2017年12月22日金曜日

22- 竹中平蔵が寄稿したアベノミクス「中間総括」の笑止千万(高野孟氏)

 竹中平蔵が、「ジャパン・タイムズ」に「アベノミクスの中間総括」という一文を寄この5年間に株価、有効求人倍率、失業率などが改善したと述べて「明らかに経済は目覚ましく改善した」と、アベノミクスを高く評価したということです(これ自体は安倍首相が選挙の度に強調している内容ですが・・)。

 ジャーナリストの高野孟氏が、日刊ゲンダイに連載(週1)している「永田町の裏を読む」でこれを取り上げ、「経済パフォーマンスを語るならまず真っ先に挙げるべきは実質GDP・賃金・消費などの基本指標であるはずだが、それには一切触れないで都合のいい数字だけを並べるというのは詐欺話だ」と述べました。
 そして「株価は、年金ファンドまで出動させて官邸が生み出した官製相場であり、失業率や有効求人倍率は単に人口減少社会故の『人手不足傾向』の表れに過ぎずアベノミクスの効果ではない」と述べました。

 異次元緩和で日銀が発行した「円」の大半は借り手がないまま市中銀行に留まっていて、この4年余りで各銀行が日銀に置いている当座預金は、47兆円から366兆円に急膨張しているということです。これでは経済の活況など呈しようがありません。

 総括するのであればそうした根源的なところに目を向けるべきだとしています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 永田町の裏を読む
竹中平蔵が寄稿した アベノミクス「中間総括」の笑止千万
高野孟 日刊ゲンダイ 2017年12月2日
 相も変わらず安倍政権の提灯持ちを続けている竹中平蔵が、16日付「ジャパン・タイムズ」に「アベノミクスの中間総括」という一文を寄せている。なぜ「中間」なのかといえば、安倍が来年9月に自民党総裁として3選されれば、2021年の夏まで9年間の任期を全うすることになるので、5年目の今が、ほぼ半ば過ぎだというのである。

 さてそれで、彼がこの5年間に「明らかに経済は目覚ましく改善した」証拠として持ち出しているのは、株価(8000円台から2万2000円へ)、有効求人倍率(0.9から1.55へ)、失業率(4%から2.8%へ)、外国人観光客数(800万人から2400万人へ)などである。経済パフォーマンスを語るならまず真っ先に挙げるべきは実質GDP・賃金・消費などの基本指標であるはずだが、それには一切触れないで、都合のいい数字だけを並べるというのは、詐欺話だ。

 株価は、日銀も年金ファンドも出動させて何が何でもこのレベルを維持させようとする官邸主導の官製相場がつくり出しているもので、市場の日本経済評価とは無関係である。失業率や有効求人倍率は人口減少社会では当たり前の人手不足傾向の表れであって、アベノミクスの効果ではない。ましてや外国人観光客の増加は、そもそもアベノミクスの達成目標には入っていないし、仮に入っていたとしても日銀の金融政策とは何の関係もない。

 アベノミクスはそもそも、異次元金融緩和によってマネーをジャブジャブにすればすぐにでも物価上昇2%の目標が達成され、それにつられて全てが好循環に向かうという(私に言わせればインチキそのもの)理屈に基づいていた。13年3月に138兆円だったマネタリーベースは17年11月までに338兆円も増えて476兆円の史上最高を更新しつつあるが、さて物価上昇2%目標はこれまでに6回延期されて、まだ実現していない。
 なぜかというと、各銀行が日銀に置いている当座預金は、同じ期間に47兆円から319兆円増えて366兆円の史上最高に達していて、つまりマネタリーベースの増大分の95%は日銀当座預金に滞留して日銀構内から外へ出ていないのである。

 このばかばかしい事態がなぜ起きたのかを正面切って論じなければ、アベノミクスの中間総括などできるはずもない。安倍が選挙演説で「有効求人倍率」を自慢するのは仕方がないとして、ブレーンのエコノミストがこんな稚拙なことを言っているようでは、安倍の3選はまず難しい。

 高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。