行う、ということは実質9条の削除と同じ)。
 主権者である国民を蔑ろにして、自分こそ最高権力者だというおごりも甚だしい。
 政策論は十分行えば良い。
 しかし、政府の政策の実現のため、法を無視して政策をごり押しすることを許せば、もはや日本は法治国家ではない。
(中略)
 マスコミの皆さん。
 まず、安保法制懇自体を、正しく「疑え」。
 中曽根政権下の靖国懇だって、バランス良く人選し、一流の憲法学者もメンバーに入っていた。
 それとの比較位した方が良い。
 私的諮問機関の問題点について、国会図書館がまとめています。
 政府は「私的諮問機関は出席者の意見の表明又は意見交換の場にすぎない」としてきた。
 報告書にも拘束力はまったくない。
 そんな安保法制懇の報告書によって、集団的自衛権行使容認の政府方針を決める、ということの「茶番」さと「異常さ」は度を超している。
 「安保法制懇」は「私的諮問機関」だが、かねてから「私的諮問機関」については、法の制約の外にあるにもかかわらず、公費で運営されていることから、「『私的』諮問機関と言うより、むしろ『法定外』諮問機関だ」といった批判がなされてきました。
(中略)
 国の形を180度変えてしまうのに、その報告書を作ったいわゆる「安保法制懇」に、「さすが日本の知性」と思える人が一人でもいますか。
 そもそも、国民の多くは、安保法制懇の構成員の名前も全く上げられないのではないだろうか。
 13日に「安保法制懇」が報告書を安倍氏に提出するようですが、マスコミは街頭で、「安保法制懇とは何か知っているか」「その構成員の名前を挙げられるか」など、アンケートしたら良い。
 「安保法制懇」の法的根拠、誰が選任したのか、「私的懇談会」なのに使われた公費の総額と構成員への謝礼総額など、国会でしっかり追及されるべきです。
 私的諮問機関で、政府の審議会ですらないのです。
 
 マスコミは、安保法制懇を「まとも」に扱いすぎます。
 たかが「私的諮問機関」。
 むしろ、「分をわきまえよ、たかが私的諮問機関の分際で」というスタンスも、必要ではないでしょうか。
  「お友達」の「私的諮問機関」にもっともらしく「報告書」を出させる陳腐で露骨な「茶番」、「出来レース」。
 国民は安倍氏に相当バカにされているという自覚を持たねば。
 
 安保法制懇について。
 例えば、保育政策について、首相が仮に「公立保育園は一切いらない」考えだとして、自分の考えに同調する人ばかり集めて「私的懇談会」を作り、その「報告書」を内閣に出させて、「公立保育園は全てつぶす方針」とすることが許されるとすれば、もはや日本は民主国家ではい。
 
 安保法制懇のように首相の同調者ばかり集めた「私的懇談会」の「報告書」に従って政府方針を決めていく手法が定着すれば、日本はもはや独裁国家といわざるをえない。
(後略)